周防柳のレビュー一覧

  • 恋する女帝

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    純愛だった。
    それも、大人の純愛。
    貫くためには、全てを棄てないといけない恋だが、激しさよりは、ほのぼのとする終わりを迎えられてよかった。

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    2025年05月08日
  • 身もこがれつつ 小倉山の百人一首

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    百人一首がどう成立したのか、家隆との友情と恋、それに後鳥羽院も混ざっての三角関係という著者の想像力と、幕府との関係や承久の乱などいろいろな史実としてのイベントを絡めてその過程を描いている。終わりのほうは本当に泣ける。いい小説だし、和歌とは何かとか、当時の朝廷と幕府の関係とか、あまり今まで意識してこなかったこともよくわかった。鎌倉殿の十三人でなんとなく名前は知っていた人物たちも、立体的に浮き上がって捉えることができるようになった。宇都宮蓮生がまたいい味出している。坂東武者でありつつ京の文化も理解しながら、いろんな人のアイディアを踏まえて独自の文化というか趣向のようなものを造りだしているところ尊敬

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    2024年11月13日
  • 身もこがれつつ 小倉山の百人一首

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    最後まで読み、また初めの方を読んだ。
    小学生の頃に覚えた百人一首の物語、鎌倉殿の13人を観たからこそ、よりまざまざと思い浮かぶ。とても引き込まれた物語だった。

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    2024年11月04日
  • 身もこがれつつ 小倉山の百人一首

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    藤原定家、家隆、後鳥羽上皇をめぐり錯綜する思いや歴史のうねりを和歌を通じて描いた傑作です 当然大部分の和歌は百人一首で馴染みのある歌ばかりです

    ネタバレになるので詳しくは書きませんが、人によっては拒絶反応に感じるかるかもしれませんが、全体を通じて流れる空気感は見事に鎌倉時代の社会を生き生きと描いており小説として完成されておりオススメです

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    2024年07月28日
  • うきよの恋花 好色五人女別伝

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    前の作品の「高天原」もとても面白かったです。
    今回は井原西鶴の「好色五人女」をオマージュした作品です。
    「真実は小説より奇なり」と言いますが、本当はこんな裏話があったりして?本当はこんな話だったんだよ。
    なんて、噂好きな巷の人々の声が聞こえてきそうな、物語です。
    そして、恋に身を焦がす女性がいきいきと、描かれているところが好きです。
    綺麗事ばかりじゃなくて、嫉妬だったり、思い違いだったり…。悲しいけれど、何故か優しさを感じます。
    これは、じっくり読んで頂きたい、大人の小説です。
    この作品を読んで、周防柳さんがますます好きになりました

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    2023年02月12日
  • 八月の青い蝶

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    被爆者という事実を隠そうとした主人公。そのわけにハッとされられた。
    父親の妾との初恋。全て失われたときの絶望。
    とても読み応えのある一冊

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    2021年12月22日
  • 八月の青い蝶

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    すごく良かった!
    原爆を体験した人が現在で死ぬ時、現在と過去を彷徨いながらその時を思い出す。
    家族のこと、好きな人のこと。
    被爆した時のこと。
    読んでで辛くはなるけど、何故か読み終えると心温まる本でひた。

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    2021年04月12日
  • 八月の青い蝶

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    淡く瑞々しい恋と原爆の恐ろしさとの対比が見事というほかない。生きるということに疑問を感じたら読む本。

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    2018年05月28日
  • 八月の青い蝶

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    ネタバレ

    圧倒された。
    戦争の、それも広島での子供時代
    儚い恋
    軍人の父親の死
    被爆者としての生活、家族
    たくさんの物事が切々と描かれていて
    つらいけど、悲しいけど、
    生きていくんだと、顔をあげる

    ネタバレになるのだけど、
    気持ちにグサッとくる一部を。。。

    生きる、ということは、
    わしはいままでええことじゃと思っておったが、
    どうやらそうでもないらしい。
    それはええことではなく、
    むしろ、後ろめたいということばのほうに
    近いものであることを亮輔は知った。
    そして、同時に、それがどんなに後ろめたくても、
    つらくても、なにがあろうとも、
    ぜったいに自分から手放してはならぬものであることを知った。
    なにが

