ウィリアム・ケント・クルーガーのレビュー一覧
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物語には決して破ってはならない掟があると思っている
ロシアの劇作家アントン・チェーホフはかつてこう言った
「物語に銃が登場したら、それは発砲されなければならない」
ならば私は古き賢人に倣ってこう言おう
「物語に黒い魔女が登場したら、それは倒されなければならない」
その物語がチャールズ・ディケンズとマーク・トウェインの魂を受け継いだ物語とあればなおのことである
力強い巨人、賢い魔法使い、心優しいお姫さま、そして音楽と物語を愛する小鬼の旅はあるべき結末に向かって川をくだる
”このやさしき大地”が教えてくれるのは、人はいつだって「ひとりじゃない」こと、そして隣にいる人を大切にすることで誰もが、未来をちょっとだけ良い方向に変える”魔法”が使えることだったのではないだろうか
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プロローグ
第二次世界大戦の勝利によって好景気に沸いた50年代のアメリカは、アメ車に代表されるデコラティブに装飾されたデザインやミッドセンチュリーモダンと言われるアールデコをアメリカ流にアレンジした贅の限りを尽くした建物や家具などを数多く輩出した正に栄光の時代である
そんな、時代にあっても片田舎のアメリカではまだまだ偏狭的なしきたりや風習、風土など、都会と比べると一昔前のアメリカの町というものが多く存在したのである
この物語は、そんな好景気に沸くアメリカとは縁もゆかりも無い、取り残された町が舞台となっている珠玉のミステリー小説である
本章
『真実の眠る川』
何故か哀愁と郷愁を誘う感涙の★5
autumn552akiさんの本棚から
すんばらしい紹介&レビューありがとうございます
あらすじを書くのはあまり好きではないが、大雑把に書けば、ミネソタ州のある町の地主が何者かによって殺されてしまうところから物語が始まる
状況証拠により容疑者は、地主のもとで働くインディアンの血を引く農夫であったが、黙秘したまま容疑者は、収監されるのだが、、、
あの容疑者は、何を護りたかったのか?
あの夫人は、何故嘘をついたのか?
あの男はどういう犯罪を犯していたのか?
全ての真相が解明された時、そのやるせなさに驚愕し、様々な“義”や“愛”によって号泣するのである
こういう、良翻訳本そして渾身のミステリー小説は、是非とも皆に手に取っていただきたい作品である
エピローグ
場所は、アメリカのミネソタ州
時は、1950年代
縁もゆかりも無いはずなのに、何故か、さもその年代や情景を過してきたような錯覚を起こさせる不思議な作品である
“The Catcher in the Rye”や“Stand by Me”に代表されるアメリカの古き良き冒険小説とも言えるのではないだろうか!?
国内本では決して経験、体験出来ない醍醐味を味わえた!
この真実の川にずっと身を委ねていたい!
最後にそう思った!!!
