あらすじ
長野県安曇野。半年前に山で行方不明となった妻の頭蓋骨が見つかった。三井周平は悲嘆に暮れながらも、遭難場所から遠く離れた場所で発見されたことに疑問を持つ。あれほど用心深かった妻に何があったのか? 数週間後、沢で写真を撮っていた女子大生が行方不明に。捜索を行う周平たちをあざ笑うかのように第三の事件が起こる。山には、一体何が潜んでいるのか!? 稀有の才能が遺した、超一級のパニック・エンタテインメント!
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前情報なしに読みました。読み進めていて思わず息を止めてしまうほどにリアリティのある文章に引き込まれます。読了後は自分でも驚くほど息切れしていました。
ぜひネタバレを踏まずに読んでいただきたい一作です。
Posted by ブクログ
不必要なことを書かないありのままの恐怖
犯人当てをする物語ではないのであえて書くがその恐怖の正体は熊である。
解説で黒沢清さんが「不必要なことは書かないストイックさが、全編にみなぎっている」といっていたり、批評家の佐々木敦さんが「余計なケレン味を排した、シノプシス的な平明さこそ、本作の魅力だと思う」と評価しているように、この作品は自然や恐怖を誇張せずにそのまま書いている。その誇張せずに書いたことが、作られた恐怖では表現できない自然が持っているありのままの恐怖、危険性を鮮明に表現している。それがただただ、恐ろしい。
熊の事件では作中にもでてくるように吉村昭氏の「熊嵐」のモデルとなった三毛別熊事件が有名。
この事件は大正に起こったので、現代ではこのような事件は起こらないだろう思っている人がいるだろう。しかし、この本が刊行された2007年より後、2012年に秋田八幡平クマ牧場事件が発生する。この人災ともいえる事件とその後のほとんど同じようなことがこの本には描かれている。作者は書いた当時、このようなことが今後起こることを予見していたのだろうか。
作中、主人公の言葉に以下のようなものがある。
>誰でも、自分だけは事件やトラブルとは無縁だと思って暮らしている。いろいろな不幸が巷にあふれているけど、まさか自分が当事者になることはないだろうと考えている。いざ事件やトラブルに巻き込まれても、最初のうちは頭のどこかでそれを否定してしまう。まさかそんなはずがないだろうってね。まさか、まさか、まさか……その連続ですよ。それからようやく事態の深刻さを自覚する。
今は色々なことが簡単にできる時代である。しかし、それでも人間は自然の前では無力であるのだとこの本は再認識させる。
Posted by ブクログ
長野県の山中で次々と人が忽然と姿を消す。
非常に軽妙な語り口の文体で、読んでいながらリアルタイムで頭の中でも映像(映画)が流れていくかのようだった。
荘厳で美しい自然の風景と容赦ない血まみれ殺戮シーンとの対比含め、静と動のメリハリの付け方も非常に良かった。
Posted by ブクログ
失踪した原因はクマだろうというのは真っ先に考えるが、初めは凶暴化したツキノワかと思った
しかし、あの地にヒグマが出るという経緯が何とも人間の愚かさを現している
想像できる展開ではあるが、最後はドキドキした
文章が読みやすかった
Posted by ブクログ
長野県安曇野市を舞台に、山で失踪したのち遺体で見つかった妻の死から、物語は始まります。
序盤はミステリー風味ですが、ほどなく熊の仕業であることが判明します。
熊は怖い!
