暉峻淑子のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
ネタバレ【内容】 社会人とは本来、自分たちの社会をともに作り上げる人びとのことだ。だが、今の日本では、若者たちの就職難や格差の拡がり、無縁化に見られるように、社会人として生きていくのが困難になっている。社会人になるには何が必要か。社会人をどう育んでいったらよいのか。著者の内外での経験にもとづく豊富な事例を織り交ぜながら考えていく。 (「BOOK」データベースより)
【感想】 社会人として生きていく上で、考えるべきことを筆者が提供した一冊。社会とつながりを持ち、働きながら、支え合いながら、学びながら、育てられながら、生きていくことの必要性を説いている。
まえがきに「私たちは、個人であると同時に社会人であり、自然の一部として生きている自然人でもある。この三つはどれも切り離すことができない一体のものとして、人間を人間たらしめている要素なのだ。この三つが偏りなく撚り合わされて私たちの人生の意味と目的を支えているときに、私たちは、たぶん豊かな幸福感を持つことができるのだと思う。」とある。
「これからの時代は社会との付き合い方によって、あるいは社会を個人生活の中にどれだけ活かすかによって人生の方向性が決まると言ってよい。だから社会から排除されることは悲劇なのだ。社会から何を学び、どのように助けられ、あるいは社会に役立つことによって、どれだけの喜びと、生きがいを持つか。人間は意識していなくても、つながりの中で生きている社会的動物である。」(P57)
「社会的なつながりや支え合う人間関係は数字では表せないが、人間社会の大きな財産である。(中略)社会は単なる個人の総計ではない。さまざまの人が出会い、影響し合って、計算を超えた影響力を持ち、人々に生きる意味を考えさせる場所である。社会は知識や経験を豊かにするだけでなく、自分自身を知るためにも必要なのだ。社会人として生きることは自分の可能性を育むだけでなく、社会への信頼感があれば、過剰な自己防衛や闘争心を、創造的なエネルギーに変えることができる。(中略)人間のつながりに価値を置く社会は、ふところ深く、多様で豊かな価値観にあふれているからだ」(P238)
これらの言葉の本質にある意味を理解するには、もう少しこの「社会」とつながりながら、生きなければわからないのかもしれない。 -
Posted by ブクログ
ネタバレ20年以上前に書かれた本であり,
私は,状況はかなり変化した,ととらえた.
その変化は,いろいろあると思うが,
・この本が書かれた時代に労働者として描かれ,
成長期,バブル,不況のなかを経た,現在の壮年のトップ世代が,
(ややともすると過剰な)反省に立ち返っているようなこと
(老人優遇,ゆとり教育,男女共同参画),
・一部ではあるが,若者や中堅層が
現在進行形で押し上げ盛り上げているようなこと
(環境問題,社会企業,NPO,フレックスタイムやゼロ残業,CSRなど),
・先進国としての基準を満たしたもの,または
他の途上国のふりみてわがふりを直したところ
(トイレやごみ箱など衛生,社会資本整備,新自由主義的な利益主導の価値観の否定).
もちろん,都市部と周辺部で細部に差はあるだろうし,
労働業種によっては悪化したものもあると感じる.
問題によっては手付かずのものもあるかもしれない.
さらに新しい問題もうまれている.
その責任を負うのはだれなのか,という点は,この本では「国民」と漠然だが,
経済的問題として(社会人・企業人的視点)
政治的・地域的・社会的問題として(市民・国民的視点)
どう読むのが正しいのか.迷う一冊 -
Posted by ブクログ
ネタバレ就職して社会に出る人に向けたノウハウ本だと思って購入したら、違いましたwwまえがきとか読まないもので。
格差社会で生きにくい世の中で、我々底辺の市民が持つべき心構えが議論されています。NPO、自治、教育、若者や非正規社員の雇用問題のエピソードは示唆に富むものです。僕は希望を持っていきたいのですが、少し芽が摘まれた気がします。確かに生きにくいでしょう。
ホームレスや派遣切りを自己責任と考えていましたが、そうばかり言えないということを知り衝撃を受けました。
企業と労働者たる社会人がバランスよく楽しく生きられる世の中の実現を望みます。青臭いと思われるでしょうが。 -
Posted by ブクログ
ネタバレこの本を読む直前にミヒャエル・エンデの『モモ』を読んだせいか、豊かな生活を送るための必要条件としての「時間」というものを、強く意識させられました。
この本が出たのが1989年。さすがに引用されているデータは古いけど、ポイントとなるところは今の時代でも色あせていません。中でも、日本人の労働時間の長さや、通勤ラッシュを耐え忍んで狭苦しい家に寝に帰るだけの生活でいいのか、という問題提起は、いかにもこの時代ならではだなーという感じです。いまは、通勤ラッシュは変わってないけど労働時間は少しは改善されたのかな。
著者が西ドイツで過ごしたためか、西ドイツはこんなに素敵な生活だった、それに比べて日本はとにかく住環境が悪い、という論点がけっこうダラダラ続くので、そこはふんばりどころ(笑)この著者は当時の日本の住宅を「ウサギ小屋」って表現するのが好きだったみたいです。
環境問題について高い関心を寄せているのも、当時のトレンドを意識してる感じです。そして、「技術は失敗が許されるゆとりのある技術を使うこと。原発のようなギリギリの技術を使うことは、自然や人間にとって危険であるばかりでなく労働そのものを非人間的にする」という主張には、3月11日を境に世界が変わった自分たちとしては、ドキリとさせられる主張です。こんな主張が23年前にあったとは、という感じ。
データはもう使えないので、その点で☆は2つマイナス。でも、問題提起されることの多い「豊かな生活」というベタなテーマについて、23年前から噴出していた問題点を包括的に理解するには良い本だと思います。 -
Posted by ブクログ
西ドイツ在住経験のある著者が、日本と他の先進諸国との比較から、日本のもつ「豊かさ」の観念の特異性を説明する。
「豊かさ」というと、日本では一般に経済水準の高さと捉えられがちだが、西欧でいう「豊かさ」には人間性の尊重、自然環境の維持、自由競争の前提としての社会福祉の充実、が含まれている。
著者は、日本は「豊かさ」の実現の仕方を間違えたのではないかと、この本を通じて警鐘を鳴らしている。
20年前に書かれた文章であるが、今尚その批評は示唆に富んでいる。
ただし、ここで書かれている西ドイツでの「豊かさ」が、そっくりそのまま日本に当てはまるかどうかは、甚だ疑問である。
西欧文化と日本文化は、質的に大きく異なる。
導入できる考えと、日本にはうまく馴染まない考えとがあることは、識別されなければならないだろう。