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    2017年04月04日
  • 八月の青い蝶

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    小説すばる新人賞。
    新人賞作品ではあるが、ベテラン作家が書いたと言われても疑わないくらい、筆力を感じる。

    余命あとわずかとなった2010年8月と、原爆が落ちた1945年8月を行き来しながら、亮輔の視点を中心に、偵察機乗りの軍人であった父強の視点、その愛人のきえの視点、娘のきみ子の視点から描く。

    あの日のことは語りたくない、というのがとても響いた。
    生き残ったことのきまり悪さ。残ったからには生きねばならない精神性。

    青い蝶による表現、とても好き。
    終盤のひとりごちるシーン、ひらがなを多用しているのがまた良い。

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    2025年11月16日
  • 恋する女帝

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    蘇我娘の古事記が気になったままで、今回初めての周防作品。他の作品でも読んでいた、古代の好きな時代より少し後の話。どちらかというと悪名な孝徳天皇と道鏡だが、歴史は勝者が書いたものだから、真実はもしかして、こんなに純粋だったのか?!
    ところどころ慣れない単語もあったけど、それも気にならないくらい読みやすく、話の世界に引き込まれた。他の作品も読んでみたい。

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    2025年02月04日
  • 身もこがれつつ 小倉山の百人一首

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     藤原定家の一代記。和歌といえば百人一首、百人一首といえば定家というくらいの有名人、華々しい人生かと思いきや、本作の定家は才能はあるものの華やかさとは程遠い、努力の人という感じ。実際はどうだったのか分からないが、和歌だけで位を上げたいという意志の強さと京文化への誇りが気持ち良い。後鳥羽院の鎌倉府への怒りの過程も丁寧に描いていてその点も興味深かった。
     また、隆家との対比も良い。感覚の隆家と理論の定家。両方が併存しうるのも和歌の素晴らしさであるし、私は定家の考え方に共感するので、過去の良作に触れることの大切さを感じた。
     ただ賛否が分かれるであろう、後鳥羽院・定家・隆家の恋の三角関係。確かにこの

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    2024年10月05日
  • 小説で読みとく古代史 神武東遷、大悪の王、最後の女帝まで

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    この本で言う「古代史」の範囲は、何らかの文書に記録が残っているところから始まり、奈良時代の終わりまで。
    年代順にテーマを決めた章ごとに、時代のあらましと、どんな記録があって(簡単に)、どういった見方がされているか、または論争があるかの説明。
    具体的に作品を取り上げ、歴史的事件や人物をどう見て、どの学説を採用しているか、またはその作家なりのどんなオリジナル視点を入れているかなどを解説する。
    そして、その時代について、周防さんがどの見方を押しているか、どう考えているかを記してまとめている。
    と言う、スッキリしてとてもわかりやすい作り。

    個人的には、欽明天皇くらいになって、「やっと知ってる人来たー

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    2023年05月24日
  • 小説で読みとく古代史 神武東遷、大悪の王、最後の女帝まで

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    ネタバレ

    全般的に、ちょっとオーソドックスな作品で構成されている。
     それゆえ、高田崇史氏の小説に対する言及が無い。ミステリー仕立てではあるが、古代史に対する高田史観というのは、色々な縦糸・横糸がずいぶんと張り巡らされるようになっているのだが。
     できれば、タタル氏と対談していただけると楽しいはず。
     

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    2023年05月16日
  • うきよの恋花 好色五人女別伝

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    ネタバレ

    面白かった!良質のエンタメ小説。井原西鶴の「好色五人女」を下敷きに、その元となる実話を書いているが、最後の章で、それも西鶴による創作であることがわかる。
    西鶴の人物像にもカジュアルに触れられた。
    ポップな現代文で読みやすく、しかし「正しい日本語」で書かれていて、気持ちよく読める。教養のあるひとはこういう小説を書けるんだなぁ。物語も一つ一つ、リアルな人間の心の機微を描かれていて、しかし語り口は重すぎず、お茶のお供のエンタメとして丁度よい感じ。
    作者に興味がわいた。

