中野晃一のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
ネタバレ最近読んだ新書の中では一番面白かった。
本書全体の内容は序章にコンパクトにまとめられているので、序章だけでも読むといい。
「右傾化する」といっても、ずっと常に「右」へとシフトしていったわけではないという。
「右」に揺れれば「左」への揺り戻しが起こる。その後再び「右」へと転じる。近年の日本政治はまるで振り子のようだと筆者は例える。
しかし同時に、振り子自体が徐々に「右」へとシフトしているという。
したがって、「左」への振り戻しの後の「右傾化」は、以前よりさらに「右」へと移動する。
これは言い得て妙だと思った(4ページの図1および6ページの表1は実に分かりやすい)。
近年、ネット上のみならず言 -
Posted by ブクログ
日本の政治の歴史を政治的立ち位置を切り口にしてたどる。かつて主流を占めた開発主義と恩顧主義の旧右派が、世界的な流れを受けた新自由主義と、アジア・歴史問題への対応をめぐって台頭した国家主義に代わっていく経緯がわかりやすい。
西洋の近代化の歴史では、絶対王政や封建主義から個人を解放しようとする中産階級(ブルジョワジー)が自由主義を担った。このうち、アダム・スミスは政府の介入を拒絶する自由放任の経済的自由主義を唱えたが、19世紀の終わりから20世紀の初めにかけて貧困や暴力がはびこることになったため、福祉や教育などの社会政策面の政府介入が、個人を真の意味で自由にするものとして進められ、戦後のケインズ -
Posted by ブクログ
日本は右傾化しているのか、それとも「普通の国」になろうとしているだけなのか。
いったい、どちらなのか?
著者は、日本社会の座標軸は右へ右へと推し進められたとする。
そのプロセスを丹念にたどった著作である。
以下、その内容である。
序章 自由化の果てに
1現在を生んだ新右派転換
2なぜ「反自由の政治」へ向かったのか
第1章 55年体制とは何だったのか
―旧右派連合の政治
1二つの歯車 ― 開発主義と恩願主義
2革新勢力 ― 「三分の一」の役割と限界
3なぜ旧右派連合は破綻したのか
第2章 冷戦の終わり ― 新右派転換へ
1新自由主義の時代へ
2自由化・多様化する日本政治
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Posted by ブクログ
本書のユニークかつ斬新な点は、1980年代以降の政治右傾化プロセスを「支点が徐々に右に動く振り子」のような「揺り戻し」を含む曲線運動と捉えていることにある。「振り子が右に振れるとき支点も一緒に右に動き、やがて振り子は左に振れるわけだが、前の周期の左端まではもどらず、もっと右の位置で留まる」。これにより「改革の後退」「改革の修正」とみなされる時期や政策が、結局のところ本質的には新自由主義化の動きそのものを停止させるに至らない力学が説明可能になる。
他方、今日の右傾化プロセスの因果関係を探求する上で最大の難問は、経済面でのグローバル化=自由化と、一見それに逆行するような国内政治局面でのナショ