スカイエマのレビュー一覧
-
Posted by ブクログ
福祉システムが崩壊した近未来の東京で生きる身寄りのない少年イオンの物語。東京は中流や金持ちが住む世界と、そこからはみ出したまま一生を終えるホームレスの人々が住む世界に分かれており、さらにその地下に陽の目を避けて生きる地下住民たちの世界がある。ホームレスは毎日がサバイバルで、女子供はかたまって派閥のようにして身を守りながら生きている。少年は守られたい気持ちと自由になりたい気持ちの両方を持ち、生き延びつつ成長もしているという、危ういながら伸びやかな存在として描かれている。最期の最後で両親を思う気持ちが切なく、人はみな、愛を注がれて育ちたいものなんだなと思った。いくつになっても、「優しいおとな」を求
-
Posted by ブクログ
ここ30年、家族が壊れてきた。
昔のようではないということは目安にはならない、とは知っている。
変んだ、変んだと他人事に思って、 というより おかしくなってしまっているのを身近に経験する。
身内に感じる、ためいき。子育てを誤ったのか?親が悪いのか!?
言い訳をすれば一度しか経験できないものを、 失敗だってあるさ!
じゃあ、この物語のように親が誰だかわからずに、育っていくのって、どうか?
本人の拠りどころの無さは過酷だと思う。親代わりを見つけてしまうのも無理は無い。
だったら
失敗を恐れず親になるしかないのじゃない!?
出版されたらさっそく購入して読みたくなる作家さんの一人。 -
Posted by ブクログ
桐野夏生『優しいおとな』中公文庫。
何故か気になり、手にした2013年刊行の文庫本。福祉システムが破綻した希望無き近未来の日本を舞台にした小説である。
全編に漂う絶望感。何とも言えない退廃的な雰囲気の中で主人公イオンの成長の物語が展開する。ラストの描写は……
どうしても今の日本と比較したくなるのだが……今の日本は福祉システムの破綻どころか、新型コロナウイルス感染と相次ぐ未曾有の天災により、破滅への道をまっしぐらに突き進んでいるとしか思えない。本作には微かな生きる望みが描かれているが、今の世の中はどうだろうか……
スラム化したかつての繁華街シブヤで、他人とは距離を置いて独り暮らすホームレ -
Posted by ブクログ
願かけに行った帰りに事故で死んだコースケは、その願いをかなえるために現世に戻ってくる。残された時間は127時間44分!?
死から戻ってきた主人公の物語というとアレコレ思い出しますが、これはそこにテニスを絡めて青春ものとしての色合いを強めています。
那須田作品の中学生は飄々として大人びているイメージがありますが、この主人公コースケは少し違いました。
何事にも適当に済ませていたコースケが真剣に取り組もうとした時に、周りの人たちの関係が変わっていく。周りの人とも真正面に向き合うことで変わっていく。
真剣になるきっかけは何であれ、部活も人間関係もきちんと取り組んだ方が楽しい。勝つためだけじゃない、 -
-
-