完
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ネタバレいやぁ、圧倒的な物語の紡ぎ手。
1958年、ミネソタの田舎町ジュウェル。
戦没将兵追悼記念の日にこの町を抱くアラバスター川の淵でウナギに食い荒らされた死体が発見される。
その男、ジミー・クインは町の農地を牛耳る者としてこれでもかと富と権力を振りかざして生きるような男で、反感を買う先も数多。死を心から偲ぶ者がいるような人物ではなかった。
そうは言ってもの中、この町の保安官ブロディは、前保安官のコニーに手助けを仰ぎながら事件の調査に向かうが。。。
不審死を伴う事件が起き、もちろんそれの解決を巡る動きが牽引する展開ではあるのだが、それはただの舞台でしかなく、登場人物達の織りなす人間関係だったり、思索、生き様を読む物語。
ひとりひとりの背景語りが入念で物語としての密度が高く、隙がない感じに大満足。
最初から最後まで間延びせず、かといってぐいぐいというわけでもない堅実な展開速度で心を掴んで離さない読み応えが没入感を生む。
この登場人物好きだなぁと思っていたら、裏の顔とか心の歪みを見せる部分が出てきて、でもそれが人間、この矛盾というか混沌というか清濁併せ呑まされる感情の渦巻き加減、その一端を担っているとも思える戦争の残す爪痕だったり、偏見を根拠とする差別の愚かさに何度うならさられたことか。
やっぱりこういう話が好きだ。
アン・クリーヴスとかケイト・モートン、セレステ・イング、国内作家だと宮部みゆきさんに通ずる物語性。
『ありふれた祈り』、『このやさしき大地』もとても良かった印象を持っており、自分的信頼できる作家の仲間入りを遂げた。
ちょっとハードボイルドに寄るコーク・オコナーシリーズはまだ未読が何冊かあるので近いうちに読み進めてみよう。 -
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1958年、ミネソタの田舎町を流れる川で地主の死体が発見された。
容疑者として元使用人ノアが捕まるが、ノアは多くを語らず彼の妻・キョウコも何かを隠している様子だった。
時代を感じるのは、保安官・ブロディが第二次世界大戦への従軍経験で被った心の傷であり、スコットの母で戦争未亡人・アンジーの秘められた過去やノアの妻・キョウコの生い立ちもまた深い傷を負っている。
二部構成になっていて、二部からはミステリ色が濃くなっていくので目が離せなかった。
真実に驚愕するのだが、登場人物の個性もあっていろんな面を見せてくれるなかで、弁護士・シャーロットの言動の的確さや凄さが際立っていたと思う。
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原題は『Ordinary Grace』Ordinaryはありふれたという意、そしてGraceは祈りと言うよりは神の恵み、恩寵と言った意で正しく訳すなら「ありふれた恩寵」といったところか
そして恩寵とは罪深い人間を救うために神がもたらす奇跡のことだ
それではこの悲しい物語のどこに神の恵みがあったのか?
少年が愛する人々の存在に気付くために、少年が自らの行いに責任を持つために、そして少年が大人になるために、その悲劇が必要だったと神が判断したのだとしたら、それは恵みではなく呪いだったのではないだろうか
そして悲劇から人生を取り戻した人々の変化を奇跡と呼ぶのなら、それは神の恵みではなく人の持つ強さなのだと思いたい -
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鬼★5 感涙… まるでこの街に住んでるみたいな感覚に陥るスモールタウン・ミステリー #真実の眠る川
■あらすじ
第二次大戦の影響が残る1958年、アメリカはミネソタ州の田舎町の大地主が殺害された。保安官を中心に捜査を進めていくと、容疑者として先住民の血をひく男があげられる。
街の住人達は彼を非難し、さらに日本人の妻の身にも危険が差し迫るほど。しかし容疑者の彼は事件について何も語らず、無罪を主張をすることもなかった…
■きっと読みたくなるレビュー
鬼★5 はい、早くも年間トップレベルのミステリー、控え目に言って必読です。
田舎町で事件が起き、地元保安官が捜査をしていくというスモールタウンもの。捜査を進める中、住民たちの関係性やその土地の背景なども描かれる群像劇、人間ドラマになっています。
ずーーーっと読んでいたくなる作品、まるでこの街に住んでるみたいな感覚になる。
ミネソタ州ジュウェルという小さな街で、アラバスター川という静かな川が流れている。みんなこの川に親しんでいて、いつも泳いだり、釣りをしているという古き良き田舎町。
住民たちも皆な家族のような関係性で距離感が近い。煩わしさはあるものの、困ったことや悲しいことがあれば、いつでも声をかけてくれる人たちがいる… いいですよね~、なんか読んでると子どもの頃を思い出しちゃうんです。
ただもちろん悪い部分もある。まだ1950年代、まだ先住民子孫の記憶も強く、第二次大戦も終わって間もないという時期。偏見や差別というのは当然あり、小さな街だからこそ噂が流れるのも速い。さらに誹謗中傷だけでとどまらず、直接的な行動にでることも多い。
この事件の容疑者は先住民子孫、その妻は敗戦国の日本人。肩身の狭い環境に置かれた二人の行動や意識が一番の謎であり、読みどころでもあるのです。
そしてこの夫婦が… めっちゃ素敵なんよ。奥さんキョウコ・ブルーストーンには痺れたなー。まさしく日本人らしい生き様、もうね日本人として誇りに思うよ。
また本作は他のキャラクターも生き生きとして描かれている。
・保安官ブロディ:これぞ保安官って人、頼れるナイスガイ。しかし彼も人間なんですよね、弱い部分があってさー。一緒にお酒を酌み交わしたくなるね。
・弁護士チャーリー:女性弁護士、1950年代ですからね、それだけで凄い。意志の強い力強いセリフを見てるだけで、涙が出てくるのよ。正しいことをするぞって姿勢が悶絶級にカッコイイ!
