小倉ヒラクのレビュー一覧
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Posted by ブクログ
まだまだ発酵ブーム中。
私的2冊目の小倉ヒラクさんは、
「日本発酵紀行」。
2019年に開催された日本の発酵文化を再発見するという趣旨の展覧会がきっかけになり生まれた本書。
小倉さんがその展示のために47都道府県の発酵文化を調査する旅のさなか、制作チーム宛に送っていた旅のメモと写真がもとになって、副産物的に出版されたらしい。
紀行文とあるだけに、前回読んだ「発酵文化人類学」にはなかった、なんとも言えないエモさがある。
Podcastなどで拝聴する独特な口調、ことばの言い回しから、経歴だけでなくそのチャーミングなお人柄は存じあげていた。
匂いや音、手触りなど、さまざまな五感に訴える直感的にわかりやすい表現が多いのは、ラジオの発話の中でも面白いなーと思っていたのだが、その上でここまで情の乗った繊細で温度感のある美しい文章を書かれる人だったとは!
小倉ヒラクさんの新たな一面に驚きながら読み進めた。
私にとっては「ラジオただいま発酵中」の復習になるエピソードもたくさんあって、さらに、これまた情感を誘う素敵な写真があったりして、日本全国を旅しながら日本全国の発酵食品を淡々と紹介していく…ちょっとすると飽きてしまってもおかしくないフォーマットなんだけど、どれも本当に興味深い。
特に第七章のヤマクロ醤油、木桶のムーブメントからのあれこれな話は、耳で聞いていた以上の臨場感、耳で聞いていた以上に乗っかってくる情報の量にも質にも圧倒された。
山本さんたちの活動を見ていると、歴史を「神の視点」で見ることが恥ずかしくなってくる。神様のように世界を見下ろして「世界の流れは必然的にこうなるであろう」と預言者ぶって、アンタ誰だよ?(159頁)
時代は常に「自分込み」で動いている。流れは「起きる」だけではなく「起こす」こともできる。そのためには、まず地面に降りてくる。一人から始める。始めたことを仲間とシェアする。そのプロセスを楽しむことこそが「今を生きる」ということだ。
(159頁-160頁)
ここの部分は、年を重ねたからこそ世の中を俯瞰してはつい無気力になりがちな自分に喝を入れられたような、痛気持ちよさをもって読んだ。
また、酒と醤油の対比(白と黒、若さと熟成など)から語られるダブルスタンダードな日本の美意識についても、そんなに多くはない自分の経験からくる点と点が繋がるような目まぐるしいダイナミズムに心を掴まれた。
この年になるまで日本文化に占める大きな割合の中に「発酵」があることも知らなかったし、生きることと食べること、食と文化の不可分性に向き合ったことがなかった。
自分史的発酵ブームには、この新たな扉の向こうにある未知の世界の大きさに比例して、たぶん続くだろう。
…ウチの本棚、
小倉ヒラクさんの書籍がどんどん増えていきそうな予感がする。
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Posted by ブクログ
発酵×地域文化で発酵文化人類学。それぞれの地域の風土に併せてどんな発酵文化が生まれてきたのか少しマクロ的に教えてくれる。そして発酵の基礎についてもかなりの紙幅が割かれている。
過去からの技術や知識の体系を追ってみると、なぜそんなことができたのか?と不思議に思うことが多々ある。キノコの可食判定もそうだし、フグの肝の糟漬もそうだけど、たくさんの犠牲なしには成り立たなそうだ。発酵もそのひとつ。目に見えない微生物の働きをどう技術として習得して生活文化にしてきたのか。もはや先人への尊敬しかない。
現代では工業化された発酵がほとんどで自分で漬物も漬けなくなったし味噌も作らなくなった。発酵と腐敗を区別せずに安全の名のもとに手作りの梅干しも売れなくなると聞く。もっと発酵のことを知らないと文化も知識も失われ、化学式で表される工業的な発酵しか残らなくなるのでは?と危惧してしまう。 -
Posted by ブクログ
発酵×文化人類学!?
最初びっくりしたが、読んで納得。
それぞれの地方で獲れる食材と、その場所で生きている菌類を、人間があれこれ工夫して活動させて生まれたのが発酵食品なのだから、文化的な営みでもあるというわけだ。
ブリコラージュ(レヴィストロース)とか、贈与とかはまあ、お嫌いな方は読み飛ばしてもよろし。
独特な文体(「~であるのだよ」)で、軽々と、ジャンルの垣根を飛び越して、面白さを伝えていく。
「正直詳しくないんだけど…」と思いながら読み始めたが、こういうビギナー読者にもやさしい本だ。
発酵はたしかに、今やちょっとした社会現象だ。
身の回りをふりかえると、塩麴、甘酒のブームが来ているから、その実感はある。
レトロ志向なのかと思っていたが、ムーヴメントとしてはずいぶん幅広いようだ。
そのことを教えてもらえたのは第6章末の「発行ムーブメントの見取り図」。
菌類の遺伝子を編集する、バイオイノベーションが盛んになっているというのだ。
一瞬、頭の中のイメージがくるっと回ってめまいがした。
冷静に考えてみれば、人間に有用な発酵菌なのだから、そういう方向に進めようと思う人がいて当然だ。
が、何か抵抗感があるのはなぜだろう…。 -
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【カビとともに生きるロマン】
柑橘類には緑のカビ
いちごには毛(?)の長い白黒のふさふさしたカビ
メロンは黒斑のカビ
うんうん、カビって生えるものとの相性があるよね。
おもしろいよねー。
昔、酵母汚染!という主張に関わることがあって
そのとき初めて酵母や乳酸菌のこと調べて
実際問題、酵母や乳酸は味方にするととても心強く
そして逆に敵とみると超やべえやつ
という知識があった。
だって当たり前に存在するものですよ。
それを人間の生きる環境下から除去するって、
…how?
