波田野節子のレビュー一覧
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ネタバレ主人公オンミョンの父は避難中に妻と娘と離れ離れになり一晩で身勝手にも死んだと諦めてアメリカへ行く。のちに2人は無事だと判明するのだが、もし死んでいたとしても遺体を探す情もないのだろうか。国のために行動する大義があれば、家庭は放っておいても許されるのか。後にオンミョンの夫となるクウォンソも親に内緒で勉強のため17歳で渡米する。せめて書き置き残す描写が欲しい。親が可哀想だ。著者としては女性が家から出ること、女性が勉強すること、留学して文明的な社会を経験すること、親が決めるわけではない当事者同士の自由な結婚など朝鮮にはない風習文化を読者に紹介したいと思って書いたのかと思った。確かに1900年代には新しいものの見方の数々だった。朝鮮の文化についても触れられているので勉強になった。
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著者は李人稙。イ・インジクと読むそうです。これは1900年代初頭に書かれたものです。古典と近代文学の中間にある過渡期の作品で、日本でいうと二葉亭四迷とか坪内逍遥のように画期的な文学だといえるそうです。訳者はこれをはじめは「朝鮮語の現代語訳で読んだ」と述べているので、原文は難解な古語まじりの原語なのでしょう。筋は日清戦争時の戦場となった平壌を舞台に、父母と離散した金玉連(オクニョン)という女性の波乱の人生です。「え!フォレストガンプかいっ」という唐突感もちょっとあるけど感動物語です。現代韓国小説はいくつか読んだことがあるけど、朝鮮文学は馴染みがなく新鮮でした。近代朝鮮史の要約が解説として付いていて親切です。ただ、訳が難しいのを加味しても、文章が直訳に近くてとても読みにくい。正確を期すとこのようになるのかもしれない。
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最近、どこかの新聞の書評だったと思うけど、イ・グァンスの「無情」と、この中公新書の紹介を見た。
この本を読んだだけでは、今の悪化した日韓関係を理解することは難しいと思うが、日本人と朝鮮人がどういう結びつきであったか、その一片を知ることができた。多くの朝鮮人の若者が学ぼうと日本にやってきて、そこで生まれた日本人との交流や友情もあった。ただ、欧米列強への脅威から、日本は朝鮮半島を隣国・友人として扱うことができなかったのかな、と思う。その日本を取り巻く環境の変化が、このイ・グァンスの考えの変化に映し出されている。彼は日本語もでき、日本の学友もいる。朝鮮が自立・発展するための方法として、日本という隣国をどう活かすか、という視点を持っていたのだろう。それが「親日」とみられ、彼の哀しい晩年へとつながる。
日本と韓国は、切っても切れない隣国だけど、知らないことが多すぎる。今の日韓関係の元になっている戦中・戦後の作家の作品を通じて、色々韓国を理解する手助けになるかもしれない。 -
Posted by ブクログ
昔の著書で、硬い文体と難しい内容かと思っていたら、優男の虚勢や焦燥、イジケや現実逃避…挙動が手にとるように分かりやすい話だった。飾らない情けない感情の表出とか、親近感をもちながら読めた。
親や先生、目上の人へのへりくだり、女性とのドロドロ愛憎なんて、韓流ドラマを観てるよう。
男尊女卑は、少し前の日本も同じようだったし、女性の権利や生き方への鼓舞は、今の社会にも通ずるもので、内容は入りやすい。
自分の教師としての自尊心を手放し、未熟な自分を認め、これからどう学んでいくか、この国に貢献し発展させるため、女性をはじめ民族の啓蒙、意識をあげていく必要性をうたう最後のくだりは、ちょっと唐突感は否めないけど、時代の変革期の熱量を感じられた。 -
Posted by ブクログ
日清戦争の戦場となった平壌、戦火を逃れようとするうちに家族とはぐれてしまった7歳のオニョン。日本軍医の親切により、彼の留守を守る妻のいる大阪で暮らすことになったのだが、軍医は戦死してしまった。再婚のじゃまになると、家にいたたまれなくなったオニョンは、両親も死んでしまったことだし、これ以上生きていてもと自殺を考えるのだが、列車の中で朝鮮人の男性に遭遇する。身の上話を聞いた彼は、学問のため渡米をする自分と一緒にアメリカに行こうと誘う。
一方、オニョンの父は、妻も娘も死んでしまったものと考え、傷心の身で一人アメリカに渡り、母は母で、娘は死んでしまったと一人寂しく朝鮮の家を守り、夫の帰国を待つのだった。
本書の作者は、近代朝鮮最初の小説家と言われている人らしい。作品としては、筋としてあまりに偶然だったり、唐突な進行と思われる場面が多く、人物の掘り下げも今一つの感が否めないが、ここから新しい試みが始まったということを考えなければならないのだろう。
一家がばらばらになってしまったのは、戦争が起こったためだった。本書を読むと、清国と日本、またロシアといった国々の角逐の中で開国・改革を進めざるを得なかった朝鮮の厳しい状況と、そこで暮らす朝鮮の人びとの苦難に思いを馳せざるを得ない。また、作者は文学者であると同時に政治にも従事していたという。その辺りのことは、訳者自身による解説の中でかなり詳しく説明されていて、とても参考になる。
古典新訳文庫というパッケージで刊行してもらえなければ、おそらく本書を読む機会はなかったと思う。感謝!