・少年たちスコットとデル:このふたりも目の前に浮かぶんすよ、やんちゃなガキのデルと、彼に抵抗できないスコット少年。まさしく少年時代を切り取ったようなシーンばかりで、自分も同じようなことがあったなー、色んなことを学んで成長してきたなーって思えて、しみじみと胸に刺さる。
他にも保安官の仲間たち、被害者家族、カフェの店員、街の住民など、たくさんの人が出てきます。
全員の顔が目に浮かぶくらい、丁寧に綿密に描かれているんです。ほんと読んでると、みんな知り合いや友達になったような感じがしてくる。だからこそ、この物語をずっと読んでたいという気にもなるし、この街、この世界に行ってみたくなるんですよねー
そして本作で最も深く描かれているのは「家族」
被害者家族だけでなく、ほぼ全員の夫婦と親子の関係が綴られているんすよね。それぞれの家族愛をかたち作っているんだけど、そこに避けられない出来事がおこると… やっぱり歪みが生じてしまうんすよね。もうちょっと何とかならんかったのかと… 残念でならない。
物語が終盤になると、事件の背景が浮き彫りになってくる。そしてラストにかけては勢いを増していく。事件の真相を知り、それぞれの思惑が理解できた時、胸に押し寄せる人間のぬくもりに潰されそうになりました。
はー… みんなもっと幸せになってもいいでしょ、神様! って思わずにはいられない。
そして海外の作品は勉強になることが多いですよね。1862年ダコタ戦争による先住民の処刑などは知りませんでした、またアメリカ史を学びました。
今年最初のズバリおすすめ作品です! ぜひ時間を取って、じっくりと読んでみて下さい。
■ぜっさん推しポイント
これまでたくさんの物語を読んできて、「エピローグ」ってのも何度も読んできましたが…
本作の「エピローグ」はエグイよ、マジで泣きました。
そして少し死ぬのが怖くなくなるんですよね。人生で大切なものは何なのかを教えてもらえた気がする。いやー、いい話だった。 -
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ネタバレ2025年間46冊目は、ウィリアム・ケント・クルーガーの「真実の眠る川」です。「怪物の森〜」に引き続いてミネソタが舞台ですが、こちらは、1958年のミネソタになります。ブラックアース郡ジュウェル、アラバスター川と共に生きる人達の物語です。
第二次世界大戦からベトナム戦争前までのアメリカというと、繁栄、栄光の時代というイメージでしたが、別の一面も有る事を教えてくれる小説でした。
第二次世界大戦や朝鮮戦争に従軍した兵士の多くが、精神的・肉体的に大きな傷を抱えて故郷に戻った事、それに対して留守を守った女性達が総じて逞しく描かれています。男性は、石ころのように砕けてしまうと描写されていますが、全くその通りだと思います。女性は、靱やかで強い。冒頭、戦没将兵追悼記念日(メモリアルデー)の場面から始まるのも象徴的だと思います。
南ミネソタ随一の地主と言われるジミー・クインが、アラバスター川の中で死体で発見されます。ショットガンで撃たれており、しかも裸のままの状態でした。ジミーは、善人ではなく、多くの人から嫌われていました。
保安官のブロディ・ダーンが現場に向かいますが、現場に誰もいない時を見計らって、証拠となりうる指紋を拭き取り、証拠品を川に投げ入れてしまいます。法執行機関の人間として、決して許される行動では有りませんが、後で、その理由と心情が語られます。
町の人間は、ジミーの農場の元使用人で有るノア・ブルーストーンが犯人で有るとブロディに焚き付けます。ノアは、先住民のスー族であり、妻は日本人のキョウコで有るとの理由からです。明らかに偏見からですが、ノアの農場の敷地からジミーの血痕の付いた防水布が見つかり、有力な容疑者として逮捕されてしまいます。しかし、ノアは無実を主張しようとしません。このままでは、ノアに重い判決が出るのは明らかです。ブロディは、ノアが誰かを庇っていると推測しますが、喋ろうとしません。果たして、誰を庇っているのか?ミステリーとしても申し分ないと思います。ポイントは、ジミーの複雑な家族関係です。
