北條民雄のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
「死のうとしても死にきれない。死にたいのに。違う、俺はむしろ生きたいんだ。自分という(癩病を患った)人間がここに存在していた という証を残したいのだ」
そんな訴えが聞こえてくるようだった。
これは北條民雄の魂の叫びだ。
癩病を発症し、面識のない人間にまで差別、偏見の目に晒された上、隔離病院へ押し込まれる。
そんな過酷な状況の中、声を上げることを止めなかった彼はカッコイイ。
人間らしさが詰まった声は文字になり、 それらはやがて文学となった。
癩病がなんだ。俺は患者である前に一人の人間だ。俺を見てくれ。みんなと同じ人間なんだよ。
彼は自身の作品を癩病患者としての色眼鏡で評価されることを最も嫌っ -
Posted by ブクログ
この先死にたくなって3分間本を手に取る余裕があったなら、この本の「断想」か「柊の垣のうちから 表情」の一節を読むと思う。
「美しい、まだ十五六の少女が現はれる。この少女を直ちに殺すことも、また限りない愛情をもつて抱きしめることも、可能となる。しかも凡ては美しく、なつかしい。」
「歪んだ表情。
生硬な表情。
苦しげな表情
浅ましい表情。
餓えた猿が結飯に飛びつくような表情。
これが宗教に頼ろうとする時の自分の表情である。苦しくなった。 書いてはならぬことを書いてしまったような気がする。」
読むと死にたくなるし、生きたくもなる。どこか俯瞰している。真ん中から両極を見ることのできる気がするこの -
Posted by ブクログ
ネタバレいのちの初夜が100分de名著で取り上げられたことから興味を持ち、読んだ。
北条民雄の書くものを小説だけでも生涯に一度は読むべきだと思う。
陳腐な表現にしかならないが、生きる苦悩、死ねない苦痛、死の必要性、全ての人に共通する普遍的な苦しみと想像を絶する世界が描かれている。
このような世界が日本にあったこと、このように扱われた存在があったこと、誰も忘れてはならないし知るべきだと思う。
苦しい読書だったが読めて良かった。
あなたが見られた癩者の生活は、まだまだほんの表面なんですよ。この病院の内部には、一般社会の人の到底想像すらも及ばない異常な人間の姿が、生活が、描かれ築かれているのです -
Posted by ブクログ
★4.6
苦しく、辛い小説でした。
高校生の時に、破戒に出会った時と同じだ。あの時も丑松さんあなたはなにも、悪くない。と悔し泪を流したものですが、いのちの初夜も同じ感覚でした。
私の故郷にも、ハンセン病の療養所があり、今まで手を出すのが正直怖かったのかもしれない。
子供の頃にそれに罹患された方にあったこともあるので小さな頃だったので、ただただ、怖かった。驚き怖かった。それが、凄まじい差別を伴っていることを知ったのは、だいぶ後になってからだったが、その差別を知った上で、この作品に触れると、苦しく、辛い、ものかたりでした。
常に自死と隣り合わせ、死を見つめて生きる、辛く悲しいものかたり。
ちゃん