神野直彦のレビュー一覧
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ネタバレ財政学が専門の教授の本ということで、財政学色の強い本だった。
財政学についての、教養はもちろん、基礎的な知識や概念を押さえることもでき、さらに財政学の重要性をわかった上で、日本において、どのように地域再生をすべきかを学ぶことができた。
財政力とは、財政需要と課税力で決まること、地方自治体は、出入りが自由なために、所得再分配を実施するのは、出入りが不自由な国家(中央政府)となること、などが財政学の基本的な知識として役に立った。
とりわけ、「公共財を民営化すれば、市場で供給することになる。つまり、そのサービスは購買力に応じて分配されることになってしまう。したがって、民営化するか否かは、それが欲望か -
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『地方財務』の特集で、地方自治体の財政担当者の多くがお勧めの本に挙げていたが、本書を読んだきっかけである。確かに、ジュニア新書ではあるが、中身はかなり濃密だった。公共支出の基準としての「ニーズ」と「ウォンツ」という概念など参考になった。
しかし、財政における借金についての考え方には賛同できなかった。国債を持っているのは金持ちであり、逆進性のある消費税増税で借金を返すのは逆再分配になると主張しているが、国債の多くはゆうちょ銀行などの金融機関が持っている。財政破綻が起これば、そういう金融機関に貯金や預金をしている一般国民にも多大な悪影響を及ぼすことについてはどう考えているのだろうか。また、公共サー -
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1990年代以降、企業の工場は人件費が低いアジアへと拠点を移動しました。
それに伴い、日本自体は工業が衰退、商店街も空洞化になったことから、財政危機、破綻という地域社会において、深刻な問題となっています。
そういった背景から本書は地域社会を再生するための策を記されています。
地域再生のための2つのシナリオになると著者は説いています。1つは市場主義に基づく米国型のシナリオ。もう1つは財政によって、人間の生活する「場」としての再生を目指す欧州型のシナリオで、自然環境の再生が優先される。
日本は欧州の地域社会再生に学び、人間の生活の「場」として機能させることを重視すべきだと著者は説いてます。地方 -
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ネタバレ地方再生に対してヨーロッパの社会経済的手法を参考に述べられている。
これからのインフラは教育・福祉・医療が中心になっていくがそれを地方財源での公共サービスにしていく必要がある。また、高度情報化により人の移動が必要なくなるため継続的な人間関係が描かれるためコミュニティ機能はますます重要になってくるとのこと。
コミュニティは確かに大事だが、情報化社会により継続的な人間関係を描くという仮定はどうだろうか。一度に多数の、世界中の人にアクセスできるような仕組みができた今、継続的でクローズドな人間関係が希薄になっていく可能性は高い。
税制度に対するアレルギーを再認識できたので、地方財源に対する理解を深めた -
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そもそも、経済と財政がごっちゃになっているような状態から読み始めた。「税金を安くすれば」「税金を高くすれば」それだけで捉えていた財政のことを考えなおした。単純に「スウェーデンを見習え」では、変われない。マニフェストでとりあげられて、政治の争点になるのに、実は租税制度と社会保障負担の関係なんてちゃんとわかっていないのだ。
スウェーデンは国民の生活を政府が保障しているし、国民がお互いに助け合う仕組み。イギリスはお互いの助け合いはあまりしないけど、最低限の生活は再分配で保障する仕組み。保障の代わりに、貧しい人にも高い消費課税が課されているヨーロッパに比べて、アメリカはお互いに助け合うのではなく、自 -
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小泉政権時代のきわめて強権的な構造改革が行われていた時期に、その改革に異を唱え、衰退していくばかりの日本が進むべき方向を示した本。
著者によれば、サッチャリズムに始まる新自由主義は、19世紀に起こった構造改革の根底に流れていた自由主義思想とは、似て非なるものであったという。
古典派経済学に基づく自由主義思想は、それまでの中央集権・私的国家からの脱却であり、言うなれば国家の民主化を進め、市場を開放することにその本質があった。ところが新自由主義思想は、第2次大戦後、そろって福祉国家を目指した大国が経済的に行き詰ったところで打ち出した、市場の創成を目的とした思想であった。結果、所得の低い者ほど租税 -
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日本の歴史を省みない政策により日本の危うさが語られている。
印象が強かったのは対照的に取り上げられた知識社会を実現するスウェーデンについて。
例えばカルマー工場は流れ作業ではなくチームで一つのものを作り上げる。これにより「何を」作っているのかを意識でき担うことができる。これは本著の中で語られたマズローの欲求の目的を持つことをうまく充足させた考え方であるといえる。
また、学習サークルも魅力的だ。参加者の意思によって幅広い学習プログラムを受けることができる。参加は有料だが5人以上など一定の条件をクリアすれば補助金も受けられる。
日本に対して厳しい目を向けていると思いきや結びには励ましの言葉を綴って