ジミー・クインの殺人事件が物語の縦軸だとすると、ジュウェルの町の人達の人生が、横軸となっています。
個人的には、オールタイムベスト級だと思います。
☆5.0今年の最後に素晴らしい物を読みました。 -
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ネタバレ1961年夏。ニューブレーメンに住んでいた「わたし」ことフランク・ドラムの級友が、構脚橋の線路で列車にはねられて死んだ。それを皮切りに、現場近くで亡くなっていた身元不明の男、フランクの姉アリエル、アリエルの友人カール・ブラント…と多くの人の死が続いていくが、特にアリエルの殺害事件をめぐっての家族や周囲の人々の動きが本作の中心になっている。
フランクの父ネイサンは牧師だ。もとは弁護士を目指していたが、戦争で人を殺す経験をして牧師になった。フランクの母ルースはそれを不満に思っている。決して怒らず、情熱的に話すわけではないが静かに説教をして人々に神の存在を宣べ伝える姿は、神のように絶対的に正しい姿に見える。対して街の人々は粗野で、彼が戦場で臆病だったと揶揄したり、フランクの弟ジェイクが吃音なのをからかったりしている。一番印象に残ったのは、アリエルの葬儀の後の食事の席で、食前の祈りを唱えようとした父に、「ありふれた祈りをして」と母が頼むシーン。いつでも卒なく正しい道へ人々を導くネイサンに対し、この時母は突然娘を奪われた悲しみと怒りで神を拒否する心情になっているから、そんな夫の正しさが我慢できなかったのだと思う。それに対して、人前では3語とどもらずに話せたことのないジェイクが名乗り出て、代わりに本当に定型句のような、食前のありふれた祈りを、どもらずに捧げたシーンが本当に良かった。それは神からの奇蹟だし恵みだと思う。ありふれた祈り、原題はOrdinary Graceだが、そのgraceは祈りとも恵みとも訳せる。ラザロの復活のような劇的な奇蹟はなくとも、どもらなくなったとか、それで母に笑顔が戻ったとか、そうしたありふれた些細な出来事が神からの恵みであって、それに気づくこともまた恵みだと思う。
インディアン、吃音、障がい者、同性愛者など、弱者を描いた物語でもあった。
父は戦争で人を殺したことを、フランクは姉を殺したかもしれないインディアンのウォレンを見逃したことを、ジェイクは人から揶揄われる自らの吃音を、それぞれ十字架として背負いながら生きている。遠くへ行っても自分からは逃れられないから自殺したくなる気持ちは分かるとジェイクは言うけど、そうではなくて自分の重荷を口にして誰かと担いあったり許されたりしながら生きていく人間の姿がとてもよかった。最終的にウォレンは犯人ではなかったし、フランクが見逃したからウォレンは生き延びることができたのも、そもそもそうでなければ生きられなかったということ自体先住民差別が背景にあるけれども、それをフランクが後に知って許された気持ちになることも含めて恵みだと思う。 -
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1932年、ミネソタ。ネイティヴアメリカンの子供たちが集団生活を送るリンカーン教護院。施設の中で、唯一の白人である孤児のオディとアルバート兄弟は、生意気な態度で日頃から院長に目を付けられていた。ある日、横暴な管理人をふとしたことから殺してしまったオディは、兄のアルバート、親友でスー族のモーズ、竜巻で母親を失い孤児になったばかりの幼いエミーと共に、教護院から逃げることを余儀なくされてしまう。オディとアルバートのおばが住んでいるというセントポールに行くため、四人はカヌーで川を下り、一路ミシシッピ川を目指す。旅の途中、出会いと別れを繰り返した四人が知った秘密とは―?
