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現代日本の思想が当面する問題は何か。その日本的特質はどこにあり、何に由来するものなのか。日本人の内面生活における思想の入りこみかた、それらの相互関係を構造的な視角から追求していくことによって、新しい時代の思想を創造するために、いかなる方法意識が必要であるかを問う。日本の思想のありかたを浮き彫りにした文明論的考察。
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Posted by ブクログ
半年かかってようやく読み終わった。 丸山節に耐えながら、よく頑張った。 日本の思想界の問題点を短く難解に言い表してくれている良書。マスターピース。 最後文化の領域で急に「である事」に擦り寄るのはちょっと狡いんじゃないの?と思った。
個人的には、「である」ことと「する」ことが好き。平易な文で書かれていつつも、近現代日本の政治思想を理解するための補助線としてとてもわかり易い。 ちょっと実存主義的??って感じはするが
1 日本思想の伝統の蓄積されないこととその理由について さらに、それが國體との関係性でどのように国民精神を養ってきたか 2 文学を特にマルクス主義文学をモチーフに、文学、政治、科学の三点対立で考える。科学の優位から文学の優位へ 正直、ここは理解しきれず 3タコツボ的な日本社会のあり方,イメージ...続きを読むの壁の分厚くなる傾向への鋭い批判と危機意識 その契機を、前近代にみるのではなく近代思想の取り込みの段階にみるのが面白い。 4である価値とする価値の倒錯の起きていることへの危機意識 政治はする価値であり、芸術はである価値だ、というのにハッとする めちゃくちゃすごい。こんなことを考えられる人がいるのが信じられない。 今読んでも、現代社会を鋭く描写していると感じるところから我々の進歩のなさと、それがいかに日本に根深く巣食っているかを感じる。
名作『「である」ことと「する」こと』。 この明解な分析に何度もうならされた。 自分も含めて日本社会では、「である」ことになぜこうもこだわっているのか。なぜ相手を「である」で分類してしまうのか。 見通しがたちつつも疑問が深まった。
・日本の思想は、いつでも何かの外来文化を骨格として受け入れ、自らはその周縁で生き続けるというある種巧いやり方で生き延びてきた。これに近いものは、河合隼雄の中空構造の日本の深層でも紹介されている。 ・日本の学問は、タコつぼ型で、ヨーロッパ的学問のように根幹がない。そのため、どこかで自分の学問が別の分野...続きを読むとつながっているという意識が弱いと語られている。専門化、セクショナリズム化して、内輪ネタの応酬になりやすいのはそのためで、大学生として、様々な学問に触れてその根幹とやらを掬い取ってみたいと大学1年生ながらに野心を持つきっかけを作ってくれた本である。
日経womanにて「ベストセラーしか読まない人は薄っぺらく見える」的な文章があり 紹介されていたこの本をそっこー読んだ。 結局他人のおすすめを読んでいる時点でベストセラー拾い読みと同じことをしているのだが、まぁいいだろう。 ちょっとは厚く見えるようになっただろうか…(鏡に映る自分の姿はしっかりと厚み...続きを読むあり。)
2章まではかなり難解でマルクス主義をベースに文学主義と科学主義の変遷を綴っているが、3割も理解出来なかった。欧州の歴史や各哲学者の主義を知らないと完全に理解するのは難しいと思われる 一方、3章以降は丸山さんの話がメインで書かれているので読みやすいです 特にササラ型とタコツボ型、「である」と「する...続きを読む」などは現代の様相を上手く表現していて的を得ていると感じる
他で日本思想の入門書を読んだので、もう一歩踏み込んでみようかしらと思って手に取った。入門書で感じていた「あれ?そもそも日本に思想てあるのか?」という問いにこの本は応えてくれた気がする。 ベースとなる知識が必要なので、全てを理解したわけではないが読み取れる部分からは発見と驚きがあり、面白かった。
國體(国体・こくたい)という非宗教的宗教、タコ壺文化とササラ文化、日本特有のイデオロギーが、権力者に通底する無責任体質とつながっている。その基盤に近代からの天皇制があるだろう。誰かのせい、もしくは先例重視に努めてしまうと、皆が保身に終始する社会となり決して向上しない。変わらない、変えないことを伝統・...続きを読む保守とうそぶく輩が台頭する限り令和のニッポンは進歩を望めない。
