藤たまきのレビュー一覧
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Posted by ブクログ
大好きなフェアリードクター・シーナのシリーズ中でもダントツ大好きな『海の国の犠牲(サクリファイス)』が収録されてる第2巻。今回このレビューを書くにあたり久々読み返してみたら案の定、アホみたいに泣けてしまってまいった。藤さんの繊細なタッチで描かれる万華鏡のようにキラキラ色彩あざやかなストーリーと、胸に迫る静謐で美しいモノローグの威力は本当すごい。言葉のチョイスが綺麗で優しくて、でも時に愚かな人間の真価を問うような生々しさもあって、決して上辺だけのお綺麗さじゃないからストンと心に落ちてくる。
そんなマイフェイバリット『海の国の犠牲』は、タンカー事故による原油流出で海洋汚染の危機に瀕している母の故郷の海辺の町をボランティアとして訪れたシーナが美しい海の精霊・セルキーと出逢う話。人災によって汚されていく海の底に棲む彼らの統治者・ダルーアンは度重なる人間の蛮行に怒り心頭で、制裁として二人の弟・ダモルトとダダーディンに日ごと近隣住民の魂を取ってこさせ、陸地の人々と徹底抗戦の構え。折悪しくそのどさくさに巻き込まれたシーナは海底にあるセルキーの住処・夏宮殿(サマーパレス)に囚われてしまうんだけど、セルキーと人間の確執はそのまま現代における環境破壊問題に通じるところがあって、シーナに向けられるダルーやダモルトの陸への憤懣は読者側の耳にも痛い。
かたやヒトを忌み嫌う兄達の横暴なやり方に懐疑的な末弟のダダーはまっすぐな心根の優しい子で、彼のまだ幼いがゆえの潔癖さや純真さが愛しくて癒されます。シーナにかけられた『妖精の男落とし』の魔法にも惑わされなかったダダーが、それでもなおシーナに惹かれ、本来ならば憎むべき対象であるはずのヒトを心から好きになっていく過程が本当にいとおしい。この話のキーパーソンとなる陽気で鷹揚なおじいちゃん人魚・メロウのクー・マラと、シーナのひいおじいちゃんとの若かりし頃のエピソードも素敵。とても純粋にシーナを想うダダーの刹那の初恋は、アンデルセン童話の『人魚姫』のように異種間恋愛の尊さとせつなさを孕んでいて、夜の波間でのラストシーンは涙せずにおれません。北海の町から自宅へ戻ったシーナがレイリィママに託したダダーへの伝言と、心の声でそっと彼に宛てた最後の告白にまた涙。
「何かを犠牲にしなくては…」。ヒトへの憎悪が冷めやらぬダルーに涙声でそう訴えかけるダダーの姿は、どれほど人間に蹂躙されてもなお黙してあるがままを受け容れる自然そのもののような気がしました。BLというカテゴリに敬遠せず、多くの方に読んでいただきたい作品。 -
Posted by ブクログ
我が心の名作BLは数あれど、これは本当に掛け値なしの名作。だと私的に信じて疑わない。BL要素は非常に薄口(※せいぜいキスまで)だけど、萌えだのなんだのいう煩悩を遥かに超越して深く心に沁み入る何かがある、そんな珠玉のシリーズ連作。イギリスののどかな片田舎で精霊に関するよろず相談事を請け負いながら、穏やかだけれどちょっと風変わりで騒々しい日々を過ごすフェアリードクターの少年・シーナと、無垢で純粋な彼と心を通わせる精霊達とのハートウォーミング・ストーリー。
BL的な設定としておもしろいのは、産まれて間もないシーナを女の子とカン違いしたおっちょこちょいフェアリの祝福のせいで彼がこの世のすべての男の精霊に好かれてしまう体質になってしまった、ということ。で、ついた異名が『(妖精の)男落としのシーナ』。シーナ自身は極めて健全なフツーの少年なので当人にしてみればはなはだ不本意ながらも、近隣住民から持ち込まれるさまざまな精霊絡みのトラブル解決のためにやむを得ずその特異体質を活かし、毎度しぶしぶ男の精霊をタラシまくって?いるシーナの愛され総受けっぷりがほほ笑ましくもいとおしい。各話のメインとなる個性豊かな精霊達はもちろん、シリーズを通して登場するシーナの家族や友人達など、この作品に出てくるすべてのキャラがとても魅力的で、彼らがつむぐ少しだけ不可思議な日常の物語にはいつも春の日だまりのようなあたたかい愛が満ちあふれてます。藤さんらしい、優しく詩的な美しいモノローグがまた秀逸で何度読み返しても胸に響く。昔も今もこれから先も、ずっと変わらず大好きな思い入れ深いシリーズ。
この1巻に収録されているタイトルの中では、ちょっとおっちょこちょいだけど働き者のおうち妖精・ブラウニーのアンバーの話『君を包むリボンの色』がかわいらしくてお気に入り。そしてアンバーに負けないくらい、いつまでも純真な少女の心を持ったレイリィママがかわいいです。 -
Posted by ブクログ
また2巻だけ画像あり。
全3巻。3巻が辞書のように分厚いです。
藤さん作品の中では珍しいくらい、恋愛モノ恋愛モノしてる。
基盤にあるのが基本ずっと恋愛。
なんだけど、恋愛マンガでよくここまで繊細に葛藤させられるねってくらい主人公が悩む悩む悩む。
気持ちは分かるし、主人公の真面目さはとても日本人的で、共感しやすいんだけど、そこまで描くかっつーくらい、悩む悩む悩む。
そんなにすごい事件なんかが起こるわけじゃないから、とても些細なことで悩んだり、とても根源的なことで悩んだり、そう、恋愛マンガじゃこういうとこの悩みはスルーするんじゃない?ってくらい、悩む。
そこが綺麗に分かりやすく描ける位、人物の背景、各々の価値観の原点がしっかりしてて、好き。
だから、しんどいときに読むとホントしんどい。
主人公はそこまで言うほどネガティブじゃないけど、ふとした隙に陥る軽いネガティブさをこれでもかってくらい丁寧に拾うから、ダウナーが伝わってきちゃう。
重さはあるけど、暗い話じゃないから、しばらく読んでないとなんとなくホライズンや霊山より読みやすかった気がして、うっかり手に取ると、自分のメンタル次第ではすごい落ち込んだり、励まされたり。
甘夏に共感しながら読むと、セラにはちょっとイラっとすることもある。
セラに共感する人はきっと逆なんだろうな。
最後の方読みながらは結構ずっと泣いてる。
あ、題材はフィギュアスケートです。男子。
淳ちゃんがかわいい。いい子。