相倉久人のレビュー一覧
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これは本当に良書。今までジャズを系統的に勉強しようと手に取った数々の類書の、なんとわかり辛かったことがむしろ露見してしまった。金返せと言いたい。
こんなに薄くて言葉も平易なのに長年喉につかえていた、特に用語の理解があっという間に進んだ。歴史が直線的ではなく、行きつ戻りつ広がりつつ狭まりつつ真似して逆らって出来ていくものだという至極当たり手法で教えてくれる。
そして当然公民権運動やポストモダンの興隆など、実社会との対比が不可欠で、だがそれすなわち膨大な文章量もどうしても強いられる。そこをミニマムな必要最低限で記述してあるため、却ってわかりやすくなっている。
今では本書に記述あるそれこそ歴史的 -
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【歴史をさかのぼっていって、いつかどこかで創世記のジャズ、一〇〇年まえのニューオリンズ・スタイルにたどりつけば、それは「ジャズ」なのです。つまり、ジャズの定義はそうした歴史とのからみでしか成立しないということです】(文中より引用)
誰もがその単語を聞いたことがあり、同時にその言葉が指し示す音楽について何となくイメージすることができる「ジャズ」。ではその「ジャズ」とはいったい何なのかについて、歴史と共に探求していく作品です。著者は、音楽評論家として知られた相倉久人。
肩の力を抜いた表現でジャズについてわかりやすく解説してくれているため、演奏者や楽曲名について詳しくない人が手に取る上でも最適な -
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実際に会った相倉さんはとっても穏やかで且つかっこいいんだけど、
『至高の日本ジャズ全史』を読んでみたらその凄まじい人生にびっくり。
唐十郎に「相倉さんはいってみれば『触媒』のような人間」といい当てられたそうで、少しでも接してみるとそんな大きな受け皿を持った素敵な方だとすぐに感じた。
この新書のどこの章も勉強になった。章ごとに参考音源の図版も載っていて古いものばかりで興味深い。
今まで、ジャズというものをどうとらえたらいいのか分からなかった
けれど、「ああ! こういうことか!」と突き抜ける箇所がたくさんあった。
それと、相倉哲学がものすごく納得いくものばかりで私がずっと感じてきたことが、文章に -
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『ジャズの歴史』
ジャズの歴史について、南部奴隷の時代から歴史的な事象や当時のスーパースターに絡めてストーリーを語る本。ジャズ喫茶でジャズに詳しいおじさんが、延々と話しているイメージ。
個人的に面白かったのは、ジャズの文化はそれ即ちアメリカの歴史でもあるということ。
ジャズの起源という観点では、アフリカン・アメリカンが奴隷制度の下に南部アメリカでコミュニティを形成する中で、ある種のクレオール文化的に生まれたのがジャズである。
南北戦争で北軍が勝利した際に、奴隷から解放された多くの黒人が、南部から引き揚げたマーチ隊が質屋に売り払った楽器を手に取り、土着的な音楽から、ある種の編成的な規律を持った -
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本書のなかで相倉氏が「(ジャズは)『分かる』『分からない』から入ろうとする人には楽しめない音楽」だと言っているが、私はまさにそれ。スタンダードナンバーにはいいなあと思う曲があるけれど(「テイクファイブ」なんか実にかっこいいと思う)、フリージャズとかは全然「分からない」。
だから、お二人の話がどんどん進んでいって、第Ⅲ章第Ⅳ章あたりで「ジャズという表現」についての突っ込んだ話題に入っていくと、ほとんどチンプンカンプン、ああもったいない、これがわかればさぞ面白かろうにと残念至極であった。
しかしまあ、半ば過ぎまでは、主に山下洋輔の歩みを相倉氏がきくという感じの内容で、ここが実に楽しい。山下氏の -
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[ 内容 ]
書斎のジャズ、酒場のジャズ、演じるジャズに語るジャズ―ジャズって何だ?百人いれば百通りのとらえ方があり、定義するのも難しい。
奴隷制度から禁酒法、二度の大戦、黒人運動、ベトナム戦争、そしてポスト・モダン―。
誕生からほぼ一世紀、アメリカ現代史とともに、ジャズは人種、文化の衝突と融合のなかで、自在にその姿かたちを変えてきた。
ジャズ評論界の第一人者による、ジャズ入門書の決定版。
[ 目次 ]
ジャズって何だ?
ジャズ誕生への道のり
ニューオリンズからシカゴへ
暗黒街と「ジャズ・エイジ」
スウィング時代とカンザス・シティー
ビ・バップからクールへ
ウェストコーストとハード・バップ
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ネタバレ山下 洋輔(1942年2月26日 - )は、日本のジャズピアニスト、作曲家、エッセイスト、作家。長くフリージャズピアニストとしてひじで鍵盤を鳴らすなど、フリージャズならではの奏法で演奏していたが、近年はオーソドックスな奏法になりつつある。(ウィキペディア)
破天荒な演奏スタイルで有名なので、もっと弾けたキャラだと勝手に思い込んでいましたが、本書を読む限り、音楽に対しては真摯で理論派、人柄や受答えも誠実なのが意外でした。
日本のジャズ黎明期を走り抜けた山下洋輔との対談という形で、音楽評論家の相倉久人が突っ込んで行く。本書は、2017年発行だが、2015年に相倉が亡くなったので、彼への追悼とい