吉田恒雄のレビュー一覧
-
Posted by ブクログ
元刑事と少女の凸凹コンビにほっこり… 独特で稀有な展開に目ん玉飛び出るミステリー #アンジェリック
■あらすじ
入院中の元刑事タイユフェールが目覚めると、少女ルイーズが目の前に現れる。彼女の母親、バレエ団の元トップダンサーであるステラが自宅のアパートから転落死してしまったというのだ。
ステラが殺害されたと信じているルイーズは、タイユフェールに捜査を依頼する。元同僚に聞くと単なる事故死と思われたが、調査を進めていくうちに…
■きっと読みたくなるレビュー
フランスの人気作家、いつもヘンテコなミステリーを楽しませてくれるギヨーム・ミュッソ。彼の新作『アンジェリック』も、一筋縄ではいかない稀有な作品でした。
ストーリーとしては、母の不審死を疑う娘が元刑事に再調査を依頼するといった私立探偵小説。堅物の元刑事と無邪気な少女のバディものとして読ませるのかなーと思いきや、独特に展開に驚愕ですよ。さすがはミュッソ、こんな筋で読ませる作家は世界中どこを探してもいないよね。
まずタイユフェールとルイーズの凸凹コンビが最高。少しくらい仲良くしなさいよって感じなんだけど、やりとりが微笑ましいんだよね。ユーモアあふれる会話も多くて読んでて楽しい。
またタイユフェールが嫌いな人への対応が酷い、めちゃくちゃ口が悪いのよ。21世紀とは思えないほどの気持ちいいくらいの罵詈雑言で爆笑しましたね。
ちなみに私のイチ推しのキャラはロミュアルド、ひきこもりの兄ちゃん。怪しい奴なんですが、後半に入ると変人ぶりがさらにパワーアップ。でも人間身もすごく感じられる奴でなんか好き。
さて本作のメインプロットなんですが… あまり詳しく言えません。中盤以降も様々な登場人物が出てくることで、展開の切り口も変わってくる。そして人間の企みや業が支配していくことで、この物語の本質が浮き彫りになってくるのです。
さらに後半にはいるとさらに何じゃコレと目ん玉飛び出る展開、決して単純には読ませてくれません。この作品でのキーマンであるタイユフェールの元恋人レナが絡んでくるんですが… まさかこんなお話だとは思っていませんでした。
ユニークで深みのあるミステリー、楽しませていただきました!
■ぜっさん推しポイント
最近、これまでたくさんの人たちに支えられて生きていたなーと思うことが多い。自分ひとりの力じゃ大したことはできないけれど、家族や友人、同僚たちがいるからこそ今の自分がある。
特に年齢を重ねてくると、自分の価値観ややり方を変えられなくなってしまう。こういう時こそ、近くにいる人の力を借りることで成長ができるんですよね。本作でいろんな人間が出てきますが、主人公のタイユフェールには、それがしっかりできたのが幸運なんだと思いました。 -
Posted by ブクログ
「ピエール・ルメートル」の長篇ミステリ作品『死のドレスを花婿に(原題:Robe de marie)』を読みました。
「P・J・ランベール」の『カタコンベの復讐者』に続き、フランスのミステリ作品… 「ピエール・ルメートル」の作品は、2月に読んだ『その女アレックス』以来ですね。
-----story-------------
『その女アレックス』の原点となる恐怖のイヤミス
その〈偽装〉が「ソフィー」の運命を変える。
フランス産、恐怖の婚活サスペンス。
悪夢に苦しめられるのが怖いから、眠らない。
何でも忘れてしまうから、行動を逐一メモにとる。
それでも眠ってしまうと、死者たちが訪れる。
「ソフィー」の人生は、死と血、涙ばかりだ。
でも、ほんの一年前まで、彼女は有能なキャリアウーマンだった。
破滅への道は、ちょっとしたことから始った。
そしていつしか、「ソフィー」のまわりに死体が転がりはじめたのだった。
でも彼女には、天性の知能と強い生命力が備わっていたのだ。
自ら仕掛けた偽装結婚によって、新たな道を切り開いていくや、ついには、自分を取り巻く恐るべき真実に突き当たっていくのであった……。
歪んだ行為への、正しい対応が生むカタルシス、「ヒッチコック」も驚くであろう斬新な四部構成で読む、脅威のサイコサスペンス。
2009年度フランス国鉄ミステリ文学賞惜しくも次点。
「信田さよ子さん」(『母が重くてたまらない』著者・臨床心理士)推薦!
完全に人を所有するための計画は果たして成功するのか?