日本人にとって熊は割と身近な存在ですから、他のパニック物と違い、リアルに怖いですね。
遺体が食害されていたことから、犯人(犯熊)はツキノワではなくヒグマだろうという推測がなされるシーンがあります。
それが強く印象に残りました。
なぜなら2016年にツキノワグマによる連続食害事故があったから。
(十和利山熊襲撃事件)
小説ではあり得ないとされていたことが、現実で起きている。
ちなみに話の展開が2012年の秋田八幡平クマ牧場の事故に似ていたので、てっきりそこから着想をえたのかと思っていました。
ところが、小説の発表年は2007年。
現実が小説を超えていく怖さ。
あるいは作者の懸念が現実化してしまったのか。
そういう小説外の状況も含めて、面白く読める、そして考えさせられる一冊でした、
Posted by ブクログ
昔読んだやつが
違うカバーになって本屋に並んでた
懐かしくなってまた読んでみた
パニックアクション好きとしては
すんごい怖いのに
誰かに「おもしろかったぜ」って
コーフンしながら話したくなる
残虐なの苦手なので
そういう部分はキツいものがあるけど
最初からずっと緊張しっぱなし、
でも疲れないし飽きない
(読み終わるとかなり消耗する)
怖いの苦手
グロいの苦手な方は
読まないことをオススメする
星は4つ
Posted by ブクログ
心霊的なホラーかと思ったら現実にもありそうな物語。
内容は重いのに、それを感じさせない臨場感でサクサクと読み進められた。
全体的にめちゃくちゃ嫌な人、という役回りの人がいなかった気がする。
何かしらクセはあるけど、それも憎めない、そんな登場人物達とドキドキしながら最後まで読めた。
Posted by ブクログ
面白かった(と言っては不謹慎⁇と思ってしまうほどの臨場感…まさに今このニュースが激増してますし…)
これ、まだ続きが書けるのでは⁇と思ったりしたのだけど、作者はもう亡くなられているのですね。
残念です。
Posted by ブクログ
臨場感がすごい。映画を1本見たかのような読後感。
最初は何が起きているのかが分からず不気味で怖い。だからこそ何が起きているのかとても気になる。
そしてだんだん分かって来るんだけど、そこから最後までノンストップ。ハラハラ、ドキドキが止まらない
Posted by ブクログ
面白かった。一気読み!前半は、周平さんに感情移入。何が出で来るか判らない恐怖。緊張感がじわじわと。
事実が淡々と語られる無駄の無い文章が、読んでいて気持ちいい。
真ん中辺りではっきりするのだが、そこからきっと捕物で退屈になってしまうのかな?と思いきや、ここまでやるかの暴れっぷりに退屈せず。最後もきっちり回収、締めて頂き見事だと思った。
改めて近くの山にでも行って、自然を、余韻を噛み締めたい!なんて思った。
Posted by ブクログ
ヒグマは最初に男性を食べると、その後男性しか食べません!
このストーリーでは、最初に食べられたのは、女性なのでその後の食害は女性ばかりなのです。
3/7/31
Posted by ブクログ
山中で起きた事件の犯人は何か?オカルト的な何か、もしくは山岳ミステリをイメージ(期待)して読み進めましたが、そうではないと分かった時に別の面白さに変わりました。登場人物と同じ視点で淡々と真実に迫っていくぶれない筆致に引っ張られました。巻末の映画監督黒沢清氏による著者(故人)との思い出を綴った解説もよかったです。ストイックと映画的という表現になるほどと思いました。
Posted by ブクログ
宮部みゆきさんが、絶賛してた!ってあったので読んでみた。
ほほ、予備知識なしで読んだんで、ミステリーかと思ってたけど、アニマルパニックもんやった。
でも、面白い!迫力ある!
まぁ、惨殺シーンはやはりエグいので、R指定にしときます!
作者が、映画関係の仕事してた事もあるのか、映画を観てるみたいやった。
こんなん読んだら、山歩きとか、山でキャンプとか、怖くて出来ん!
