丸山真男のレビュー一覧
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“右にのべたような状況、すなわち一方で、「限界」の意識を知らぬ制度の物神化と、他方で規範意識にまで自己を高めぬ「自然状態」(実感)への密着は、日本の近代化が進行するにしたがって官僚的思考様式と庶民(市民と区別された意味での)的もしくはローファー的(有島武郎の用語による)思考様式とのほとんど架橋しえない対立としてあらわれ、それが「組織と人間」の日本的なパターンをかたちづくっている。(p.52)”
言わずと知れた、岩波新書を代表する名著である。書名の通り、日本の思想の特質とは何かについて述べており、現在巷間に流布している「日本論」の出典の一つといって良いだろう。2、3年前に夏の古本市で手に入れ -
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ニーチェの反語は正を積極的に肯定するキリスト教社会において、現実と激しい緊張感を生むが、日本のように生活の中に無常感がある社会では、むしろテーゼとして受け入れられてしまう。
本居宣長は儒学の為政者に都合の良い欺瞞性を看過し、儒仏以前の固有信仰を復元しようとした。しかしこの国の神道は時代時代の有力な宗教を習合して教義内容を埋めてきた、いわばのっぺらぼうである。
戦前の国体という観念もまた無限定的な要素を包容する観念である。この無限定性は巨大な無責任への転落の可能性を内包している。
維新後の急速な近代化を支えたイデオロギーは家族国家観である。決断主体の明確化や利害の露わな対立を回避する情緒的結合態 -
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岩波新書 丸山真男 「 日本の思想 」
新書1冊読むのに、事前に副読本を2冊読むまわり道をしたが、その価値はあった
近代の批判というより、日本の近代の流入の仕方を批判している。近代日本の精神の雑居と雑種の違いは なるほどと思う。全体を理解するキーワードは「自覚」と解釈した
著者の全体を通したメッセージは、新思想が無秩序に埋積された「雑居」を、内面的に交わり新たな個性となる「雑種」まで高めるには、著者ら研究者の分野を超えた横断的な対話を通じた伝統の自覚、日本精神の体系化が必要である、と捉えた
★日本の思想
日本の思想の構成
・無構造の「伝統」
・國體における臣民の無限責任
・天 -
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丸山真男 「 文明論之概略 を読む 」 ヨーロッパと日本の文明論に はじまり、日本独立論で終わる下巻。
明治維新直後の過渡期にある日本が進むべきは、人民と政府による国家体制と、外国から自国の主権を守ることであり、そのために 文明(人民の精神の発達)を進める必要があるとする論調
文明を進める際に障害となっているのは 権力の偏重。あらゆる社会関係に 権力の偏重が組み込まれているとしている
福沢諭吉 は比喩が 巧い。「一身にして二生を経るが如く、一人にして両身あるが如し」は 過渡期の日本の姿をうまく表現している
福沢諭吉の目線は面白い〜いろいろな自由が牽制しあって、どの自由も絶対 -
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丸山真男「 文明論之概略 を読む 」
中巻は 命題「文明の進歩は 智徳の進歩である」に基づき 智徳論を展開
西洋の近代文明をどう受け入れるべきか を説いた啓蒙的な国家論。明治維新により 混乱した社会を落ち着かせ、方向づけようとしている。
学者に行動を促した 福沢諭吉 のメッセージは印象に残る
*学者の使命は 衆論を変革することである
*異端であることを恐れるな〜昨日の異端は今日の正統である
*少数者の意見が勢いを増して衆論を形成し、衆論になれば 天下の勢いとなる(幕府すら倒せる)
智力の組み合わせに関する論考は 現代にも通ずる
*人の議論は集まりて趣を変ずることあり〜智力の組み -
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丸山真男
「 文明論之概略 を読む 」上巻
明治維新直後の旧体制派と近代進歩派の不毛な議論を避けるため、議論の目的、文明の定義や進歩の意味など 福沢諭吉の根本思想を捉えながら、交通整理している。
福沢諭吉の根本思想
*人事の進歩は多事争論の間に在り〜人間交際や異論への寛容であるべき
