火野葦平のレビュー一覧
-
Posted by ブクログ
とにかく面白かった。
コメディタッチのドタバタ劇。
これが1950年に出版されたモノの復刊、
ということに、また驚かされる。
先の大戦後に、◯◯天皇だと名乗り出た人物が、
本当にいたらしいと聞く。
それも一人ではなく……。
同じようにこの作品では、戦後、全国に我ぞ天皇というものが7人も現れる。
主人公の父も我こそはと名を上げ、正当性を掲げ、
組合を作るべく「皇太子」となった主人公が、
説得に回るも……。
登場人物のほとんどに動物の名前が付くのは、
現実に現れた◯◯天皇からの着想だろうか?
物語に昭和天皇は現れず、共産党が君が代を歌う。
戦後のある特殊な空気も垣間見ることもでき、
楽しく -
Posted by ブクログ
ネタバレ『麦と兵隊』や『糞尿譚』の作者である火野葦平の小説です。
太平洋戦争敗戦直後の混乱期、今上陛下(昭和天皇)は偽系の天皇であり、自分こそが正当な皇位継承者であると主張する者が続々と現れます。主人公は、その一人「虎沼天通」を父に持つ「通軒」。
天皇として即位することを目指す父のため、周囲の人々と協力して活動しているつもりでしたが、支援者だと思っていた人々は虎沼天皇の誕生を心から応援していたのではなく、それぞれの利益を追究していただけだということが次第に明らかになっていきます。
自らを天皇家と主張する虎沼一家(とくに父と子)のように、熱中するあまり周囲が見えなくなってしまう人間の愚かさや、混乱期