発酵と腐敗は同じもので、
要は人間がその状態をよしとするかどうかであって。
ちなみに確か乳酸菌数の上限値縛りがあるのは
浅漬だけだったかな、そんなんもあるみたい。
発酵すてき!
やっぱロマンがある。
手前味噌文化にふれたい!
…味噌スープ、うちの娘大好きなのよ。
みそから一緒につくったら絶対楽しいよねとか。
自然界からもらい受け、利用し、共生し、…
というか生かされてるよね。
というのを改めて本書で感じました。
ありがたや。
そして発酵文化を生業とするの、うらやましい。
厳しいだろうけどロマンがある!
パイナップルを切りました。
2日後に食べたらシュワシュワするよー
さて発酵か腐敗かどっちかな? -
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発酵文化人類学
発酵の仕組みと文化人類学を初めて学ぶには、非常に良書。個人的には文化人類学に関しては既知情報が多かったが、発酵の仕組みを学ぶことができたのは面白かった。発酵とは、腐敗と紙一重の奇跡であり、人間の役に立つかで正否が決められている唯心論的なものであるという冒頭の一文は唸らせる。
発酵とブリコロールのところでは、日本の農村の大豆の使い方の多様性に改めて驚かされる。農村では、米、大豆が主な収穫物であるが、大豆をもとにした醤油、味噌、豆腐、納豆、米をもとにした米麹や日本酒など、非常時にバラエティに富んでいる。豆腐の味噌汁なんでものは塩と大豆に工夫を凝らしたものにすぎないが、その工夫というのがまさに発酵なのである。発酵は保存の手段でもあるが、それを利用することで、バラエティの少ない食物から、彩り豊かな食卓を作る触媒でもある。発酵おそるべしである。
なお、発酵とは、微生物を媒介とする人間と植物の輪の循環というのもいい得て妙だ。ここではマルセルモースの贈与論などが引かれているが、コミュニケーションとは常に過不足があり、永久機関のように回り続ける。贈答品のやり取りそのものに意味はなく、そのやり取りによって立ち上がる交流の輪にこそ意味がある。ここに、西洋哲学の基本概念である自由意思を持った個人の解体を見ることができるが、発酵とは、微生物を介した人間と植物、ひいては自然界のループの一つのブリッジにすぎない。そして、発酵を学ぶことで、我々もまた、大きな視野でみれば、チェーンの一つであるとも感じられる非常に大きな示唆があるのであった。
後半は、日本酒、醤油、ワイン、味噌づくりなど多くの発酵食品を手掛ける若手の起業家に注目されていたが、現在、高級ブランド化している日本酒や醤油などは、ハイリスクハイリターンの製法で臨んでいるからこそ価値があるということがわかった。発酵は一歩間違えると腐敗となる。そのため、資本主義は加工や無菌室などをうまく使って腐敗が起きる可能性を減らしてきた。しかし、今のブランド化している日本酒や醤油などは、加工によって失われた薫りや味わいなどを求めて、一切加工しないものを志向している。これもまた面白い取り組みである。 -
Posted by ブクログ
おもしろかった。かつて学んだ文化人類学がこんなふうに立ち上がってくるのはとても楽しい。特にPART2の風土と菌のブリコラージュは、著者の考え方が伝わってきて興味深く読めた。
ただ、読みにくい。本書がおもしろくてわかりやすいこととは別である。ブログを元にしているということだからか、体系的ではなく(そこは著者も冒頭で述べている)、見出しがないのも難点だろう。大文字が見出しかと思いきや違ったり、所々に1行空きが挿入されるのもブログの名残りか。図と文章の連携も甘く、これは著者のせいというよりは編集者のせいとも言える。
日本各地の醸造文化の紹介にはワクワクさせられる。続刊に期待! -
Posted by ブクログ
興味深い点は、たくさんあったのだが、論の立て方が私には難しかった。
大文字の伝統、小文字の伝統の対比、そこにプラトンとアリストテレスの対比、啓蒙主義が出てきたことによる世界観の変化、柳田國男と柳宗悦の考え方の対比、そして著者の専門である発酵学、そして鵜飼などを例にしての説明。
個々の論はわかりやすく面白いが、それが全部結びつけていくところで、難しく遭難してしまった。
ただ、発酵や鵜飼、そして小文字の伝統に繋がることとして、何かの力を加えて〇〇にするというのではなく、酵母や鵜が力を発揮できるよう環境を整えていくということがとても面白いと感じた。