著者の作品を読むのは、「ありふれた祈り」以来。少年たちの成長物語として、強くお勧め。 -
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1932年夏、ミネソタ
物語の舞台は大恐慌時代のアメリカです
主人公は12歳の少年、オディ。
ネイティヴアメリカンの子供たちが集団生活を送るリンカーン教護院で暮らしていた。
施設の中で唯一の白人である孤児のオディと兄のアルバートは、ある事件から施設に居られなくなり、逃亡することになる。
親友でスー族のモーズと、竜巻で母親を失ったばかりの幼いエミーと共に、兄弟の叔母がいるセントルイスへ向かう。
4人はカヌーで川を下り、ミシシッピ川を目指すのだが…
ひと夏の冒険物語なんて甘い話じゃない
これは本気で命懸けなんだ
私はこの本を読み進めていくうちに、アメリカの歴史的背景についての様々を知ることになる。
彼らが受けてきた虐待、ネイティヴアメリカンに対する人種差別、大恐慌という困難で貧しい時代等…
知れば知るほど苦しかったが、旅の途中で出会う人々の優しさ、交流を通して成長していく彼らの逞しさに胸がいっぱいになる。
彼らが出会った人々は、自身も困難な生活をしているにも関わらず、手を差し伸べ、導き、家族の大切さを教えてくれた。
どの登場人物も魅力的で、まるで私の目の前に存在するかのように生き生きと描かれているのが印象的。
これはおよそ90年も前のアメリカの物語だが、現代の日本に住む私達にとっても決して遠い国の話ではないと思った。
*大切な場面で、オディのハーモニカが出てくるのだけど、それらの曲をYouTubeで聴いてみました
より物語に入り込めるのでオススメです* -
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ネタバレこれは超絶好きなやつ。
アメリカ中西部を舞台とする、悲運にまみれた少年少女達が旅路の中で過酷な現実をくぐり抜けつつ逞しく、そして眩しいほど真っ当に成長してゆく物語。
いわゆるロードノベル。
似たような雰囲気の作品でぱっと思いつくのは『東の果て、夜へ』なのだけれど、あれは前半がいまいちだったのに対して、本作はもう最初から最後まで胸を掴まれっぱなし。
いじらしい展開、残酷なまでの運命の悲劇という点では『われら闇より天を見る』の色合いも持っているが、あちらよりも幾分穏やかな心持ちで少年少女の顛末を見守ることができる。
時は1932年ミネソタ。
幼くして父母を失った兄弟(兄アルバートと弟オディ)は当時先住民達の浄化政策としてアメリカ各地に設立された寄宿施設のひとつであるリンカーン救護院に身を寄せることになる。
行儀よく生活するアルバートをよそに、オディはイタズラや懲りない言動で心無い悪徳職員に目をつけられ、余計な難癖を自ら呼び寄せるような日々を過ごす。
徐々にではあるが悪化の一途を辿る生活の中、一縷の光が見えたと思いきや、絶望的な嵐に見舞われ大切な人とつかの間の希望を失う。
さらにはふとしたはずみで悪徳職員を殺めてしまう。
表面的にはいい子ぶっているが誰よりも弟思いで機械にめっぽう強い兄アルバート、親友で先住民をルーツとするモーズ、嵐で母を失った不思議な力を持つ妹的存在のエミーと共に、セントルイスへと続くギレアド川を下り逃亡する生活が始まるさすらいの4人。
もうとにかく行く先々で出会う困難、過ち、悟り、裏切り、真実との対面、ときに甘酸っぱい恋の展開が秀逸。
彼らの境遇を寓意で包み込み、美しく核心的な”おはなし”に仕立て上げるオディの語り、オディが奏でるハーモニカから溢れる音楽が物語の魅力をさらに引き立てている。
『名探偵のいけにえ』で感じた、史実をベースとするフィクションに対するエクスキューズの違和感についても、「私が語った話のうち、ある部分は真実であり、あとは…そう、薔薇の茂みに咲いた花と呼んでおこう。」なんて巧みな表現をしてくれており、何もかも満足。
この物語を執筆するきっかけとなった『ありふれた祈り』もおすすめ。 -
