ウィリアム・ケント・クルーガーのレビュー一覧
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Posted by ブクログ
ネタバレ・あらすじ
1932年大恐慌時代のミネソタ州が舞台。
孤児であるアルバートとオディ(オデュッセウス)の兄弟はリンカーン救護院というネイティブインディアンの子供たちが集団生活を送る施設で暮らしていた。
横暴な施設長や管理人から支配され、鞭を振るわれる日々。
そんな中オディは横暴な管理人を殺してしまい、兄のアルバート、スー族のモーズ、孤児になったばかりのエミーとカヌーにのってミシシッピ川を下り兄弟のおばがいるセントポールを目指す旅に出る。
・感想
「ありふれた祈り」の姉妹作らしく「祈り、信じ、ゆるすことの大切さ」という明確なテーマがあった。
川を下る中で様々な人々(家族)と関わりあい12歳 -
Posted by ブクログ
“ひとりじゃないから”
“ぼく”ことオデイら4人は、孤児院から脱走してミシシッピ川をカヌーで下りセントルイスへ旅をする。
その道中でさまざまな出来事と遭遇し、やがて4人はそれぞれの道を探し始める。
少年たちの成長を描くロードムービーとして、王道を進む物語だが、さすが「ありふれた祈り」の作者で読み進めることに飽きさせない。
ネイティブ・アメリカンの処遇や世界恐慌がもたらした農民たちの貧困と流浪など、20世紀初頭の出来事が挿入されており、読後感は濃厚。
ただ、同時代を描いたスタインベック『怒りの葡萄』と比べてしまい、力強さに物足りなさを感じた。
でも、面白かったです。 -
Posted by ブクログ
1961年、ミネソタに住む13歳のフランクと弟ジェイクとその家族の物語。
その街に住むひとりの少年の死から物語は始まるものの、ミステリーというより、
少年の成長や人間ドラマにポイントが置かれていて、じっくりとその世界を楽しめた。
やんちゃでちょっと短絡的、だけど兄弟思いの兄と、
吃音というハンデをかかえつつ、慎重で思慮深い弟の対比が良かった。
最初は冒険を嫌い、前に出ない弟にヤキモキハラハラし、中盤からは「お兄ちゃんもいいとこあるやん!」と兄の印象も変化し、二人のことが大好きになった。
ラスト付近で起こる奇跡にも胸が熱くなった。
牧師であるこの兄弟の父親にも好感が持てた。
信仰心を持たない -
Posted by ブクログ
悲しい物語
でもミネソタ州の田舎町の風景と人々の情感がたっぷりで、荘厳な家族愛の映画を見終わったような、満足感と脱力感を感じる物語。
1961年夏
牧師の父と美しい母と姉に囲まれ、吃音障害を持つ弟と13歳の主人公フランクが経験した特別なこの夏の出来事。
自身の心の底に住み着いた戦争の後遺症ゆえに、ひたすら“神”の道を進む父の言葉は、困難にあった町の人びとの心にいつも寄り添っていた。
自分の家族に起こった困難のとき、母はそんな夫に「せめて今日だけは“ありふれた祈り”にして……」とつぶやく。
キリスト教の赦しや救済について、疑い迷い罵るという感情が普通にあること、それでいて、それらをすべて -
Posted by ブクログ
★3.5
少年達のひと夏の思い出は、キングの『スタンド・バイ・ミー』や『IT』を彷彿とさせ、取り返しのつかない過ちを回顧する語りは、クックの『記憶』シリーズを思い起こさせる。ただクック作品とは違い、ミステリやサスペンス色はかなり薄く、事件は起きても爽やかさ(と言うには死が身近すぎるが)が前面に出ている印象だ。
主人公兄弟の忘れ得ぬ夏は一人の少年の事故死から始まり、あまりにも痛ましい悲劇を経て否応なく子供達を大人へと成長させる。子供らしい好奇心がひとつの悲劇を生むきっかけを作ってしまうくだりは読んでいて痛ましいが、この後に迎える家族の再生と奇跡はその悲劇ゆえに心に響くものがある。
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Posted by ブクログ
他の方のご指摘の様に、スティーブン・キングの
「スタンド・バイ・ミー」っぽい事は否めないかも。
ですが、逆を云えばああいうテイストが好きならば
十二分に楽しめる事間違いなしです。
何より、行間から匂い立つような夏の強い日差し、
カラカラに乾いた砂や土、ひんやりとした石切り場、
咽るような草の香りに、汗。
著者の表現力の素晴らしい事!
死や悲しみ(差別的な事も多々)を根底に置きながら、
美しくまとめ上げ、そしてこのさわやかな読後感よ。
おお、神よ(笑)
あと、地味に食べ物の描写が好きでした。
ガスがドラム家の台所で作るポテトとチーズの料理が
美味しそうです食べたいです。
解説を読んで知った -
Posted by ブクログ
コーク・オコナーのシリーズは未読のまま。ウィリアム・ケント・クルーガーの作品を初めて読む。
あの夏のすべての死は、ひとりの子供の死ではじまった――。1961年、ミネソタ州の田舎町で穏やかな牧師の父と芸術家肌の母、音楽の才能がある姉、聡明な弟とともに暮らす13歳の少年フランク。だが、ごく平凡だった日々は、思いがけない悲劇によって一転する。家族それぞれが打ちのめされもがくうちに、フランクはそれまで知らずにいた秘密や後悔に満ちた大人の世界を垣間見るが……。少年の人生を変えた忘れがたいひと夏を描く、切なさと苦さに満ちた傑作ミステリ。アメリカ探偵作家クラブ賞最優秀長篇賞受賞作!
教会付属の幼稚園に