北林一光のレビュー一覧
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不必要なことを書かないありのままの恐怖
犯人当てをする物語ではないのであえて書くがその恐怖の正体は熊である。
解説で黒沢清さんが「不必要なことは書かないストイックさが、全編にみなぎっている」といっていたり、批評家の佐々木敦さんが「余計なケレン味を排した、シノプシス的な平明さこそ、本作の魅力だと思う」と評価しているように、この作品は自然や恐怖を誇張せずにそのまま書いている。その誇張せずに書いたことが、作られた恐怖では表現できない自然が持っているありのままの恐怖、危険性を鮮明に表現している。それがただただ、恐ろしい。
熊の事件では作中にもでてくるように吉村昭氏の「熊嵐」のモデルとなった三毛別 -
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「恐い。やめられない!」という、
この帯をみたら買わずにいられなかった。。。
北アルプス、漆沢渓谷は、登山客たちで賑わっていた。
山小屋の経営者、久作は、いつもとは違う不吉な気配を感じつつ、
愛犬を連れて湖に釣りに出かけた。
日も暮れて、帰ろうとしたとき、
岸辺から10メートルと離れていない湖面に妙なものが浮かんでいた、
愛犬は、それに向かって吠え始め、
目を凝らしてその正体を見極めた時、久作は息をのんだ・・・
蝙蝠や蜻蛉の異常発生、
写真に写りこんだ見知らぬ男、
次々と起こる不可解な出来事、
そして、ついに死者が・・・・!
読み進めるにつれて -
Posted by ブクログ
最後の最後まで手に汗握るようなホラー・サスペンス小説。
北アルプスの漆沢渓谷で次々起きる自然の猛威と怪異…山小屋を営む田沼久作、渓谷のホテルを訪れた梶間夫妻、礒崎老人を中心に先の読めないドラマが展開していく。
畳み掛けるように描かれる人間に対する自然の反乱の数々にSFなのだろうか、パニック小説なのだろうかと混乱するのだが、さらには心霊現象が描かれ、ますます混乱を極める。しかし、少しずつ真相が明らかになるにつれ、恐怖を感じながらも、混乱から解放された安堵感を覚える自分が居た…北林一光さんの作品に共通するのは、作中に描かれる迫力のある自然描写とそこから伝わる自然への畏怖と愛情であろう。
本作 -
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ネタバレ長野県安曇野市を舞台に、山で失踪したのち遺体で見つかった妻の死から、物語は始まります。
序盤はミステリー風味ですが、ほどなく熊の仕業であることが判明します。
熊は怖い!
日本人にとって熊は割と身近な存在ですから、他のパニック物と違い、リアルに怖いですね。
遺体が食害されていたことから、犯人(犯熊)はツキノワではなくヒグマだろうという推測がなされるシーンがあります。
それが強く印象に残りました。
なぜなら2016年にツキノワグマによる連続食害事故があったから。
(十和利山熊襲撃事件)
小説ではあり得ないとされていたことが、現実で起きている。
ちなみに話の展開が2012年の秋田八幡平クマ牧場 -
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書店で平積みされており、
宮部みゆき先生の絶賛文カバーがついていて
「それならば」という事で購入。
現代では比較的薄い部類の文庫本だが、
密度が濃く、物理的な厚さ以上に厚く感じた。
山で得体の知れないものに襲われるというサスペンス。
まぁそれは非現実的なものではなく・・・熊なわけだが。
「熊嵐」という傑作・名著がある。
あれは事実を淡々と記してあり「これは現実」という恐怖がある。
本作はフィクション。
登場人物が多いが、それは現実味を出すように作用していると思う。
フィクションであるが故、暴力描写はいくらでも残虐に描ける。
ノンフィクションにはノンフィクションの
フィクションにはフィク