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1932年、ネイティヴアメリカンの子どもたちが集団生活を送るリンカーン教護院の施設から逃げたオディと兄のアルバートにモーズとエミーの4人。
彼らが、オディとアルバートのおばさんが住むセントポールを目指して、カヌーで川を下り旅に出る。
劣悪で過酷な労働を強いられた苦痛から逃れ、新しい人生へと希望を持っていた旅であったが、行く先々でもさまざまな試練があった。
冒険ということばよりももっと深くて重くてそして、貴重で価値がある体験のようだ。
いろんな家族や大人たちと出会うたびに彼らにとっては敵なのか見方なのかを探りながら、助けたり援助してもらったり、そして導いてもらいながら成長していく姿は感動でしかない。
終盤からは予想外の展開になり、読む速度も増す。4人の絆の深さに凄さを感じながら時には対立し、離別するのかと思ったがラストは良かった。
時折挟むオディの物語やハーモニカのメロディが情緒を増して人生の旅という感じがした。
どんなに厳しい環境であっても諦めずに進んで行くという力強さやお互いの思いやりなどの優しさ、信頼関係などたくさんのことを気づかされた。
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素敵★5 幼く貧しい少年少女たちの逃避行… 人生と家族について学び多き物語 #このやさしき大地
■あらすじ
1932年のアメリカの小さな街。ある教護院でネイティブアメリカンや孤児たちが、貧しくも辛い労働を強いられる暮らしをしていた。主人公の兄弟と友人たちは、問題を起こしてしまい教護院から逃げることを余儀なくされてしまう。
彼らは自分たちの家族を見つけるため、密かにカヌーで川を下っていく…
■きっと読みたくなるレビュー
めっちゃいい話★5
さすがはアメリカ産のミステリー、物語として完成度がバチクソ高い。彼らの人生をずっと傍から見ていたくなるような素敵な小説でした。
本作の良いところをあげるとキリがないのですが、もっとも私の心を打ったのは家族と仲間の描き方。主人公の少年少女たちはもちろん、この物語に出てくるすべての人たちが大事にしている価値観。
こんな不遇の時代、辛く貧しい環境だからこそ、大切な人と寄り添って、それこそ必死に生きていく。いま我々が生きている豊かで個人至上主義の時代では忘れがちな、とても重要なことを教えてくれます。
そして主人公である少年少女たちへの想い…
彼らを応援したり、生活を支えるなど何かをしてあげるというよりも、私はただ手を握ってあげたくなりました。
〇児童虐待
私がこれを許せない理由は二つ。
・暴力と恐怖によって子どもたちの主義主張を奪い、未来が閉ざされてしまうから
・力の強い者が全て正しいという理屈を子どもたちが学んでしまうから
古の時代も、現代も、これから未来も、絶対に許したくない。
〇人種差別
アメリカのリアルな歴史を学ばせていただきました。
何処の国でもある社会問題ですが、偏った価値観に縛られずに、話し合い助け合うことが不可欠です。
〇経済格差
いつの世にも存在する、その時代や環境に馴染まない人たち。
特に現代では顕著な、自分だけが得をすれば良いという考え方…手を取り合って生きていけないものなんでしょうか。
〇豊かなキャラクター
登場人物の全員が個性をもって生き生きと描かれていてスゴイ。
強みや弱み、後悔している過去、恨み… ひとりひとりの人生をまるっと感じることができました。
〇仲間との関係性
それぞれが大事にしている価値観や信条。仲間を大切に思いながらも少しずつすれ違っていく。子どもたちが新しい人との出会いや環境変化によって、どれほど影響をあたえ、成長に寄与するのか。
微妙な心の揺れが胸を打ち、ただみんな幸せになって欲しいと願いました。
■推しポイント
人は何のために生きているんでしょうか。
