阿川せんりのレビュー一覧
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ネタバレどうしても行きたくないときだって、ある。を綴った6人の作家さんの物語。
内容紹介:誰に何を言われようと行きたくない場所もあれば、なんとなく気持ちがのらない朝だってある。 ふとしたきっかけでサボってしまうかもしれないし、人生を変えるような決意で回れ右をすることもあるかもしれない。 ひとはいつでも「行きたくない」気持ちを抱えている。 僕たちのそんな所在なさをそっと掬い上げる、刹那のきらめきを切り取った物語。
こちらの著書を購入したきっかけは、作家の一人の住野よるさんの作品が載っててそれで読んでみたいと思って購入したんですが、読んで見るとどの話も良かったです。特に心に残ったのが
阿川せんりさん・・・好き・嫌いどっち? 「あなたの好きな/わたしの嫌いなセカイ」
渡辺優さん・・・エラー?ロボットだって... 「ピンポンツリースポンジ」
小嶋陽太郎さん・・・人は見た目では。なんとなくホッ 「シャイセ」
住野よるさん・・・住野さんの空気が。幸せって... 「コンピレーション」
ほんとどれも良かったですが、やっぱり短くても住野さんワールドが一番良かった(^^) -
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「いきたくない」
そう思っちゃダメなのかな。
自分は不出来なのかな。
そんな気持ちがなんだか浄化された1冊。
ピンポンツリースポンジ。ロボットと心。対極にあるものだと思ってたけど、実は違うのかも。ロボットが抱く気持ち。ほんとはあるのかも、と思うと、不思議な感覚となんだか心があったかくなる感じがした。
シャイセ。日常の少しずつのストレスは、まわりの人が包んでくれる感覚で緩和されてて、その感覚がなくなった瞬間、耐えられなくなる感じ。すごーく沁みる。「いきたくない」って当然だよ、のシャイセの言葉に救われた。
週末のアクアリウム。普通と普通じゃないの、境目。平常心と狂気の境目。人って、絶妙なバランスで立ってる。足元がグラグラする感じの怖さを感じました。 -
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作品紹介・あらすじ
誰に何を言われようと行きたくない場所もあれば、なんとなく気持ちがのらない朝だってある。
ふとしたきっかけでサボってしまうかもしれないし、人生を変えるような決意で回れ右をすることもあるかもしれない。
ひとはいつでも「行きたくない」気持ちを抱えている。
僕たちのそんな所在なさをそっと掬い上げる、刹那のきらめきを切り取った物語。
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6人の著者による、「行きたくない」をテーマにした短篇集。「とりあえず気楽に暇つぶし程度に読めそうだな」と手にとったのだけれど、そんな安易な気持ちはいい意味で裏切られた。
●加藤シゲアキ「ポケット」
アイドル・グループ「NEWS」のメンバー。2020年と2023年に直木賞候補となる作品を発表している。本書「行きたくない」は2019年の出版なので、直木賞候補になる直前の短編。だからかどうか分からないけれど「これから本領を発揮していくのかな」なんてちょっとイジワルな感想を持ってしまったのは、この「ポケット」が今ひとつよくわからなかったから。言いたいことはなんとなくわかるような気もするのだけれど(回りくどい言い方ですが)どうもかゆい所に手が届かない。いや、違う。かゆいという感覚はあるのだけれど、どこをピンポイントでかいていいのかわからないので、とりあえずかゆい感覚がありそうな周辺をボリボリとかきまわっている感じ。決してつまらなくはないので、余計にもどかしい気持ちだけが残ってしまった。それでも矛盾しているようだけれど好感が持てた作品。
●阿川せんり「あなたの好きな/わたしの嫌いなセカイ」
楽しい作品ではないです。読んでいてもちっともハッピーにはなれないのだけれど、目を背けることが出来ないというか、変に共感してしまうような状況。淡々とした文体なのに書かれている内容は登場人物本人にしてみれば、どうしようもないほどに切羽詰まった心境になっていると思う。しかも「わかる!わかる!なんとなくその気持ちわかる!」と思えてしまうのだからたちが悪い。僕にとってはそんな作品。「面白かった」という感想は相応しくなさそうなので「物凄く印象に残った」にしておきます。
●渡辺優「ピンポンツリースポンジ」
これはもしかしたら近未来SFなのかもしれないですね。AIがどんどん進化していった結果、AI自体が「なんとなく行きたくない」という感情を表現するようになるかもしれない。そしてAIを使用している人間を困らせる。この「なんとなく」というのが、白黒はっきりしている感情よりも、より複雑なのかもしれない、という指摘だけでも「おお、そうかも」と思えてしまった。またそんな「なんとなく」という感情を持ったもの同士に仲間意識が生まれるのも、なんとなくわかる気がする。面白かった。
●小嶋陽太郎「シャイセ」
この作品に出てくる「2階の住人が床に物を落として騒音を発したら、その下の1階の住人が天井を突っついて2階の住人にクレームをつけてくる」みたいな状況は、実は僕はリアルで体験している。なので、途中までまるで自分のことのような気持ちで読み進めた。実際にはクレームではなかったのだけれど。恋人との別れ、現実とうまくかみ合えない状況とそれに対する諦念、それでも誰かと結びつきたいという欲求、コンビニや喫煙所での邂逅、DV、そして不器用ながらなんとなく結びついた2人。そんな物語が重くなることもなく、時にはユーモラスで軽快に描かれている。これまた面白かった。
●奥田亜希子「終末のアクアリウム」
これはどうなのだろう。男性である僕が読むのと、女性が読むのとではやはり受け取り方が大きく違ってくるように思う。一組の夫婦が登場するのだけれど、なんとなく不穏な空気を僕は常に感じながら読み進めていた。しかもそんな夫婦にちょっかいを出してくる第三者の存在。そしてバランスが崩れてしまったラスト。「終末のアクアリウム」とはそういうことだったのかと思い知らされる。結末は用意されていない。でも「自分の家に、帰ります」という一言にひとすじの希望が見られたような気もする。物凄く印象に残った。
●住野よる「コンピレーション」
仕事から帰宅すると毎晩知らない友達が待っている。しかも毎晩違う友達で既に400人は超えている。そしてそんな友達と楽しく交流する。主人公の女性はそんな環境に疑問も不安も抱かずに浸っている。次の夜の「初めて出会う友だち」を心待ちにしている。途中でこの環境を「初めてではない、二度目の友達」が打破しようとするのだけれど、結局はうまくいかない。
決して現実味のある設定ではないのだけれど、「二度目の友だち」が打破できずに主人公の女性が、このある意味自堕落でただ流されて生きているだけの状況を受け入れる、という点がすごくリアルに思えた。仮にここで主人公の女性が、「よし、自分を変えてやろう」なんて一発奮起したらかえって嘘っぽくなってしまったように思える。打破できなかった友達が、それでも主人公の女性とふくれっ面のまま食事をしたり、泊まっていったりするあたりも僕にはすごくリアルに思えた。
少し違うかもしれないけれど、映画「トゥルーマン・ショー」みたいな世界観なのかもしれない。タイトルの「コンピレーション」とは「編集、編集物」といった意味で、「なるほど」と思わせてくれる。この異様な状況に関する説明は作品内ではほとんどでてこないのだけれど、それに対しては全く気にならなかった。
作者は「君の膵臓をたべたい」の著者とのこと。僕はこの「君の膵臓を~」を読んでおらず、いままでは食指も動かなかったのだけれど、この「コンピレーション」を読んでみて、機会があったら読んでみようと思った。この「コンピレーション」、本書の中では一番面白かった。