“右にのべたような状況、すなわち一方で、「限界」の意識を知らぬ制度の物神化と、他方で規範意識にまで自己を高めぬ「自然状態」(実感)への密着は、日本の近代化が進行するにしたがって官僚的思考様式と庶民(市民と区別された意味での)的もしくはローファー的(有島武郎の用語による)思考様式とのほとんど架橋しえな...続きを読むい対立としてあらわれ、それが「組織と人間」の日本的なパターンをかたちづくっている。(p.52)” 言わずと知れた、岩波新書を代表する名著である。書名の通り、日本の思想の特質とは何かについて述べており、現在巷間に流布している「日本論」の出典の一つといって良いだろう。2、3年前に夏の古本市で手に入れてからずっと積読していたのだが、今回漸く読み終えられた。 1 日本の思想 本書の中心となる小論である。理解できているとは思わないが、概略だけまとめておく。(以下、(?)を付けた箇所は僕の解釈なので、誤っているor言い過ぎている可能性大。) まず丸山は、日本的特質は、思想の軸を持たないがゆえに終ぞ内部に連関を持ちえなかった、思想の無秩序な雑居性にあると述べる。 “…それらがみな雑然と同居し、相互の論理的な関係と占めるべき位置とが一向判然としていない…(p.8)” 西洋文化ではキリスト教が思想の軸としての役割を果たしていたため、例えばニーチェによる道徳の欺瞞性の指摘がヨーロッパ的伝統に対する強烈なアンチテーゼとして機能した。一方で日本では、仏教にせよ神道にせよ、宗教が思想上の軸として作用するような伝統を形成しなかったため、新しく外からやってきた思想は「伝統」との対決を経ず、なし崩し的に受容される。再びニーチェの思想を例にとると、文脈が大きく異なるにも拘わらず、日本人の生活実感としての無常観の一類型として分かったことにされてしまう(ことがよくある)。 “いろいろな思想が、ただ精神の内面における空間的配置をかえるだけでいわば無時間的に併存する傾向をもつことによって、却ってそれらは歴史的な構造性を失ってしまう。(p.11)” 丸山はこのような特質が生まれた原因までは明言していないが、日本の歴史的な後進性・辺境性は一つの要素だろう(?)。つまり日本が、古代から中世においては中国文化を、近代以降においては西洋文化を、と、外からやってくる文化を受容する立場であり続ける立場であったことに由来するのではないだろうか。このようにして外来思想を尊び貪欲に取り入れる一方、その反動・自己防衛として(?)イデオロギー一般を拒否し、直接対象に参入しようとするもう一つの傾向も古くから根強い。その典型が、漢意(からごころ)や仏意(ほとけごころ)を斥け、儒仏以前の「固有信仰」を復元しようとした国学の本居宣長である。明治維新を機に国家として自らを画することになった日本は、上(=外)から注入される官僚的制度と、下から立ち昇る「村」共同体的同化思想が混合することによって、超近代と前近代が歪に同居する事態に陥ったというのが日本社会の問題点である。 “…合理的な機構化にも徹しえず、さりとて、「人情自然」にだけも依拠できない日本帝国はいわば、不断の崩壊感覚に悩まねばならなかった。(p.49)” 外山滋比古は“第一次的現実にもとづく思考、知的活動に注目する必要がある(『思考の整理学』p.195)”と述べたが、実は日本ではそれが二重に阻まれていたのである。一つは完成品を有難がり、手ずから思想を作り上げることを相対的に下に見る傾向によって、もう一つは生活実感を抽象化し思想にまで昇華させることを忌避する傾向によって。 2 近代日本の思想と文学 3 思想のあり方について 社会の2類型として「タコ壺」社会と「ササラ」社会という対比を導入し、日本社会は、根底に共通した基盤を持たない「ササラ」社会であると述べる。 4 「である」ことと「する」こと 僕が丸山真男を知ったのは高校の国語の教科書だったが、その時に載っていたのがこの文章。或るものの価値は、そのもの自体であることから先天的に生じるとするのが「である」論理で、現実的な機能や効能から生じるのが「する」論理である。文化や学問の分野では「である」論理が、政治(民主主義)の分野では「する」論理が適用されるべきであるが、実際にはそれらが倒錯している点を丸山は問題視する。 “…「『する』こと」の価値に基づく不断の検証がもっとも必要なところでは、それが著しく欠けているのに、他方さほど切実な必要のない面、あるいは世界的に「する」価値のとめどない侵入が反省されようとしているような部面では、かえって効率と能率原理がおどろくべき速度と規模で進展している…(p.176)” 特に1,2が難解で、何度か読み直して丸山真男が何を言っているかがやっと分かってきたところであるから、実際にこの本で為された議論が現代社会に対してどの程度当てはまるかということはこれから吟味していかなければならない(このレビューも、大雑把な展開をまとめるだけのものになってしまった)。少なくとも、部分部分として見ると肯けるところが多かったように思う。
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