あらすじ
「ミステリが読みたい!」第1位に選ばれた『ありふれた祈り』著者の傑作ミステリ
50年代、アメリカの田舎町。地主の死体が川中で発見され、第二次大戦帰還兵の保安官ブロディの捜査で、日本人の妻を持つノアが容疑者として浮かぶ。弁護士チャーリーは住人たちの過去を調べるが……。エドガー賞ほか四冠に輝いた『ありふれた祈り』著者の新作
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Posted by ブクログ
2025年間46冊目は、ウィリアム・ケント・クルーガーの「真実の眠る川」です。「怪物の森〜」に引き続いてミネソタが舞台ですが、こちらは、1958年のミネソタになります。ブラックアース郡ジュウェル、アラバスター川と共に生きる人達の物語です。
第二次世界大戦からベトナム戦争前までのアメリカというと、繁栄、栄光の時代というイメージでしたが、別の一面も有る事を教えてくれる小説でした。
第二次世界大戦や朝鮮戦争に従軍した兵士の多くが、精神的・肉体的に大きな傷を抱えて故郷に戻った事、それに対して留守を守った女性達が総じて逞しく描かれています。男性は、石ころのように砕けてしまうと描写されていますが、全くその通りだと思います。女性は、靱やかで強い。冒頭、戦没将兵追悼記念日(メモリアルデー)の場面から始まるのも象徴的だと思います。
南ミネソタ随一の地主と言われるジミー・クインが、アラバスター川の中で死体で発見されます。ショットガンで撃たれており、しかも裸のままの状態でした。ジミーは、善人ではなく、多くの人から嫌われていました。
保安官のブロディ・ダーンが現場に向かいますが、現場に誰もいない時を見計らって、証拠となりうる指紋を拭き取り、証拠品を川に投げ入れてしまいます。法執行機関の人間として、決して許される行動では有りませんが、後で、その理由と心情が語られます。
町の人間は、ジミーの農場の元使用人で有るノア・ブルーストーンが犯人で有るとブロディに焚き付けます。ノアは、先住民のスー族であり、妻は日本人のキョウコで有るとの理由からです。明らかに偏見からですが、ノアの農場の敷地からジミーの血痕の付いた防水布が見つかり、有力な容疑者として逮捕されてしまいます。しかし、ノアは無実を主張しようとしません。このままでは、ノアに重い判決が出るのは明らかです。ブロディは、ノアが誰かを庇っていると推測しますが、喋ろうとしません。果たして、誰を庇っているのか?ミステリーとしても申し分ないと思います。ポイントは、ジミーの複雑な家族関係です。
ジミー・クインの殺人事件が物語の縦軸だとすると、ジュウェルの町の人達の人生が、横軸となっています。
個人的には、オールタイムベスト級だと思います。
☆5.0今年の最後に素晴らしい物を読みました。