あらすじ
ヒミコは二人いた? 東遷は何度もあった? 気鋭の作家が古代史の謎に切り込む!
「歴史的なあの事件」は本当に教科書どおりに起こったのか? いや、私はこう考える――。歴史を題材にした小説作品に定評のある著者・周防柳が、松本清張、井上靖、邦光史郎、黒岩重吾、永井路子ら往年の大作家から、澤田瞳子、坂東眞砂子、さらには諸星大二郎、安彦良和ら漫画家まで、彼らが自作で展開した諸説を紹介しながら、自らも事件の背景や人物像を考察していく、学校では絶対に教えてくれない、スリリングな古代史入門書。
第一章 邪馬台国は二つあったか――大和と筑紫の女王卑弥呼
第二章 神武は何度東遷したか――記紀神話と初期大和政権
第三章 応神天皇はどこから来たか――河内王朝と朝鮮半島
第四章 大王アメタリシヒコとは何者か――馬子と推古と厩戸皇子
第五章 天智と天武は兄弟か――対立から見た白村江、壬申の乱
第六章 カリスマ持統の狙いは何か――不比等と女帝たちの世紀
古代史小説ライブラリー(神話世界~八世紀奈良時代)
感情タグBEST3
Posted by ブクログ
この本で言う「古代史」の範囲は、何らかの文書に記録が残っているところから始まり、奈良時代の終わりまで。
年代順にテーマを決めた章ごとに、時代のあらましと、どんな記録があって(簡単に)、どういった見方がされているか、または論争があるかの説明。
具体的に作品を取り上げ、歴史的事件や人物をどう見て、どの学説を採用しているか、またはその作家なりのどんなオリジナル視点を入れているかなどを解説する。
そして、その時代について、周防さんがどの見方を押しているか、どう考えているかを記してまとめている。
と言う、スッキリしてとてもわかりやすい作り。
個人的には、欽明天皇くらいになって、「やっと知ってる人来たーーー!」と言う感じで、ほっと安心する。
人となりを知っているのではない。
「日出処の天子」で系図に載っていた覚えがあるから。
私にとっては印象的な作品で、蘇我馬子と聞いたらあの顔しか思い浮かばないのである。
その、欽明天皇以前は、全く知らないわけではないが、名前がややこしくて覚えられない。
しかも、あったのかどうか分からない歴史なわけで。
第一章丸ごと「邪馬台国」に割いているが、卑弥呼、どうしてあんなに流行ったのかしらね〜?!(笑)
あったかどうか分からない歴史だけあって、作品の傾向は、ファンタジーだったりSFっぽかったりする。自分も、昔読んだ。
都合のいい解釈も小説ならいいが、「皇国史観」みたいな利用の仕方はちょっとね。
紹介されている小説は42作(で合ってる?)だが、巻末の『古代史小説ライブラリー』がすごい。
所々にいいタイミングで挿入されている系図も親切。
懐かしい作品もたくさん紹介されていた。
気になった人物は「漢皇子(あやのみこ)」かな?
『白村江』と『穢土荘厳』は読まなくちゃ、と思った。
第一章 邪馬台国は二つあったかーーー大和と筑紫の女王卑弥呼
第二章 神武は何度東遷したかーーー記紀神話と初期大和政権
第三章 応神天皇はどこから来たかーーー河内王朝と朝鮮半島
第四章 大王アメタリシヒコとは何者かーーー馬子と推古と厩戸皇子
第五章 天智と天武は兄弟かーーー対立から見た白村江、壬申の乱
第六章 カリスマ持統の狙いは何かーーー不比等と女帝たちの世紀
Posted by ブクログ
全般的に、ちょっとオーソドックスな作品で構成されている。
それゆえ、高田崇史氏の小説に対する言及が無い。ミステリー仕立てではあるが、古代史に対する高田史観というのは、色々な縦糸・横糸がずいぶんと張り巡らされるようになっているのだが。
できれば、タタル氏と対談していただけると楽しいはず。
Posted by ブクログ
周防柳は、2冊ほど読んでいる。『蘇我の娘の古事記』『逢坂の六人』、どちらも曖昧模糊とした古代の出来事を、限られた史料の断片から紡ぎ出し、無限の想像力で繋ぎ合わせたストーリーが見事で、ファンになった。
その著者の近著がこれ。小説ではなく、自身や、その他の歴史小説家の作品背景となる古代史を、史料のみならず、小説作品から描き出してみせるという離れ業のような一冊。
もちろん、遠く霞の中の古代史のお話なので、どの作家の、どの作品の、どの想定も、解釈や見解の差異を孕む。明らかに創作だったり、むしろ意図的に史実に反する設えにしているものもあり、そのことも踏まえて、「これは○○の説を踏襲したもの」とか、「これは明らかに著者の創作」と丁寧に解説してくれている。
また、要所要所で、著者自身(=周防柳)の解釈や、どの説を支持するかも語られていて、それも面白い。
古代史の中で、最大の論点とも言える邪馬台国についても、
「大和はさらなる重層性を蔵していて、先に会った人々の暮らしを、後からやってきた人々が塗り換えるような形でできあがったものではないかと想像しています。」
と、邪馬台国は邪馬台国として九州に生まれ九州で滅び、大和は大和としてそれとは無関係な集団が王権を樹立した、と自身の史観をきちんと述べているのも好感。
単に、あれこれ先達の作品の比較と、その肯定、否定ではないところがいい。
一時(数年前?)、ちょっとした古代史ブームで、関連する書籍を、いくつか読んだ時期があったが、またいくつか読んでみようと思った。
本書は、そんな時にも、良き読書ガイドにもなる。良きガイド過ぎて、本書を読めば、紹介している著作をなんなら読まなくても済みそう、起承転結が分かってしまいそうにもなるのがタマニキズ。それでも、数冊、読みたいと思った著作に出会えたのも嬉しい。
巻末のリストも大いに活用できそうだ。
神話の時代の奇想天外さ、邪馬台国から大和王朝成立までの大陸との関係、奈良時代から平安時代の王朝と藤原家の遺恨の顛末など、各時代にそれぞれ面白さがあり、解明されない謎、その謎のヒントが散りばめられていることを、広く紹介している一冊。
古代史の更なる深層へいざなう、大いなるガイドブックとなりそう。