藤田覚のレビュー一覧
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江戸後期、幕府は財政窮乏化のなか風紀粛清と質素倹約を旨とする天保の改革を断行する。風俗取り締まりのため庶民の娯楽である寄席の撤廃や歌舞伎三座の移転、廃止まで打ち出した老中水野忠邦に対し、真っ向から対立したのが北町奉行の遠山金四郎だった。庶民生活の実情を重視し、厳しい改革に反対しながら骨抜きにした名奉行の論理を明らかにする。(親本は1992年刊、2015年文庫化)
・まえがき
・第一章 遠山の金さん像の虚実
・第二章 繁栄の江戸か寂れた江戸か
・第三章 寄席の撤廃をめぐって
・第四章 芝居所替をめぐって
・第五章 株仲間解散をめぐって
・第六章 床見世の撤廃をめぐって
・第七章 人返しの法をめぐって
・第八章 近世後期の町奉行たち
・第九章 「遠山の金さん」の実像
・むすび
全九章もある学術文庫なのに、容易に読むことが出来た、良書である。従来、遠山の金さんが何をやった人なのかいまいちよくわからなかったが(大岡越前に比べ、これといった実績が見当たらない)、本書を読むと、天保の改革に際し、どの様な観点から、水野忠邦と対立したのかがよくわかる。
すべてに共通することは、江戸の下層民の暮らしをどの様に守るかということであった。寄席や芝居を廃止すれば、庶民は、娯楽を失うだけでなく日々の暮らしの糧を失う。かといって農村に帰っても暮らし成り立たず困窮する。そうなれば、うちこわしにより江戸の治安は乱れ、公儀の威光にさし障る。リアリストの金さんは、老中と対立することとなった。
それにしても、これだけ対立してよく身を全うしたものである(途中、大目付に左遷されたとはいえ町奉行に復帰する)。著者は、将軍の信頼が厚かったことをあげているが、もう少し掘り下げて欲しいところである。 -
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シリーズ日本近世史の最終巻は、藤田覚先生の「幕末から維新へ」。昔、「遠山金四郎の時代」を非常に面白く読んだ記憶があるが、本書も前半の語り口が快調で非常に面白い。その分やや後半が「教科書的」なのだが、その間をつなぐ第3章「近代の芽生え」は教育と思想史に焦点を合わせた思い切った叙述になっていて短いながらも読ませる。近世民衆の地の到達点は、しかし、西洋近代を生み出したようなサイエンスではなかったのだが……。
あと43ページに触れられている水野忠成の貨幣改鋳を「そっちこそ贋金作り」と喝破した贋金づくりのエピソードの元は『藩秘録』でいいのかしらん? -
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ネタバレ<目次>
序章 幕藩体制の核心はインテリジェンスだった!~情報と江戸時代の政治・交通
第1章 将軍直属の「スパイ」がいた!~御庭番の情報収集と幕府政治
第2章 大名と幕臣を監察する将軍の「目」~小人目付の情報収集と幕政の
第3章 「探検家」の真の任務とは?~勘定所普請役の情報収集
第4章 犯罪捜査と経済調査のエキスパート~町奉行所隠密廻り同心の情報収集
第5章 異国船とアヘン戦争、鎖国下の情報戦~オランダ風説書と対外政策
第6章 「敗戦」という不都合な事実の拡散~文化露寇の情報と政治
終章 インテリジェンスの大失策が幕府の命取りに!~天皇・朝廷情報の収集
<内容>
もっと「御庭番」=忍者とかの話かと思った。それよりもきちんと江戸時代の政治史に裏からかかわっていた「情報」について、実例を多くあげながら紹介するものだった。普段の授業の通常の政治史に彩を添える話が出来そうだ。 -
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ネタバレ<目次>
第1章 勘定奉行は幕府の最重要役人
第2章 御家人でも勘定奉行になれる
第3章 財政危機の始まり
第4章 行財政改革の取組み
第5章 新たな経済政策の模索
第6章 深まる財政危機
第7章 財政破綻
<内容>
タイトルは”勘定奉行”だが、江戸時代中~晩期の経済史にもなっている。驚きは、勘定奉行は三奉行の一つなのに、ここだけ世襲の江戸時代において、実務官僚ゆえに、御家人からでも出世できた(いやいや一般の町人クラスからでも)唯一の役職だったということ。
江戸時代の経済の基本は年貢=米だったので、貨幣経済の発達により、早晩破綻する流れだったのだが、勘定奉行はそれに抗うように様々な政策を出したが、抵抗勢力も多く、早急な結果が求められたこともあり、上手くはいかなかった。
新書なので、かなり駆け足な内容だが、ざっくりとはわかる。高校生には厳しいかもしれないが、指導する側の教師が読んで損はないだろう。