周防柳のレビュー一覧
-
Posted by ブクログ
『安らかに眠って下さい 過ちは繰返しませぬから』
広島平和都市記念碑に刻まれた言葉。
この言葉の本当の意味を、私は深く考えてこなかった。
ー「過ち」とは、一体誰の「過ち」なのか?帝国陸軍か?
本当に原爆投下が戦争を終わらせのか?
地獄ともいえる惨劇の犠牲者となった人々が、果たして「安らかに眠る」ことができるのか?―
様々な論争が起こっている事をニュースで知っても、戦争を知らない世代の私はそこまで関心を持てなかった。
教科書の上の出来事。文字にすれば1ページにも満たない過去の惨劇。それが私にとっての「原爆投下」だった。
この小説で、広島の原爆投下直後の描写が出てくるが、体験していないのに関 -
Posted by ブクログ
ネタバレ周防柳は、2冊ほど読んでいる。『蘇我の娘の古事記』『逢坂の六人』、どちらも曖昧模糊とした古代の出来事を、限られた史料の断片から紡ぎ出し、無限の想像力で繋ぎ合わせたストーリーが見事で、ファンになった。
その著者の近著がこれ。小説ではなく、自身や、その他の歴史小説家の作品背景となる古代史を、史料のみならず、小説作品から描き出してみせるという離れ業のような一冊。
もちろん、遠く霞の中の古代史のお話なので、どの作家の、どの作品の、どの想定も、解釈や見解の差異を孕む。明らかに創作だったり、むしろ意図的に史実に反する設えにしているものもあり、そのことも踏まえて、「これは○○の説を踏襲したもの」とか -
Posted by ブクログ
本やさんで何気に見て、タイトルに惹かれて購入。
内容も分からないまま購入した。
もっと気楽に読める作品かと思っていたので、ヘビーな内容だったことに少々戸惑った。
80歳になろうかとしている死を目前にした老人が体験した、純粋な恋と原爆のストーリー。
戦争を語る人が少なくなっている中で、この作品は、広島という地域の過去、生き方、現実を突き詰めてくる。
戦時下の暮らし、風景、原爆投下直後の光景……など、丁寧な描かれていると思う。
個人的には……浅い解釈だと思うが。
青い蝶を大事に持ち続けていたこと。
父にも分からないように閉じ込めたこと。
誰にも話さないまま逝こうとしていること。
それらを話 -
Posted by ブクログ
ネタバレ亮輔の淡い初恋、それに応える希恵、二人が楽しそうに会話する姿、川辺を散歩する姿などが微笑ましい。けれど、そんな二人の純情な恋も、1つの原子爆弾によって、無惨にも一瞬にして引き裂かれるなんて、悲しいの一言だった。亮輔が、原爆が投下され地獄絵図と化した広島の街中を、希恵と約束していた場所に行くために向かい、ようやく辿り着いたその場所で、希恵の赤い鼻緒の下駄と虫籠を見つけた時、二人が一緒に見るはずだった脱皮した青い蝶を見つけた時、なんとも言えない切なさが胸を突いて、もの哀しくなりますが、地獄の中舞うきれいや青い蝶が「なんて美しいんだろう」と思い、それが余計に切なさを増している感じがしました。
原爆が -
Posted by ブクログ
ネタバレ若くして成功した女流画家・青山伊津子と病弱な少女・小林美羽の不思議な話。
幼い頃に両親を亡くし、辛い幼少期を過ごした伊津子。ただ、岩手の祖母と共に過ごした日々だけが心の支えだ。美大に進学し、そこで小林という美術評論家に認められ、公私ともに支えられる存在と運命的に出逢った。もう一人の主人公・美羽は小林の娘。姉を病気で亡くし、自身もアトピー、喘息などの病気が有るせいで、何事にも過剰になってしまった母に振り回され脅える日々。作中、I・Mとイニシャルで呼ばれ、遊園地で働く二人の描写、そこが不思議な世界。のちに伊津子が描く彼岸の遊園地、あの世とこの世の境目という不思議な世界で暮らす二人。現世で孤独な二