暉峻淑子のレビュー一覧
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カネとモノが至高とされる生活は果たして豊かさを享受できるのか。高度経済成長に邁進した先進国の人びとは周囲に忖度して己の意見を押し留めてしまい大切なものを犠牲にしてしまったのではないか。それに気づく人はまだいい。気づかない人はそれが正しいマジョリティだと盲信するのはカルトにほど近い。そこに安住はあるのか、その先には疲弊した福祉や教育となればまさに現在の日本だと筆者暉峻淑子は警鐘を鳴らす。現代に流布する言葉・コモンという共同富を使った自治論を展開する斎藤幸平はその流れを継承している。なるほど線は繋がる。そして私たちは本当に今、声を上げるべきだと感じる。
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第2章で紹介されている「対話的研究会」が素晴らしい.対話することに飢えている人たちは,対話できるような設定があれば,水を得た魚のように話を始めることが,多くの事例で紹介されている.対話をする基礎になる素養を,小学生の段階からしっかり教えていく必要があると感じた.理論的な背景を紹介している第3章はやや退屈だが,多くの研究者が対話の重要性を指摘しているという学問的なエビデンスは,お堅い考えの役所などを説得する資料となろう.ファシリテーターの存在は知っていたが,伊藤さんの役割は非常に重要で対話を実のあるものにすることのできる素晴らしい人材だと思う.
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エーリッヒ・フロムが『生きるということ』のなかで説いた、人間の価値様式、「持つ様式」と「在る様式」を日本という社会にプロットして論じた名著といえる。人間にとっての本当の豊かさについて教えてくれる。
がんばって働いても報われない、ひとりひとりのがんばり(特に過労死や自殺で死んだりすることもある)で支えられている経済至上主義と哀れとまで言える社会資本の貧しさのなかにこの国は存在している。
余暇活動の価値も到底認められないから、有給取得率だって上がらない。これでは日々の暮らしのなかで、文化的価値を見出し、友人や家族など、人と人とのかかわりあいを通じて、自己実現を果たしていくなんて到底夢のような話 -
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日本は海外から見ればこんな風に思われてるんだ。震災以後日本の様々な対応について、白い目で見られていることは明白。周りがどうではなく、自分はどうしたいのか考えなければいけないと痛切に思う。名著。
「しかし、考えてみると、日本から輸出される安い自動車やコンピューターの背後にも同じ問題があります。自動車を作っている下請け労働者の長い労働時間やウサギ小屋の住宅。少ない有給休暇や、退職したあとの老人福祉の貧しさ。そんな犠牲の上に作られた日本の競争するためには、ヨーロッパの国も同じレベルにまで勤労者の生活を落とさねばなりません。しかし、そうすれば、人びとが営々と何百年もかけてつみ重ねてきた基本的人権や福 -
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私は流行語の勝ち組、負け組と言う言葉が大嫌いである。弱者にいたわりのない米国型の冷たい国、という印象を受けるからだ。日本は拝金主義が横行し、万事が金もうけに費やされる国である。子供は出世コースを歩むために幼いころより塾通い、会社に入れば今度は不毛な決して勝者のない競争社会である。本書ではこの原因は明治維新にまで遡るという。要するに富国強兵の精神が未だに根付いており、企業内では個人の人権はなく、憲法は企業の門前まで、と書かれている。著者はこの解決には時短、人権意識の改革が必要と唱える。まさにその通りであって、未だに週40時間労働が守られている会社はほとんどない状況である。今でこそ、ワークシェアリ
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ネタバレ古本屋で出会った書籍のためおよそ30年前のデータや価値観で書かれたものですが、それでも現在の社会に対しても通ずる内容と感じます。
・当時のお金や物質的な豊かさばかりに囚われそれ以外の豊かさを国民が享受できる状況にないこと
・「健康で文化的な最低限度の生活」をうたいながら実際には生きるギリギリでしか支援が受けられないこと
・その他仕事や生活があまりにも豊かさを感じられないほどに厳しくなっていること
・これらに対する批判や提案とヨーロッパ(特にドイツ)での取り組みやそれによる生活の様子
これらがとても印象的に感じました。カネやモノでしか評価されない豊かさについて考え、人生や生活をどうすれば豊かで満