渋谷豊のレビュー一覧
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ネタバレサン・テグジュペリのエッセイ。素晴らしかった。
初めての飛行任務、遭難や墜落と隣り合わせの空中のトラブル、奴隷のおじいさんを買い戻した話、同僚や自身の不時着体験、戦地のルポなどが詩的でどこか幻想的な文章でつづられる。その過酷さもさることながら、強く印象に残るのは飛行機や遭難した先で見る残酷なまでの自然の美、その中にサン・テグジュペリが星のようにちりばめている哲学だ。むしろ、状況や環境が過酷だからこそそれらが一層研ぎ澄まされていると言った方がいいだろうか。
「手の届かないところにある共通の目的によって同胞と結ばれたとき、僕らは初めて胸いっぱいに呼吸をすることができる。経験によれば、愛するとは互 -
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ネタバレ人間の大地
とても面白かった。自分が求めていたものが全て書かれているような気がした。
飛行機の操縦士という視点で書かれた本で、人間というものを上から俯瞰して見るというのが、本のテーマになっている。人間が作った街、人間が生きるために耕した畑、人間が争い合って血を流した戦争、人間が領地拡大のため侵略した土地、人間が食べるための労働。人間が人間らしく生きるとは何か、それを本書では問い続け、サン=テグジュペリの答えが書かれている。
サン=テグジュペリはとても人を平等に見ている人だ。人種も年齢も職業も、そういうフィルターを取っ払って、人間という尊い存在をきちんと評価している。
そして、飛行機の操縦 -
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堀口大学訳の新潮文庫版、ロングセラーの地位はいまも不動。私もずっとこの詩的な堀口訳に慣れ親しんできたが、引っかかる訳語がいくつもあった。
今回、渋谷豊訳の光文社古典新訳文庫版では、それがすっかり解消されている。たとえば、サンテクスの最初の職業フライトの場面。午前3時半、雨のなか、彼が乗り込むのは飛行場行きの「マイクロバス」なのか、「路面電車」なのか。渋谷訳は「路面電車」。タイトルも、堀口訳は「土地」だったが、渋谷訳は「大地」だ。
どちらの訳で読んでも、サンテクスが初仕事に向かうその緊張感と高揚感の描写はたまらない。そして彼とプレヴォがリビア砂漠の真ん中にクラッシュしたエピソードも。3日間飲まず -
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このタイトルを知ったのは、小さい頃に見ていた「ふしぎの海のナディア」のOPでした。ネモ船長が渋くて威圧的で怖かったけど、今見るとまた違う印象になりそう。
同じくNHKの「YAT安心!宇宙旅行」も好きだった。ヒロインカツラさんが可愛い。珍しい名前だと思ってた記憶があります。
世間を騒がせる海の怪物の正体を追う船に同乗できた博物館学者の主人公。ついに怪物を見つけ攻撃するも、全然適わず。逆襲され、海に落ちて死にそうなところを潜水艦に助けられ、世間と絶縁した、いかにもワケアリ風なネモ艦長と接触し、世界中の海を巡る冒険に出る…序盤から最高です。
怪物の正体は最先端技術の粋を集結させた潜水艦で、巨大な -
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サン=テグジュペリの最高傑作。
若い人に読んで欲しいとあとがきにあったが、読んでも理解するのはずっと後になるだろう。人生における普遍的な真実をあの若さで書くことができたのは、死と隣り合わせの職業だったからではないか。読んでいて、極限状態に追い込まれないと真実には辿り着けないのではないかと感じた。
近しい身内を亡くした人間は、高次の意識に近づくと感じるけど、すぐまた元に戻ってしまう。
極限状態に居続けることは考えるだけでもしんどい。でも主人公は心が安らぐという。死ぬ瞬間には理解できるのだろうか。
いつもは考えない人間の根幹とか普遍的な何かとかを考える読書だった。浮かんでは消えていく感じだけど、 -
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でぇえ…本当に20歳(執筆している間は10代)でこれを書いたの、すごいな……自分が20歳の頃なんて思い出したくもないから比較はしたくない(できない)が…「早熟」なんて言葉では括れない才能な気がする…
解説も読みごたえあって面白かった、何となくコクトーと仲良かったみたいなイメージしかなかったからもう少し詳しく知れて良かったな(コクトーが手直ししてるとこ想像してしまいました…)
言い回し好きすぎる、どうしてそんな比喩引っ張ってこれるの?終わりかたも好きだなぁ、まさに舞踏会が終わってしまう感じ。
でもやっぱり『肉体の悪魔』より、文体がより洗練されてキレキレになってた感じがした(ちゃんと文体につい -
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上巻に勝る、驚きの旅路が続きます。
前人未踏の海底世界へ、ネモ艦長がアロナックス教授らを導き続けます。
ネモ艦長はあらゆる海を制覇しましたが、それは南極点を除いてのことでした。
知的好奇心と冒険心を原動力に、彼らがそれに挑む姿が目に浮かびました。
しかし終盤になり、ネモ艦長は復讐心をもって行動を開始します。
普段の学者肌の男は、もうそこにはいませんでした。
結末は不透明なものとして有名です。
しかし、それがこの作品の魅力だと思うのです。
科学は自然に抗えないのか、科学は自然を支配するのか。
ノーチラス号の存在は、その問題そのものです。
そして、その科学を我々人類がどのように使うかを表現している