*議論の本位は 文明に向かって進むべき〜議論の極端主義と損得判断を避け、表裏一体の両面性を捉える
*歴史の無限の彼方に「文明の極致」という完成状態を予想している〜啓蒙の進歩の思想を受容
*対立や闘争を歴史的進歩の契機とみている〜競争や闘争により人間は向上する
文明の定義
*文明は 人の身を安楽にして、心を高 -
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丸山眞男(1914~1996年)氏は、日本政治思想史を専門とする政治学者、思想史家。その学問は「丸山政治学」、「丸山思想史学」と呼ばれ、戦後日本を代表する進歩的知識人の一人。
本書は、1961年に出版され、累計100万部を超えるロング・ベストセラー。私は50代半ばであるが、高校時代(1980年前後)に、本書は小林秀雄の『考えるヒント』と並ぶ必読書と言われ、教科書や試験問題でもお目にかかったような気がする。
本書は、「日本の思想」(1957年/岩波講座『現代思想』に発表)、「近代日本の思想と文学」(1959年/岩波講座『日本文学史』に発表)の2本の論文と、「思想のあり方について」(1957年/『 -
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【「文明論之概略」を読む 上】
丸山真男著、岩波書店、1986年
早稲田大学の5年生だった時(間違いではない)に、北大でも教鞭を取られていた坪井善明教授の大学院のゼミに参加させてもらっていた。
YOSAKOIソーラン祭りの実行委員長を務め終えて、いい気になって早稲田に帰って来た時に、札幌でお世話になっていた坪井先生に挨拶に行ったら、「荒井は、いろいろと動いて活躍していい気になっていると思うが、これから世界に出て行けば、君くらいのことをしているのなんて大したことがないんだ。世界では皆、学生時代には猛勉強してマスターもドクターも持っている人たちが、活躍している。克己心をもってちゃんと勉強しろ。 -
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ネタバレ前半の二編は論文調で後半の二編は講演調であり、わかりづらい前半を我慢して読み進めると、後半で一息に面白くなった印象がある。日本人の特殊な精神構造を分析した本で、簡単に要約すれば、以下のようになるに違いない。著者のいう「ささら型(共通の伝統から専門に細分化する形)」として思想が発展してきた西欧に比べ、日本は「蛸壺型(没交渉なものが乱立する形)」と言える。というのも、日本が開国し、西欧に追いつくために盛んに西欧の思想や知識を吸収した際に、日本には西欧にあるような確固とした精神的支柱とも呼べるような思想なりが欠如していた。古来からの儒教的思想や仏教、神道的な思想は西欧のもつキリスト教を背後にする思想
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<メモ>
・・・政治家や実業家などの分野でも、
明治の元勲と言われる人は圧倒的に天保生まれが多い。
西郷だけがちょっと年長で文政10年生まれですが、
大久保、木戸をはじめ、山県有朋、大隈重信、伊藤博文
井上馨、松方正義、黒田清隆などもみな天保生まれです。
福沢は、これら天保の老人世代に属している。
金甌無欠とは、開闢以来、国体を全うして外人に政権を奪はれたる
ことなきの一事に在るのみ。故に国体は国の本なり。
政統も血縁も之に従て盛衰を共にするものと云はざるを得ず。
・・・まず「惑溺」一般の説明をします。あるものを使う本来の目的
をどっかへ行ってしまって、そのものの具体的な働きにもかかわら -
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ネタバレ[ 内容 ]
『文明論之概略』は、福沢諭吉の気力と思索力がもっとも充実した時期に書かれた最高傑作の一つであり、時代をこえて今日なお、その思想的衝撃力を失わない。
敢えて「福沢惚れ」を自認する著者が、現代の状況を見きわめつつ、あらためてこの書のメッセージを丹念に読みとり、今に語りつぐ。
読書会での講義をもとにした書下し。
[ 目次 ]
序 古典からどう学ぶか-開講の辞にかえて
第一講 幕末維新の知識人-福沢の世代
第二講 何のために論ずるのか-第一章「議論の本位を定る事」
第三講 西洋文明の進歩とは何か-第二章「西洋の文明を目的とする事」一
第四講 自由は多事争論の間に生ず-第二章「西洋の文明