三井誠のレビュー一覧
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地球温暖化を疑問視したり進化論を拒絶する人が米国には多い。その理由は「科学リテラシーの欠如」ではなく、個人の価値観や信念にある。そのため、科学的な事実を事実として伝えるだけでは、人々を事実に至らしめる事はできない。ではどうすれば良いか。本書による答えは、相手を尊重し、共感を得るように伝えること。伝え方が大事だということだ。
本書は米国での多方面への取材を通じて、「反科学」が醸成される仕組みを分かりやすく説明する。その上で科学の伝え方についての新しい動きを紹介する。著者は新聞社の科学記者だけあり、説明が分かりやすい。本文に添えられた写真やイラスト、グラフも大いに参考になる。 -
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人々の共感を得るには事実を並べて「こんなに証拠がありますよ」ということではなく、よりわかりやすく相手の立場に共感しつつ、伝えていく努力が必要ということが重要だと認識。事実(厳密には科学的事実)よりも共感力とコミュニケーション力のほうが重要ということ。
大半の日本人としての感覚では、科学的思考は正しくて、その結果として生まれた各種自然法則は、正しいと「信じて」いる。ところが本書でのキリスト教の信仰にかかわる問題(進化論の事例)や、経済的政治的信条にかかわる問題(=地球温暖化の事例)については、素直に自然科学の法則よりも、信仰にもとづく聖書における事実や政治的に経済的に自分に都合の良い都合の良い考 -
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我々は如何に類人猿から進化してきたのかを、最新の研究、分析をもとに分かり易く解説している。
30余年前の私が学生だった頃の教科書にも、北京原人、ジャワ原人、ネアンデルタール人、クロマニョン人等の名前は載っていたものの、彼らと今を生きる人類との関係については明確な記述はなかったように思う。
しかし、その後、炭素やカリウムの放射性物質を利用した年代測定法や遺伝子の研究の進歩により、様々なことが判明してきた。
その中でも最も注目されるのは、現生人類は、各地の原人が夫々進化を遂げた(他地域進化説)のではなく、アフリカで生まれて世界に広まった(アフリカ単一起源説)ということだろう。遺伝子の研究は、「世界 -
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ネタバレこれは…面白いしなかなか興味深い本。ドーキンスの「神は妄想である」を読んだ後だったので、より深くアメリカの理解が深まった。
科学を信じてない人は、ただ知識がないということではなく、「その人の思い」から生じているという。人は、自分の信じたいものを信じるし、周囲の環境によって情報も偏る。よく知らない科学者が言うことより、信頼する親の言うことを信じる人だっている。これって日本でも同じことが言えると思う。
なので知識を増やせば科学的な考え方に至るわけではない、ではどうするのか?というのが本書の内容なのだが、最終的な解決策に至るまで、現代アメリカの政治や宗教事情が露わになる。
例えば地球温暖化について -
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科学をどう伝えるか。
価値観、信仰、利害。
こうしたものを超え、普遍的であるべき、と筆者が考える科学を、どう伝えればよいか。
そうしたことを、考える本。
学べば学ぶほど、自らの仮説・直感を補強していき、頑なになる傾向があること。
論理は好悪の奴隷、という話。
演説に大切なものとして、論理、信頼、共感をアリストテレスはあげたことを紹介する。
それが、どうやら結論のようだった。
「反対している人たちは何を心配しているのか。
自分はただ事実を押し付けるだけになっていないか。
お互いの心を結び付ける何かを見つけ出せないか。」
「科学を巡るコミュニケーションでも、気持ちを大事にすることで誤解を解きほぐ -
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事実を訴え続ければ、分かり合える。
そんな考えは甘いのかもしれない、と思わされました。
アメリカでは今でも進化論や地球温暖化を信じていない人がいるという入り口から、人々が反化学の思考に至るプロセスを、現地の人の取材を交えて解説した一冊です。
進化論や地球温暖化を信じない人たちとは、どのような人たちなのか。個人的には常識に疎い、学力の高くない人たちばかりなのではないか、と思っていたのですが、本の中で紹介されている人たちは、決してそういう人ばかりではない。新聞記者だった著者の質問にも丁寧に対応する様子が見られます。
また地球温暖化を否定する人の中で学力が高い人ほど、否定の傾向が強くなるというデ -
購入済み
久しぶりに「唸った」
と言っても本当に声に出して唸った訳ではないが「なるほど」と思うことが多く、実り多い一冊である。トランプ現象を始めとして、最近のBLMなど、アメリカという国と国民をどのように理解したらいいのかという問題意識にバッチリとハマる内容。「科学」VS「非科学」あるいは「知性」VS「反知性」のステレオタイプな理解では何も進まないことがよく分かる。これを実際の生活や仕事にどう落とし込むのか。それが今後の課題となる。課題が見えるというある意味最高の読書体験となった。
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人類はどこから来たのか?今のところ現生人類(ホモ・サピエンス)の歴史は700万となっているらしい。そんなことどうやって分かるのか?何を持って700万年なのか?化石って何?というような素朴な疑問に答えを用意してくれているのが本書。
著者は京大理学部卒の読売新聞記者だが、アウストラロピテクスだとか専門用語が多くて人類学は苦手だったという。そんな著者が、専門家に取材しながら最新の人類学を理解し、執筆当時(2005年)、何がどこまで分かっているのかということを分かりやすくまとめてくれています。専門家じゃなくて記者さんが理解した内容を分かりやすく紹介してあるので、一般読者にとってはとても読みやすい。ど