(No.12-83) 早川書房 第二回アガサ・クリスティー賞 受賞作品。
この賞は、イギリス アガサ・クリスティー社公認のミステリ賞だそうです。
内容紹介を、表紙裏から転載します。
『1920年代後半の英国。エリオットには秘密があった。
資産家の子息の替え玉として名門大学で学び、目が見えなくなっ
...続きを読むた「血のつながらない妹」のため、実の兄のふりをして通いつめる日々。そんなエリオットの元に、シグモンド・ヴェルティゴという見目麗しき一人の男が現れる。
〈抜け出したくばね、必要なのは概念の改革だよ。エリオット・フォッセー〉
物憂い眩暈。エレガントな悪徳。
高貴な血に潜んでいる病んだ「真実」。精緻な知に彩られた、めくるめく浪漫物語。』
ものすごく密度の高い物語でした。この一冊を読み終わって、なんだか3冊くらい本を読んだような気分になりました。
これって日本の作品だよね?と念を押したくなるほど、書き方が翻訳ものぽかったです。
ですから翻訳ものが好きでない方には積極的にお勧めできないかも・・・。
あちこちに薀蓄が散りばめられているうえ、思いがけない方向に物語が転がって行き、ぼんやり読んでいるとなんだかわからなくなりそうです。
あれ?・・・、と違和感を感じてすぐに出てきた横書きページ。わあ、そうだったんだ!
ゴシック・ロマンであり、オカルトっぽいのに、科学的に原因や解決方法を考えてちゃんとミステリとして納得させてくれたことが、ミステリの賞をとった作品として納得です。
ラストに向けてどんどん緊迫感が増していくので、いろいろ注意して考えて読みたいのに、それどころじゃないよ~って立ち止まる気になれず・・・。後半は一気読みでした。前半はね、立ち止まりつつ、時々前の方を読み直したりしたんだけど。
いや~満足満足!
あえて言えば、これってアガサ・クリスティーじゃないよね。
選者の一人鴻巣友季子さんが選考会に出るとき「この作品は明らかに抜きんでているが、アガサ・クリスティーの名を冠したミステリの賞に適格であるか」を心配されたそうです。結果的にそれは問題ないとなったのだとか。
もし、エドガー・アラン・ポー賞があったら、まさにぴったりだったんだけどな。
早川書房のイメージにぴったりの本で、さすがだわ!と嬉しかったです。