植村邦彦のレビュー一覧

  • 隠された奴隷制

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    パワーワード溢れる興奮の読書。

    学者や思想家による〝奴隷“の解釈を追いながら、スタートラインから既に生産手段とされたそれを、最終的に現代の労働と重ねていく。徐々に思想にリアリティが増し本の後半で佳境に入るが、それはまるで、思想が本から飛び出て、まさに読み手が奴隷であった事実を突きつけるかのようだからだ。奴隷が自らと重なり、その脱出方法を必死で本の中に探す。

    ジョンロックは自ら奴隷貿易にも出資し、間接的に奴隷を所有していた。社会契約論は、植民地支配を時代背景としている。アダムスミスは奴隷労働は白人労働よりも安上がりだと言う植民地経営の常識を覆す指摘をする。その後、ヘーゲルは主人と奴隷の弁証法

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    2023年05月05日
  • 隠された奴隷制

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    奴隷貿易の時代から奴隷の解放、その結果自由意志を持ったはずの労働者が如何にして搾取される存在となったのかを説き起こします。その結果が「自己責任」の名の下でブラック労働に従事させられる現代労働者。これからどうすべきなのか明確な答えはありませんが労働者一人一人が考えてみる必要はあると思います。

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    2020年01月01日
  • 隠された奴隷制

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    ネタバレ

    この本の「隠された奴隷制」というタイトルは、マルクスの『資本論』の「ヨーロッパにおける賃金労働者の隠された奴隷制は、新世界での文句なしの奴隷制を踏み台として必要としたのである」という文章に由来している。「隠された奴隷制」とは、黒人奴隷の「むき出しの奴隷制」に対して賃労働で働く「自由な労働」を指している。マルクスが何故に自由人の賃金労働を「隠された奴隷制」と呼んだのか。著者は啓蒙思想からアダム・スミス、ヘーゲル、マルクスを経て、新自由主義まで、この「隠された奴隷制」という言葉の謎を解くために奴隷制の思想史を丹念に追っている。
    アダム・スミスもヘーゲルも資本主義経済が発展する中で、今でいうところの

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    2019年11月10日
  • 市民社会とは何か

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    「市民社会」という言葉の系譜を明らかにした本。そしてその系譜をたどる作業により、安易に国家対市民という構図で国家批判を行う「市民社会論」を批判した本でもある。

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    2011年01月15日
  • ルイ・ボナパルトのブリュメール18日[初版]

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    ともかく難しい。というか、この時期(19世紀半ば)のフランスの様子を基礎知識として持っていないとムリ。

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    2025年05月09日
  • 隠された奴隷制

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    マルクスの資本論に書かれていた”隠された奴隷制”とは。
    マルクスの時代と構造的には何も変わっていない現代の資本主義社会。
    そして、その社会は”隠された奴隷制”がなければ成り立たないという現実。
    つまるところ、奴隷制はまだ続いているということを丁寧に解説してくれている。

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    2024年12月04日
  • 隠された奴隷制

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    労働者の賃金は「彼ら自身の維持と再生産が行われる」最低限の水準に保たれているため、彼らは日々の「個人的消費」によって「生活手段をなくしてしまう」。
    つまり彼は、スミスの言う意味で「財産を取得できない人」なので、生活を続けるためには自分の労働力を労働市場で販売し続けることを「強制」されている。


    奴隷が受けるのが暴力的な「直接的強制」だとすれば、「自由な労働者」は雇用されて働く以外選択肢がなく、失業したら生きていけないという経済的な「間接的強制」を受けている。

    マルクスの「経済学批判」の課題とは、資本主義生産様式の構造を解明するにとどまらず、資本主義的生産様式を「公正な」ものとして正当化する

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    2022年06月22日
  • 隠された奴隷制

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    奴隷制から逃れるためには、個人が自分の時間の主人公になること。
    そのための手段として「階級闘争」に勇気をもって挑むことや「労働組合」に参加する、ポールメイソンの言う「協同組合的ネットワーク社会」の構築など様々ある。
    共通して言えるのは他人任せにせずに「主体的に動く」という事と「選択の幅を広げる」ことだと思う。

    資本主義経済から今すぐに脱却することは不可能だが「
    自分の時間を確保する」ことを意識し、時間はかかるかもしれないが徐々に社会主義的な方面へ関わっていくのが良いのかもしれない。

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    2021年07月11日
  • ルイ・ボナパルトのブリュメール18日[初版]

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    カール・マルクス(1818-1883)による19世紀フランスの階級闘争に関する同時代批評、1852年初版。1848年の二月革命に始まる第二共和制が、如何にして1851年のルイ・ボナパルトのクーデタによる大統領独裁と第二帝政を帰結することになってしまったのか、を論じる。19世紀フランス政治史について相当程度精通していないと、マルクスの文意を正確に捉えることは難しいが、巻末の年表(「政治党派と階級的基盤」「時期区分と階級闘争の構図」)が補助として役に立つ。

    刻々と変化する情勢の中で繰り広げられる各階級の政治闘争の錯綜した様態が、マルクスの一種異様な情念とともに描かれており、それがいっそう本書を読

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    2020年05月30日
  • 隠された奴隷制

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    近代資本主義における奴隷制について紐解く一冊。

    明確な結論はなく難しく感じたが、勉強にはなった。

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    2019年08月13日
  • ルイ・ボナパルトのブリュメール18日[初版]

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    読む前にWikiのナポレオン三世の項目は読んで、一通り第二共和政から第二帝政にかけてのフランスの状況は復習していおいた方がいいと思います。当時の状況がある程度把握できていないと読むのがつらい。

