あらすじ
福沢諭吉の最高の思想的作品「文明論之概略」を、丸山真男氏とともに読む。この中巻では、第四章から第七章までをあつかい、智徳の社会的な在り方がテーマとなる。丸山氏の講義は、福沢がここで主として活用したバックルの文明史を丹念に参照しながら、歴史と社会の認識論を中心に進められる。政教一致のイデオロギーや徳育中心主義の盲点を明らかにすることを通して、福沢の時代認識と問題意識とが鮮烈に浮かび上がってくる。
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Posted by ブクログ
【「文明論之概略」を読む 中】
丸山真男著、岩波書店、1986年
福沢諭吉の「文明論之概略」を丸山真男と共に読む岩波新書の第2巻。
「文明は人の智徳の進歩なり」から始まる本巻では、儒教的精神の「徳」よりも、近代的精神の「智」こそが大切なのだ、と論じている。
中でも注目したいのは、丸山が福沢の述べる「智恵」について補足している224頁ではないだろうか。
知の建築上の構造として、下記の4階層の三角形で説明している。
Information (情報):真偽がイエス・ノーで答えられるもの
I
Knowledge(知識):学問(「物事の互いに関わりあう縁を知る」by福沢)
I
Intelligence(知性):理性的な知の働き
I
Wisdom(叡智):庶民の智恵、生活の智恵など
特に「情報」と「知識」の違いを
・第二次大戦はいつ勃発したか? (情報)
・第二次大戦の原因は何か? (知識)
と具体例をもって説明し
ーー
知識とは無数の情報(史料)を組み合わせねばならないので、イエス・ノーで答えが出せないのです。(中略)解答としてあきらかな誤謬は指摘できますが、「正解」というものはありません。
ーー
と言い切っている。
学校の教育とはどうあるべきなのか、根本的な問いかけがあるように読めた。
また、この知識の三角形構造が、「情報優位」の逆三角形になった情報最大・叡智最小の人を「秀才バカ」として「クイズには向いているが、複雑な事態に対する判断力は最低だ」とこき下ろしている。
太平洋戦争へ至る判断を下した政治家、軍部、官僚、学者への丸山の厳しい言葉であると同時に、現在はますますそうなっていないかと自らにも刺さってくる言葉だ。
#優読書
Posted by ブクログ
[ 内容 ]
『文明論之概略』は、福沢諭吉の気力と思索力がもっとも充実した時期に書かれた最高傑作の一つであり、時代をこえて今日なお、その思想的衝撃力を失わない。
敢えて「福沢惚れ」を自認する著者が、現代の状況を見きわめつつ、あらためてこの書のメッセージを丹念に読みとり、今に語りつぐ。
読書会での講義をもとにした書下し。
[ 目次 ]
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[ 関連図書 ]
[ 参考となる書評 ]
Posted by ブクログ
こういういわゆる精読みたいなのがあると古典へのアクセスもずいぶん楽になるだろうと思う。福沢もかなり興味出た。アジアの思想家というよりほんとに西洋人みたいに考えてるのね。
Posted by ブクログ
丸山真男「 文明論之概略 を読む 」
中巻は 命題「文明の進歩は 智徳の進歩である」に基づき 智徳論を展開
西洋の近代文明をどう受け入れるべきか を説いた啓蒙的な国家論。明治維新により 混乱した社会を落ち着かせ、方向づけようとしている。
学者に行動を促した 福沢諭吉 のメッセージは印象に残る
*学者の使命は 衆論を変革することである
*異端であることを恐れるな〜昨日の異端は今日の正統である
*少数者の意見が勢いを増して衆論を形成し、衆論になれば 天下の勢いとなる(幕府すら倒せる)
智力の組み合わせに関する論考は 現代にも通ずる
*人の議論は集まりて趣を変ずることあり〜智力の組み合わせにより、アウトプットは違ってくる
*人の智力議論は 化学の定則に従う物品の如し