ちなみに、私はインドア派なんで、そういう危険は、既に回避してる^_^
蛇足:
そういえば、昔、「グリズリー」って映画があったなぁ…「ジョーズ」の二番煎じと言われたB級映画。
Posted by ブクログ
私も田舎のやや山育ちのため、山、川の知識がある。
自然の恐ろしさは幼少から身についているから、都会から
キャンプ、登山にくる人の安易さに危惧している。
この作品は山に関わる人への警鐘ともいえる作品かもしれない。
自然災害は単なる異常気象だけでなく、昔からのウイークポイントであることが伝承されていないのである。
海でもそうだが、遊泳禁止は必ず、死と隣り合わせという危機感をもっているのか?毎年、残念なニュースを目にする。
決して自然は侮っていはいけないということだと思う。
Posted by ブクログ
書店で平積みされており、
宮部みゆき先生の絶賛文カバーがついていて
「それならば」という事で購入。
現代では比較的薄い部類の文庫本だが、
密度が濃く、物理的な厚さ以上に厚く感じた。
山で得体の知れないものに襲われるというサスペンス。
まぁそれは非現実的なものではなく・・・熊なわけだが。
「熊嵐」という傑作・名著がある。
あれは事実を淡々と記してあり「これは現実」という恐怖がある。
本作はフィクション。
登場人物が多いが、それは現実味を出すように作用していると思う。
フィクションであるが故、暴力描写はいくらでも残虐に描ける。
ノンフィクションにはノンフィクションの
フィクションにはフィクションの
それぞれの良さがる。恐ろしさがある。
続編の可能性を匂わすラストとなっている。
Posted by ブクログ
読売新聞の日曜書評で見つけ、読んでみた。
ドンデン返し系を想像していたが、そのような話ではなく、正当的なフィクションであった。
自然と人間との関わりについても考えさせられる。
著者が若くして亡くなっていたというのも驚きだった。
330)
Posted by ブクログ
長野県の山で次々と失踪する女性。
獣害事件かと見せかけて真相は殺人鬼による犯行かと思っていたらそのまんま獣害事件だった笑
でも変に真相を引っ張っらないし、話を複雑にしなかったのがかえって好感が持てた。最近の本は最後の20ページくらいまで読まんと真相分からんし。中盤でネタばらししても最後まで読ませてくれる、そんな本こそ称賛されるべきでは?
そもそも基本情報なしで読んだからどんな話なのかわからなかったのもあるが…
たまにはこういう読み方もいい。
文章も余分な物がなくて読みやすいしスリルもある。
なかなかよかった。
Posted by ブクログ
調子が悪くて一日中布団の中にいた、ということもありますが、
一気読みでした。
犯人は何なのか、ということは最初から薄々勘付いては
いるのですが、次々と人が殺されていくのがもう、怖くて怖くて。
実際に昔北海道で、たくさんの被害者を出した熊の事件があったんだなぁ。
この本を読んでいる途中でネットで調べたけど、恐ろしい事件でした。
ヒグマの恐ろしさを改めて知りました。
この本を読み終わった途端、テレビで「初のクマサミットが開かれ…」とやっていてビックリ。
くまの被害とかを報告したりするんだって。
そこで、ツキノワグマが人里に現れたとかで、射殺されたりしてるのを見て「あれ? この本ではツキノワグマはよっぽどのことがないと人を襲わない、とあったような…。殺すなんてかわいそう」と思ったけど、それもまた、対岸にいる私と、実際に農作物とかに被害を被っている地元の人たちとの、温度差なんだろうなぁと思いました。
Posted by ブクログ
長野県安曇野。三井周平の妻は山で行方不明になり、半年後に頭蓋骨が見つかった。三井は悲観に暮れながらも、遭難したとみられる場所から遠く離れた所で骨が発見されたことに疑問を抱く。
数週間後、沢で写真を撮っていた女子大生が行方不明に。捜索を行う三井たちをあざ笑うかのように、第三の事件が起こる。
山には一体、何が潜んでいるのか?
作者さんの亡きあと、ご友人たちの手によって単行本化したパニック小説です。
大学時代の美術史の先生が、「人間が無手で勝てる動物なんてチワワくらい」とか言ってたのが今も思い出に残っているのですが(何故美術史教師がそんな話をしていたのか)、個人的にはどんな動物にもあまり勝てる気がしない。人間の武器は社会性だからね……。個だと弱いよね……。
こういう本を読むと、やはり人間は自然に対して無力だなぁという虚無感に襲われます。共存共生とか言うけど、なかなか難しい……。そもそもは人間のせいと言えなくもないけども。
最後に、微ネタバレだけど、これは知っておきたい人多いのではと思うので一つだけ。人だけでなく犬も死にます。