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    2019年04月26日
  • 市民社会とは何か

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    仕事において『企業市民』のような言葉を使うことも多く、使っていながらもかっちりとした理解が出ていないフワフワとした違和感を感じており、『市民社会』や『市民』の意味の変遷について、アリストテレスから、アダムスミス、ルソー、ヘーゲル、マルクスと歴史を追って外観いただいた本書は、自分の理解に大変役立ちました。八章での現代日本における議論は、日常に即して考えられて分かりやすく、終章のサマリーも有り難かったです。
    一番最後は少し、急ぎすぎた感じもしましたが。。。

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    2013年01月05日
  • 市民社会とは何か

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    「市民社会」の意味することをその使われてきたコンテクストから、丁寧に追跡している。
    筆者の主張は、終章で簡潔に語られる。
    「市民社会=市民団体」(日本での捉えられ方)論が期待をかけられるには2つの社会的根拠があると指摘する。
    一つは、政府は頼りにならないという国民の政治的感覚、二つ目は資本主義に対する労働階級の社会的無力さ、という。
    前者の問題について、代議制の政治制度の欠陥を補完するために、民意が反映される制度的回路の実現が必要と主張する。後者の問題については、新自由主義の構造改革のもとで行き過ぎた企業の営利活動をコントロールする必要があるが、それをできるのは「市民社会」でなく国家だと断言す

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    2011年10月08日
  • 市民社会とは何か

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    市民社会という言葉はアリストテレ スの「政治学」で国家共同体を意味す る。スミスは文明した商業主義と意味 を変え、それを市民社会と定義したの はヘーゲルである。さらに現代では違った意味を持つ。多義性を孕んだ市民社会という言葉は何かを歴史的経緯から論ずる。

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    2011年09月23日
  • ルイ・ボナパルトのブリュメール18日[初版]

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    これも政治学のゼミで読んだものです。
    今まで読んだ本の中で1位か2位を争うぐらい
    難しい本でした…読むのに本当に一苦労しました(・ω・;)

    で、そんな難しい本なのに
    この本の3~5章の内容を
    まとめて発表する担当になってしまって。
    もう本当に泣きそうなぐらい大変でしたが
    逆に深く読むことによって内容がわかるようになり、
    その後はとても楽しく読むことができました。

    一番有名な文章はこちら。
    「歴史は繰り返す。一度は偉大な悲劇として。
    もう一度はみじめな笑劇として。」
    この本はその「偉大な悲劇」である
    ナポレオンの登場と、「みじめな笑劇」である
    ボナパルトの登場を比較しながら
    ボナパルトの行っ

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    2009年12月24日
  • ルイ・ボナパルトのブリュメール18日[初版]

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    岩波文庫で、二度読んだ。
    平凡社で新刊が出たのでこちらも購入して読んだ。
    ということは、都合3回読んだことになる。

    ここに描かれるルイ•ボナパルトは階級闘争の中で偶々祭り上げられただけの平凡で馬鹿な男にすぎない。
    マルクスの興味は、歴史上の登場人物には向かはない。
    彼の関心は、民主主義を崩壊させた階級闘争過程にしかないからだ。
    ルイ•ボナパルトという、下手をしたら江戸幕府を牛耳ってフランス帝国による明治維新を断行したかもしれない怪物に焦点を当てたのが、鹿島茂の怪帝ナポレオンだ。
    この二著はセットにして読まなければならない。

    1848年の革命から、1851年のルイ•ナポレオンによるクーデタま

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    2025年03月12日
  • 隠された奴隷制

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    かつての奴隷度今の労働者にどんな違いがあるのって問う本。正直身も蓋もない話。

    アダムスミスのころの社会における奴隷感をはじめ奴隷の状況や奴隷について書かれた思想など広範囲にわたる側面から「奴隷とは」と論じられるのを読むと、改めて奴隷とは自由とは労働とはについて考えたくなる内容だった。

    面白いのは奴隷労働が真っ盛りだった当時、”自由”な市民よりも快適な生活環境の奴隷が多くいたりした状況でも「自由」があるから市民は奴隷よりも良い環境にいるといった考えが博愛的とされる人の思想だったりすることで、価値観や物の捉え方考え方は同じ言葉であっても時代が変わると変わったりすることに注意を払わないといけない

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    2020年10月12日
  • 隠された奴隷制

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    端的に言えば、労働に対する賃金が等価より低いとき(ブラックなど)は奴隷とみなせるというような話。
    自由に職業を選択したようでそれは奴隷状態。
    ただ、労働に対する評価、賃金の解釈は人それぞれ。人に欲がある以上は、完全な等価は実現不可能である。
    共産主義が実現しないのと同じになってしまう。
    これからはAIなど人が介在しないシステムを作っていくしかなさそう。
    (AIも全く人が介在しないということはないけど。)

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    2020年07月27日
  • 隠された奴隷制

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    新大陸における黒人奴隷によるプランテーション経営の成功が、イギリスひいては先進諸国の大規模工場での賃金労働につながった。そういう意味では賃金労働者は隠された奴隷なのだ・・・と言えなくもない。

    しかし、そこから一気に新自由主義は資本家階級によ(隠された)奴隷制の強化とつなぐのはあまりにも短絡的ではないか。工業化社会以降は資本と労働はときには闘争状態、ときには協力してここまでやってきた。いたずらに「資本家VS奴隷」を強調するのはマルクス・レーニン主義あるいは全共闘的。共産主義国家の失敗や国内であれば革新政党の弱体化など要素はあまりにも多い。

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    2020年01月14日