小野善康のレビュー一覧
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管政権の経済政策ブレーンをつとめ、「増税で景気回復!」みたいな主張が切り出して取り上げられて話題になっていたが、もう少し奥があるようなのでとりあえず読んでみる。
流動性選好っぽいのや財政支出重視でケインズ派なのかな?と思ったが、そういう訳でもないらしい。ケインズ派の想定する不況は「短期」の現象だが、こちらは「長期」の不況を想定しているという。さらに乗数効果への批判のところで分かったが、財政支出も増減税もぜーんぶクラウディングアウトしてしまいますよ、という所は新古典派的。けっきょく財政によって創り出される、所得移転以外の効用そのものが問題であり、そこから経済成長・雇用確保ができると。発想の根っ -
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一人のインタビューアが、リフレ反対派の3人に一人づつインタビューをしていくという形式。この点の本は主張がバラバラとアチコにに書かれていてポイントがわかりづらいという特徴がある。
一人目の藻谷浩介氏はリフレ派に否定された大ヒット作『デフレの正体』で言わんとすることを再度主張。数年前に読んだ時には、日本の『現役世代を市場とする商品の供給過剰による値崩れ』の原因は『15歳から64歳までの生産年齢人口の減少』にあるという氏の主張の分かりやすさに大いに納得したものだ。ただその後多くの『リフレ派』に、その主張が経済学的検知から間違っている、『デフレ』の定義を勘違いしている、高齢化が進んでいる他国でもデフ -
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同じ著者の「成熟社会の経済学」と基本的に同じ論旨であるが、こちらは必ずしも成熟社会を前提としていない。という事は需要不足不況は何も成熟社会で欲しいものがなくなったからではなく、人々のマインドセットが悲観的に染まっているからと言う事になる。何しろケインズの時代から需要不足不況(デフレ)はあるというのだから。
こちらの方が先に書かれたものらしいが、どちらかと言えば本書の説明の方がしっくりくる。また本書には安易な不況脱出の処方箋が書かれていないのも好感が持てる。
デフレの根本原因が人々の悲観的なマインドセットにあり、世代が入れ替わらなければマインドが変わらないというのであれば、何をやっても不況脱出は -
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福島第一原発事故以来語られるようになった電力の問題は、
・多少高くても安全なエネルギーが必要だ
・多少危なくても経済的なエネルギーが必要だ
の、二項対立になっているけれど、実はエネルギー転換は必ずしも負担ではないのですよ、という話。
支払う人がいれば、受け取る人がいる。
環境への負担が少ないエネルギーに切り替えるための「経済的負担」は、新たな雇用を創出するものになる。
ゆえに日本経済全体への負担にはならない。
完全雇用の状態だったら人材の取り合いになるけれど、人余りの現状では雇用創出はプラスになるし、雇用が増えれば消費も増える。
誰が払って誰が受け取るかの問題だから、うちの売上という点では損 -
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現在の日本を成熟社会と考え、不況を脱するために従来の発展途上社会とは全く異なる考え方が必要と教えてくれます。
著書では、成熟社会と発展途上社会を区別すべきであり、成熟社会では製品をたくさん作っても、モノが溢れて余っているなかではかえって不況を招くだけだと主張しています。製品をたくさん作って売れる世の中ではないと指摘しています。需要と供給のバランスの視点から、供給過多の現代社会では、新しい価値を見出さないといけないと教えてくれます。
消費者と生産者は表裏一体であり、不況で消費者の買い控えが続けば生産量も増えずに不況に陥ります。結局不況を打破するためには、出口である消費者の購買意欲を高め -
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小野氏の著作として読んだものは、これ3冊目かな。自身独自の思考を「ケインズ」の「一般理論」と論理的に格闘して自らの「不況動学」理論を確立しようという研究的意欲作。小野氏のマクロ経済的姿勢は、非新古典派、非ニューケインズというところだろう。公共投資は、必要ではあるが、価値ある、長い目で見た社会的効率を促進する公共投資は必要だとする。公共投資のケインズ的乗数効果は、論理的にないとする。その点が、ケインズ的政策提案とは、「大きく」異なるところ。で、新古典派、「供給派」の論理の「非」を突いているが、その指摘はあまりに至当であると思う。
が、私目には、著者の説く不況動学がどうも理解できなかった。イン