Posted by ブクログ
☆☆☆.5
一気読み!ノンストップサスペンス。
自然豊かな長野県の山中。
美しい景色と空気に私たちは癒される。だけど、次の瞬間には全てを恐怖へと変貌させてしまう。抗うことも諦める猶予も与えず、なすすべもなく〝それ〟はいとも簡単に命を奪う。
正体不明の〝なにか〟と闘うモンスターホラーかと思っていたけど、本物のモンスターだった。
行方不明となった妻が山中から無惨な姿で発見された。男の心の傷も癒えぬ中、今度は女子大生が消えた。2人の疾走に関連性はあるのか。
ここから恐怖の輪がどんどんと広がり、一転二転とするたび心拍数が上がってゆく。
ひと言にモンスターが悪い!と言えないもどかしさがある。犯人探しをしたところで時すでに遅し。〝被害者〟が多すぎる。人の欲が渦巻いてやるせなさが残る。
人々の生活が丁寧に描かれていることで、悲惨さが増す。心情に訴えかける恐怖がある。
人の愚かさや、無力さ、身勝手さを突きつけられ、それでも、人を想う心や立ち向かう勇気に救われる。
映像が目に浮かぶような、複雑な描写がとても上手な作家さんですが、もうご存命でないと言うことでとても残念。
今年の17冊目
Posted by ブクログ
ダブルカバー。内側の方が好きだなあ。
山で起きる、不思議で恐ろしい事件。何の仕業でこんなことに?、と気になってどんどん読める。ホラーっぽいのかなと思っていたけれど、霊的な怖さではなかった。
でも怖い! 惨殺され具合がエグイんだもん。淡々としているようで描写はこまかいので、割と冷静に想像して『うえー』と思ってしまった。
人間のやることが後手後手になってしまう感じ、リアルだなと思った。最後の種明かし、面白かった。ちょっと不安要素残るところも好き。映像で見たら楽しそうだなと思った。
周平のセリフで、「おれの家に泊まりたまえ」というのはちょっと古くさく感じたな。48歳くらいだと思うけど、「〜〜たまえ」ってなかなか言わないよね。
Posted by ブクログ
だんだん行方不明になったり、死者が出た理由や、犯人がわかってきて、面白かった。
特に、その犯人を捕まえるための罠を仕掛けるところが面白かった。
Posted by ブクログ
このカバーの上にさらに、文字だらけの手書きポップのようなカバーが被せてあって、そこには
「先が読めないから、最終ページまでぐいぐい引っ張られる。私は、こういう小説が大好きです!」宮部みゆき氏 絶賛!!
と、あったが、はっきり言ってそれほどでもない。
かなり早い段階で先は読めていた。
が、つまらないわけではなく、それなりに楽しめました。
中学生の頃に読んだ西村寿行氏の「魔の牙」をおもいだしました。
それにしても、最近はこういう”ダブルカバー”っていうのかな? 流行り?
Posted by ブクログ
とある山で行方不明になった主人公の妻が、半年後に白骨死体で発見されるところから物語が動き出し、その後数人の行方不明者が・・・。
面白く読めました。ハリウッド映画の様な情景が頭に浮かんでくるような小説です。
あまり、やられたーとかそういうことかー見たいな感覚はありませんでしたが、飽きずに最後まで楽しく読むことは出来ました。
Posted by ブクログ
以前に読んだのだが、最近『羆嵐』を読んで思い出し再読。
羆嵐の時代と比べると、人間は自然や野生生物に対して、ずいぶん傲慢に生きているのかもしれないと改めて考えさせられる。
信州の山中で神隠しのように女性が姿を消す。
主人公が妻の失踪と死の真実を追い、やがて羆が人を次々に襲うのだが、結末に向けてハラハラしながらも、羆の怒りと悲しみが胸にくる。
Posted by ブクログ
帯…というか、表紙買い。装丁の上に『「ファン・ピー」を知っていますか?』という表紙がもう1枚重ねられており、「宮部みゆき氏絶賛!!」に踊らされ手に取った。
パニックスリラーというのはこういう感じかな?
洋画によくある、正体は分からないけど、人々が見えない何かに追い詰められていき、恐怖の和が広がっていくヤツ←語彙力ww
映画ではこういうパターンのは、ハラハラしすぎて苦手だけど、小説ならいける。
けど、血なまぐさい描写がリアルでつい、想像しすぎると、読んでいて顔が歪む。
読みやすかった。
Posted by ブクログ
前半まではホラーのようで、怖いながらも引き込まれて読み続けました。
後半はなんとなくパワー不足に感じましたが、
最後まで飽きずに読めました。
動物の描写が物足りなかったように思います。
行方不明の恋人を探す青年に感情移入。
父親に殴られるあたりと、恋人の最後を推理して探すあたりがとてもリアルです。