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    2023年03月12日
  • 八月の青い蝶

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    ネタバレ

    この物語の分岐点は希恵の娘が死産(もしくは、そして恐らくは福子によっての窒息死)したことの様に思う。もし、この子がいれば亮輔にとっては妹、希恵は本物の妾になった。とてもじゃないが、求婚など出来なかっただろう。

    それにしても、希恵は幼い。妾になったのにも関わらず、その息子と結婚することが可能であり、それを囲っている強が受け入れると信じて疑わない。彼女の言葉を借りれば「なりたくてなったんじゃない」からなのだろうが、甘い話だ。敗戦で強の心が壊れた状態で希恵を奪い合うことになったら、後味が悪い。臭い物に蓋、である。

    男性は生涯少年の様なものだと誰かが書いていたが、それを象徴するかの様な小説だった。

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    2022年09月30日
  • 八月の青い蝶

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    戦争を題材としたものは気分が落ち込む哀しい結末しかない物ばかりなので少し苦手でタイトルからは違うタイプを想像していたので、あれ?と期待を裏切られたスタートだった。
    死を前にした被爆者の主人公が子供の頃の初恋を回想するが戦時中で今とは全く違う。
    出征中にやってきた年若い父の愛人と後妻の母とまだ学生の主人公。
    昆虫好きから心を通わせた2人の淡い恋。
    無惨にも原爆が散らせてしまった。
    主人公が自身の被爆体験を語りたくない思いを娘の学校の先生と言い争う場面でハッとした。
    確かに原爆を忘れないために語り継がなくてはいけないとよく言われるが、それは体験していない者の意見であって当事者にしてみれば隠して死に

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    2022年01月30日
  • とまり木

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    IやMたちは天国でも地獄でもない「ある場所」で過ごしていた。
    辛い経験、体験からこの場所で生活してる人々。
    この場所の実態を知った者は「生きるか」「残るか」の選択をせまられる…。

    とまり木の意味を知ったら話の内容がしっくりきた。

    正直苦手な内容だと思ったけど読まず嫌いでした。

    もし自分が「ある場所」にいたらどうするのか、考えたい一冊。

    死にたいくらい辛いことがあっても
    生きるの嫌になるくらい辛い出来事があっても
    生きていれば必ずいいことがある。

    うんうん。今ならすっごくわかる

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    2019年02月25日
  • 八月の青い蝶

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    読みづらい文体だというわけではないのに、思いのほか読むのに時間を要しました。ひとつには、偵察機のシーンには興味が持てなかったからということもありますが、そのシーンも含めてとても丁寧に書かれているゆえ、丁寧に読まなければならないような気がしたからです。

    死期迫って自宅に戻った老人の少年時代の思い出。初恋の相手は父親の若き愛人。当の父親は出征して、母と子、愛人とばあやで暮らすという特異な家庭環境にありながら、各々が各々の存在を認めていたことがわかります。

    あまりに瑞々しいシーンの後の被爆シーン。そのギャップに打ちのめされました。まるで合唱組曲『チコタン』だけど、心安らかに三途の川を渡れたならば

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    2018年08月23日
  • 八月の青い蝶

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    原爆を落とされる前後の広島。
    核爆弾投下後の生々しい描写に思わず息をのむ。
    風化させない為に、と自らの体験を語る人がいる中
    体験を語ることの白々しさを感じてしまう人もいる矛盾。
    このぐるぐるとループする葛藤がとてもリアルで、私の頭の中もグルグルとしてしまう。

    戦争は愚かだとわかっていても巻き込まれてしまう人間の弱さ。そんなものをひしひしと感じました。

    原爆投下後の悲惨さに焦点を当てるとズシンと重くなってしまいそうなのですが、読後感は爽やか。
    美しい、と言った方が正しいか。

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    2018年03月28日