小野善康のレビュー一覧
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哲学者の萱野稔人氏が金融緩和策に批判的な三人の専門家(藻谷浩介氏、河野龍太郎氏、小野善康氏)と対話形式でのインタビュー内容を文字に起こしたものである。
3人の中でも小野氏の内容が興味深かった。
小野氏の論理展開の大前提は、「お金が究極の欲望の対象になる」ということ。成熟社会では、モノがあふれていて、モノへの欲求がお金への欲求より低くなってしまったとする。
「成熟社会になってもまだまだ人びとにはほしいモノがある」との反論に対しては、
「もっているお金をつぎ込んで、ほしいモノを次々に買うのかと聞いてみると、大概の場合、返ってくる答えはこうです。『いや、お金がもったいないから買わない』
この言葉こ -
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2013年刊行の少し古い本。三人の著名エコノミストがアベノミクスの掲げる金融緩和を真っ向から否定し、その危険性を解く。
自分の理解できる範囲で、何で金融緩和が意味がないかという理由は2点)。
1.日本は人口オーナス期(現役世代が減少して高齢化社会)に入っていて、人口が減っていくところに需要は生じないというもの。需要のないところにお金をジャブジャブ注ぎ込んでもその効果は?
2.人は豊かになっていくとモノではなくお金の所有願望が強くなっていくというもの。ものが溢れている日本にお金をジャブジャブ注ぎ込んでも実際にお金がモノに変わるのか?
2番目については思いあたる節もあり目から鱗。ミニマミスト思考と -
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■生産年齢人口の総人口に占める割合のピークは、日本は1990年頃、アメリカ、アイルランド、スペインは2005年頃、中国は2015年頃。
■中央銀行ファイナンスによる追加財政、すなわちマネタイゼーション戦略は、当初は高めの実質成長率、低いインフレ率、やや高めの名目成長率、低い長期金利、リスク資産価格の上昇が観測され、バブル的な様相が強まる。しかし、その後は、低い実質成長率、高いインフレ率、高めの名目成長率、リスク資産価格の下落が訪れる。
■人は、お金そのものが欲しい。純粋に、今お金があるからあれもこれもと実感できて嬉しい。
■完全失業者は300万人前後。彼らを100万人雇うためには消費税を数パー -
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現代日本のような成熟社会では、人々は既に欲しい物をほとんど手に入れているので、お金をばら撒いても銀行の金庫に積み上がるだけ、との説明はシンプルでわかりやすい。我が身を振り返ってみても、確かにどうしても欲しいものなんてほとんど無い(その割にはお金がウチの金庫にだけ積み上がらないのは何故なんだぜ?)。
経済学を学んだことがないので、著者の言うことを完全には理解できないが、所々に出てくる「お金は増えも減りもしない」という原則が、熱力学の第一法則や質量保存の法則と同じで妙に納得できた。
しかしながら、その処方箋については「そんなにうまく行くかな?」と言うのが正直な感想である。現物支給=期限付きのバウ -
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「成熟社会」ということが、言われている。著者は1980年代から90年代を境に発展途上社会から成熟社会に「大きな変貌」(はじめに i)を遂げたとし、成熟社会を「いますぐ欲しいような物はほとんどすべてそろっています」と整理し、「(需要不足が原因)不況を長期的な現象として捉える必要がある」する。
各章で「発展途上社会から成熟社会」、「財政破綻の常識を覆す」、「金融政策の意義と限界」、「成熟社会の危機にどう対応するか」、「国際化する経済」の順で、解決を生産の効率・安価・輸出増ではなく、需要を変えることに求めている。
国際競争力を高め、国外市場を確保し、外国資産(外貨)を保有する努力は円高を結 -
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ネタバレ高度成長期の日本は、消費者の欲しいものが沢山あり、何でも飛ぶように売れた。一生懸命働けばどんどん豊かになっていく経済のメカニズムがあった。今、日本は成熟社会となり、潜在的供給量は、資本の蓄積や技術の進歩で拡大し、需要を超えてしまった状態となっている。物やサービスが充実し、お金を放棄してでも購入しようというものがない。増産しても売れ残り、効率化を進めても労働力が余り失業が増えるばかりで経済拡大につながっていない。過去の成功体験による発展途上社会を前提にした政策は、結果として、バブル崩壊による不況を20年も継続させている。
成熟社会で必要な戦略は社会的に役立つ分野に政府が支援し雇用を作ること。生 -
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現代日本の経済状況の原因を「生産力過多」と「内需不足」として、税、国債、金融緩和、貿易など、あらゆる方向から検証した本。
国内では、税金だろうが国債だろうがお金は巡るだけで増えも減りもしない。