男女二人の目を通した見事な構成が残酷で美しい結末を生む。
-----------------------
『その女アレックス』と同様にテンポ良く愉しめる作品でしたね… 面白かったです、、、
結果的には『その女ソフィー』的な作品でした… 第一部は「ソフィー」の視点、第二部は「フランツ」の視点、そして、第三部と第四部は二人の視点が切り替わりながら、主導権が「フランツ」から「ソフィー」に移っていく様が愉しめました。
「ピエール・ルメートル」って、巧いなぁ… と思いますね。
■ソフィー
■フランツ
■フランツとソフィー
■ソフィーとフランツ
■訳者あとがき 吉田恒雄
■解説 千街晶之
第一部は「ソフィー・デュゲ」という女性の行動を追いながら進行… 順風満帆の人生を送っていた筈の彼女は、いつしか記憶障害に悩まされるようになり、日常の細々とした記憶が失われることが度重なり、苦しみに満ちた日々を送っていた彼女が、ようやくありついたのはベビーシッターの仕事、、、
6歳の「レオ」の面倒を見ていたが、ある日、疲れ果てて眠りに落ちた彼女が目を覚ますと、そこには「レオ」の他殺死体があった… 誰もアパートに出入りした形跡がなく、犯人は「ソフィー」しかあり得ない。
しかも凶器は彼女自身のスニーカーの靴紐… 無意識のうちに、自分は人を殺してしまったのだろうか、、、
窮地に陥った「ソフィー」の逃亡生活がその日から始まる… 夫と母は既に死んでおり、唯一の肉親の父にもそう簡単に連絡を取るわけにもいかない。
「ソフィー」は身元を偽りながら警察から逃げ続けるが… 彼女の行く先々に、次々と無残な死体が転がるのだった、、、
彼女の曖昧な記憶には、「ハンドルに覆いかぶさった血まみれの夫の身体」、「階段の踊り場から義母の背中を押し飛ばした」等々、不穏な過去の断片的イメージが付きまとう… 「ソフィー」は無意識のうちに凶行を重ねる殺人鬼で、自分が殺人を犯したことすら、そう都合良く忘れてしまうものだろうか。
読む側は、彼女の精神が狂気と正気のどちらに傾いているのか判断がつなかい状態で物語は第二部へ… 第二部では「フランツ・ベルグ」という男性の行動が判明することにより、「ソフィー」の行動は「フランツ」により巧みに仕組まれた謀略だったことが徐々に判明、、、
そして、第三部では「フランツ」が主導権を握っているものの、「ソフィー」が次第に真実に気付き、第四部では立場が逆転、、、
天国から地獄へ、地獄から天国へと互いの境遇が乱高下する展開が愉しめましたね… ホントに悪を描くのが巧い!『その女アレックス』の「アレックス」と同様に、本作では「ソフィー」の生き方、そして、その描き方が抜群に巧いですよねぇ。
眼には眼を、歯には歯を… やられたら、やり返す的な展開は、道徳的には受け入れられないと思いつつ、物語だと割り切ってしまえば面白いんだよなぁ、、、
『その女アレックス』との共通点もありつつ、本作の方が、過激な残虐な描写が抑えられているので、読みやすかったですね。
意外な展開と、倫理観を破壊されてしまいそうな行動… これが魅力ですね。
以下、主な登場人物です。
「ソフィー・デュゲ」
ベビーシッター。別名マリアンヌ・ルブラン
「ヴァンサン・デュゲ」
ソフィーの夫。研究者
「パトリック・オーヴェルネ」
ソフィーの父。建築家
「ヴァレリー・ジュルダン」
ソフィーの親友。リヨン在住
「レオ」
ソフィーが世話する男児
「クリスチーヌ・ジェルヴェ」
レオの母
「ヴェロニック・ファーブル」
翻訳家
「アンドレー」
オークション会社社員
「フランツ・ベルグ」
? -
Posted by ブクログ
フランスの床屋にやってきた空港管制官が話し始めた。空港にビキニのプロヴィダンス・デュポアがやってきて「これから飛ぶから離陸許可がほしい」。プロヴィダンスはモロッコで重病でずっと入院している少女ザヘラを引き取り、フランスで手術を受ける予定だった。プロヴィダンスは、飛行機を使わずに自ら飛ぶと言う。
『IKEAのタンス』の作家の2作目。管制官の伝聞から何が起こっているのかよくわからないまま進んでいき、結構速いうちに「はい、おわり」と終わろうとして、おいおいおい、となる。
プロヴィダンスは火山の爆発で飛ばない飛行機に苛立ち、パリ中を走り回って飛行術を習得するために奔走する。『IKEAのタンス』と同様に、昔ながらの冒険活劇に、フランスの国柄なのか、この作家独特なのかわからんが、章が始まってしばらくのデタラメの羅列を意味がわからなくてもなんとなく楽しむというタイプの話。
ただまあ、前作に比べると途中で展開がネタが切れた感じで、無理やりバッサと切ってみたりするし、最後に至ってはすべてをひっくり返すあたりはいかがなものか。
まあ、こういうデタラメを書ける日本の作家って意外に少ないし、そもそも編集が許さないんだろうなというところは残念だが、普通に2作目の呪縛のようなものに引っかかってしまっているので、3作目以降に期待したい。しかし、もう翻訳は全然出せない時代になったっぽいからもう無理かも。 -
Posted by ブクログ
過去に戻り人生の岐路を修正出来るなら、何を選択するだろうと自問しながら読んだ。60才で末期癌の医師エリオットはカンボジアの村の老人から貰った過去を訪れられる薬で70年代に戻り、30才で亡くなったイレナの命を救うことを選択する。タイムトラベルで過去を修正することにより発生するイレナと娘のアンジーの愛と死のタイムパラドックスに対する二人のエリオットのジレンマが描かれる。プロットには独創性を見出せなかったが、愛と友情のストーリーとして読めば心に響く一冊でした。
各章の冒頭の引用文に頷かされる。
If time travel is possible, where are the tourists from the future? 時を旅することが不可能であるという証拠は、未来からの団体旅行客が押し寄せてこないことでも明らかだ。スティーヴン・ホーキング
Keep your dreams, you never know when you might. 夢はとっておきたまえ。どんなときにそれが必要になるか、けっして分からないのだから。カルロス・ルイス・サフォン