本作の主人公である彼らは、川を下りながら、街を転々とし、様々な人々と出会い、別れながら生き抜いていく。そこには楽しいことばかりでなく、むしろ辛いことや悲しいことばかりで、涙を流すことも多い。
しかし人が苦労しながら暮らしているこの大地は、きっと優しさに包まれている。何故なら、苦労している人のとなりにも、また人がいるから。
やっぱり私は、人の笑顔を見るために生きていたいな。 -
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二段組はとにかくボリューミー。
オディたち四人の成長物語だけど、おとなに振り回されたかわいそうな子どもたちのはなしとも思った。
結局、オディはどの場面がいちばん幸せだったんだろう。
過去を回想したはなしなわけだけど、みんなで黒い魔女から逃げてカヌーにのって川を下った冒険の日々は忘れがたい思い出として、孫たちに語り続けていたんだから、やはりアルバート、モーズ、エミーの四人でいたときが辛くても幸せだったんだろうと思った。
黒い魔女がオディの本当の母親を恨んでいたから復讐のためにそばに置いていたり、本当に腹が立つこともたくさんあるけど、気に入ったのは多種多様な人たちが出てくるところ。
ユダヤ人コミュニティーのはなし、インディアンのつながり、宗教のこと、どれもアメリカぽいなーと面白く読めたところは良かった。 -
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読書備忘録696号。
★★★★★。
翻訳される海外文学作品は、評価が高いから翻訳されている訳であり、やはりアタリが多い。
アメリカの中北部州ミネソタ州を舞台に少年が大人になっていく様を描いた秀作。
ミネソタ州はミシシッピ川があり、トム・ソーヤやハックルベリー・フィンが大冒険を繰り広げたり、大草原の小さな家でインガルス一家が住むウォールナットグローブがある。笑
すなわち、豊かな自然に恵まれた牧歌的な風景がすごく似合う舞台。
そんなミネソタ州のミネソタ・リバーのほとりの町ニューブレーメンで13歳の少年フランク・ドラムが初めて人の死、しかも最愛の家族の死に直面する残酷なひと夏の物語。そしてミステリでもある。
その年の夏、死の連鎖は知り合いの少年ボビー・コールがミネソタ・リバーに掛かるユニオンパシフィック鉄道の構脚橋で列車に轢かれるところから始まる。
そして、その事故死は、見知らぬ旅人の自然死を経て、最愛の姉アリエルの殺人事件に繋がり、連鎖して自殺と広がっていく。
物語は、主人公のフランクが当時の1961年夏を40年後の視点から回想する語り形式で進む。
まだ第二次世界大戦の傷跡が人々の心に残っている時代。戦争から戻り牧師となった父、牧師となったことに不満を持つ母、吃音が激しく人前では一切喋らないが聡明な弟ジェイク、そして音楽の才能がありジュリアード音楽院に進学予定だった最愛の姉アリエル。
教会で、父の手足となり働く戦友のガス、巡査のドイル、母の昔の恋人エミールとその家族たち。
ニューブレーメンという小さな町に暮らす人々がフランクの目を通して、生き生きと、日々懸命に生きる。
そして物語の大きな柱は中盤に突如訪れる。最愛の姉アリエルが家に帰らない。懸命に捜索する家族。そしてフランクはミネソタリバーに浮かぶアリエルの発見者となる。事故なのか事件なのか。悲嘆に暮れる家族の元に、検死の結果として殺されたことが伝えられる。
誰が何の目的でアリエルを殺したのか。町のごろつきや差別に苦しむインディアンに容疑者として浮かび上がる。しかし、フランクがたどり着いた真相は驚くべきものであった・・・。
少年であるが故、行動の不自由さ、それを巧みに潜り抜けて真相に近づいていくストーリーは、間違いなく珠玉のミステリー小説である。
牧歌的な風景の中で起きた死の連鎖、そして少年が必死で背伸びして青年になっていく通過儀礼的残酷なひと夏の物語には引き込まれました。
この作者の作品「このやさしき大地」も読む予定。そのうちに。舞台は当然ミネソタでしょう。笑