お金を多く刷ってもお金を使わなければ消費は減らず、景気は良くならない。
輸出をして外需を取り込んでも、その結果として円高になるので限界がある。
一方で、国内で消費活動をすれば、それは売上となり、給与となり、また消費の源泉になる。そうすれば、余った生産力=労働力は活用され、雇用も回復するという。
「生産性の向上」をひたすら追求すべき時代は終わり、「いかに良く消費するか」を目指す時代かもしれない。 -
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ケインズ経済学と新古典派とを比較しながら、ケインズが主張したかった(十分に主張できなかった)経済理論を『不況動学』という視点で展開する。新古典派の主張は、供給サイドが決定されればそれに応じて需要が決まるというものである。すなわち、基本的に非自発的失業のない状態(完全雇用)が実現できている新古典派では、需要不足や需要不足による不況は否定される。しかし、著者は需要不足こそが日本の不況の根本原因だと主張する。
需要不足は、①消費の時間選好と②流動性の罠(貨幣保有願望)に起因する。特に、貨幣保有願望は、貨幣が非常に特殊な財ゆえに起きる貨幣そのものに対する需要であり、「将来に不安を持てば益々貨幣保有欲 -
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ネタバレ[ 内容 ]
長期にわたった景気の低迷に対して、小泉内閣が行った「構造改革」は有効な措置といえるのか。
経済学者間の意見は対立し続け、経済学への信頼までも揺らいでいる。
ケインズは一九三〇年代の世界不況を目の当たりにして主著『雇用・利子および貨幣の一般理論』を執筆した。
本書はその欠陥も明らかにしつつ、ケインズが論証することに失敗した「不況のメカニズム」を提示し、現代の経済政策のあり方を問うものである。
[ 目次 ]
第1章 ケインズ経済学の基本構造(二つの不況観;需要不足のメカニズム ほか)
第2章 失業と需要不足(新古典派経済学の特徴;貯蓄と投資の不一致 ほか)
第3章 利子と貨幣(投資 -
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少し疑問点。著者は「構造改革派が言うように、投入額より小さい価値しかうまないからやるだけ損、ということにはならない。出来たものの価値は加わるから、少しでも役に立つ物やサービスならやった方がよい。」(P73)としているが、減税の乗数効果との比較をしないといけないのではないだろうか?でも減税の方が乗数効果低いのかな?あとそして赤字国債での公共投資は効果が半減するし(マンデルフレミング理論)、そのあたりについての言及も欲しかった。
著者はP148で夕張市を擁護しているが、個人的にそういう側面もあると確かに思った。
ただ、遊園地やらなんやら流石に行き過ぎじゃないかとも思うけれども。(主観ですが) -
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罠、ワナ。
これは捕らえられて、どうにも出来ない状態。経済学的に定義されている言葉は〝流動性の罠“であり、先ずはそれとこの本の金融緩和の罠の違いに戸惑う。ほとんど同じ意味に聞こえるが。
「政策を打っても効かない」状況、逆に「政策が効きすぎて止められない」状況。金利を下げても期待通りの投資や消費が得られず、もはやゼロ金利に近く打つ手がないのが流動性の罠。
金融緩和の罠は、金融緩和をやめようとして金利を上げると、国の借金(国債の利払い)が急増したり株や不動産バブルが崩壊。円高・株安が起きて景気悪化になるなど、やめたくてもやめられないまさに“罠”にハマった状態。どちらかというと、流動性の罠を解 -
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20240621-0707 資本主義の変遷を解明する新しい経済学。本書では、従来の経済学ではうまく説明できない長期停滞や格差拡大という状況について、人々の「資産選考(貨幣選考)」に注目し、経済が豊かになるにつれて人々の興味(欲しいもの)が消費から蓄財(資本形成)に向かい、経済構造が大きく変貌した経緯を説明している。
一国の経済状況を発展段階にある(需要超過の)成長経済と成熟段階にある(消費需要が少なく、資産選好が強い)成熟経済の場合とに分けて考察。成長経済では教育や社会通念としての「節約と勤勉」「画一的な教育」は有効であったが、成熟経済ではそれら、特に前者は景気低迷からの脱出にはマイナスの効 -
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コロナ対策として全員一律に配られた10万円。
ありがたく使わせてもらった一方で、確か直前まではシングル子育て家庭へ30万円支給という話も報道されていたのに、これでよかったのかな、とも思っていて、その疑問に対する一つの答えがあるかも、と思って読みました。
成熟経済下では、成長経済下とは異なり、(政府が裕福な人から赤字国債という名の借金をして)政策でお金を配ったところで、裕福な人は個人名義の資産にするだけで(政府への債権と現金の2重取りですね)、社会経済への効果はほとんど見込めず、政府債務が膨らむだけ、ということ、と理解しました。
政府債務、この調子で大丈夫なのかな?