伊藤剛のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
内容としては少々物足りないものの、エネルギーにまつわる産業の現状及び将来図を描いた良書である。特に、kWh・kW・ΔkW価値(DER化に伴い、kWとΔkWh価値向上)や託送料金に関するデススパイラル問題、電気自動車の市場参入等は分かりやすくまとめられており、なるほどと感じた。需要家目線では普段気にすることはほとんどないが、日本における電力制度設計は複雑であり、これらの課題に対応すべく柔軟に変更していく必要があるのだろう。
ただし、太陽光や風力発電等の再生可能エネルギーや蓄電池の指数関数的価格破壊が起こりうる、そうなった場合には冒頭のストーリーのように電気代という概念がなくなる、といった記載があ -
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ネタバレ電力ビジネスの今と未来について書いた本。素人にも分かりやすい言葉で書かれている上に、内容がコンパクトにまとまっているので時間をかけずに読むことができた。
原発事故でも感じたが、電気は私たちにとって当たり前にある一方で、電力ビジネスは想像以上に複雑である。電気を使うことイコール本書で言うところのKWh価値を買うと一般的には思われているが、KW価値、ΔKW価値というユニバーサルサービス的なものがあっての電力市場だということはほとんどの人は知らないのではないだろうか。そうでなければこんな無邪気にSDGsとか言っていられないだろう。
現状KW価値、ΔKW価値をKWhに対する料金で賄っているというこ -
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Posted by ブクログ
ネタバレ【内容】
エネルギー業界が直面している、あるいは今後直面するであろう変化について「5つのD」というキーワードでまとめられており、それぞれのDに対する問題点やそれに対する筆者の考え(現状の分析や解決策等)が記載されている。
5つのD
1. Depopulation(人口減少)
2. Decarbonization(脱炭素化)
3. Decentralization(分散化)
4. Deregulation (自由化)
5. Digitalization (デジタル化)
【感想】
「5つのD」というキャッチーなフレーズでエネルギー問題が簡潔に述べられており、今後、日本はどのように変 -
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エネルギー問題の専門家達が書いた、2050年時点でのエネルギー産業の未来予測とそこに至るベストシナリオ、ホラーシナリオ。最も印象に残ったのは、良い方のシナリオでいけば、2050年までにはエネルギー(特に電力)は、太陽光等の新エネにより、無尽蔵の供給を得るようになる、というところ。これはブロードバンド時代直前に「これからはジャブジャブ・インターネットになる!」と村井先生を中心として提唱していたあの頃のインターネット業界と重なるものを感じたこと。
ジャブジャブ電力が到来すれば、いまのあらゆる産業や社会は大変革を遂げると思う。機会が莫大に生じる。ベストシナリオだけを信じて今からいろいろ仕掛けたいな -
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東京電力の人が書いている。
社会課題としてエネルギー問題を位置づけ、「地域内での需給バランス」「電気の利用促進(電化)」「水素利用」を説く。
電気料金はUX化される。
電化のための制度課題として、「省エネ法の問題点:1979年制定で対象が化石燃料にフォーカスされているため、需要家が系統から買うとまるっと火力平均係数が課されるので化石燃料を使い続ける→電化が進まない。」「高度化法の問題点:小売電気事業者に2030年46%減の数値での再エネ化の高すぎるハードルのため、パーセントを守るために他エネルギー(化石)を売るインセンティブになる。」を挙げている。
kWh市場における供給ステークホルダ不足での -
Posted by ブクログ
社会全体がカーボンニュートラルというキーワードに注目し、企業は何をすべきを模索している。しかし、実際に日本がどう変わっていくか、変わるべきかは欧米の判断や世界情勢が目まぐるしく変わる中では、不透明だ。
欧州の原子力容認。LNGを経てからアンモニアや水素に移行するモデル、ウクライナ問題による影響はどうなるか。この本は、もはや古い。古いが、基礎的な勉強にはなる。グレー水素、ブルー水素、グリーン水素。こうした基本から学べる。
太陽光、洋上風力、原子力。EV車を蓄電に活用するインフラ整備。キーワードだけ並べた所で学びにはならないが、しかし、このキーワードに繋がる理屈や周辺知識の裾野が、読後に少しは