木内達朗のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
ネタバレ■読んだ動機
この作者さんの他の本を読んで大変良かったので、別の評判良い本を手に取ってみた。
■あらすじ
主人公、井川 幹太が住む筧ハイツ102号室。
新卒で入った会社は合わずに2年で辞めて。次の会社も半年で辞めた。今はコンビニでバイトしている。
上の階202号室のドタドタがうるさいと思うが、文句が言えない。
そうこうしていると、上の回の住人、戸田さんと出会う。
戸田さんは性格は悪くないが、ややガサツな人。
そんな戸田家との交流や、同級生との出会いの中での日々が描かれている。
■感想
今まで「ひと」「まち」「いえ」のシリーズを読んできましたが、この作品でも江戸川区、筧ハイツ、あの河川敷が出てきます。そしてやっぱり主人公はいい人で。
この作者が描く主人公はいつも好きになります。
昨今の「好きを仕事に」という風潮もある中。
パンが好きだから、1社目のパン屋さんの会社を入るも営業が合わず2年で辞めて。
2社目には、好きなものじゃない方がいいと考え家電量販店に入社するも半年で辞めて。焦ってもいいことないと、今はコンビニでバイト。
隣の部屋の住人は、夢を追って役者をやっていたり。書評家をやっていたり。
主人公はやりたいことを探しているわけではないが、そんな出会いからも就きたい仕事のヒントに触れていたのかもしれない。
最後はパン屋さんで、パンを作りたいと思い、パン屋さんへ応募。
「受かりたい。そう思った。でも落ちても大丈夫。そう思えた。」という文、なんだか感動した。
■以下よかった箇所のまとめ
下の階の住人が、何も言ってこないからいいや、などと考えてはいけない。何も言ってこないからうるさくはないのだろう、となどと都合よく考えては絶対にいけない。
何も言わないお客さんも、何も感じてないわけではない。何も言わない一階の住人が2階の足音をうるさいと感じてないわけではないのと同じだ。
やりたいことが特別である必要はないんだよなぁ、そうなるわけもないよなぁって。
やりたいことがないのはダメなの思ってた。
やりたいことが何もない自分はダメだって思っちゃう
それは要するに、人から見て特別なことをやりたいと思ってなきゃダメだってことなの。でも、そうじゃなくていいかもって思った。
受かりたい。そう思った。でも落ちても大丈夫。そう思えた。 -
Posted by ブクログ
久しぶりに読んだ小野寺さんにほっこりする。川べりの土手に建つベルジュ江戸川に暮らす住人たちの話が4つ紡がれていた。マッチングアプリで知り合った2人目と別れたばかりの佐野朋香。妻とも娘ともうまくいかず、仕事も行き詰まる片山達児。むかしの仲間を若くして喪った青井千草。後輩の陰口にショックを受けて会社を辞め、半年が過ぎた新川剣矢。
若いって良いなぁ、羨ましさが先に立つのは年齢のせいだろうか。
4人の中で印象に残ったのは千草だった。千草は10年前に銀座で一緒に働いていた仲間・琴奈が、5年前に亡くなっていたことを人づてに知る。驚きと喪失感に揺れながら、千草は琴奈の実家である美容院を訪ね、琴奈が店長と不倫していて自ら命を絶っていたことを知る。「人は皆自分の人生では主役だが、他人の人生では脇役にすぎない」と、千草はかつて琴奈に語っていた。自分が誰かの人生に深く関わっていると思っていても、実際にはその人の人生の一部に過ぎない。同感です。 -
Posted by ブクログ
ネタバレたとえ今は住所を持たない番外地のような定まらない自分であったしても、「自分の居場所は必ずある」と優しく教えてくれた作品。本作もまた馴染みのある土地で、共感しながら読んでしまった。
篠崎駅近くのベルジュ江戸川に住む4人のお話。マッチングアプリで別れた後ふと妙見島に行く女性だったり、妻と娘と折り合いが悪いなかで異動や今後の生き方に立ち止まる男性だったり、昔の亡くした知り合いを懐古する女性だったり、会社を退職したものの次の一歩を踏み出せない男性だったり…人生の「番外地」にいる人物が様々登場する。
特に印象深い話は、3つ目の『東京高速道路 ベルジュ江戸川二〇二号室 青井千草』の話。元アルバイト先の社員である琴ちゃんの早逝を知り、千草はたくさんの考えを巡らす。琴ちゃんは生きることにとても不器用で、優しすぎて…読んでいてとても辛くなってしまった。そんな琴ちゃんを思い続けた果てに千草は、琴ちゃんの実家の美容院を訪れることに…。どんなに辛くても琴ちゃんには生きていてほしかった。この世界に必要な存在だった。琴ちゃんにも、1歩を踏み出せるまで番外地で休んでいてほしかった。その思わずにはいられない切ないラストだったな。
みんながみんな住所のあるところで、歩いている訳ではない。たまには住所のないところだって、人生の脇道に逸れたって、いつかは住所のある自分の居場所を見つけることができる。自分のペースでゆっくりゆっくり歩いていけばいいんだよと、またもや小野寺先生から背中を押してもらえた…
私も自分の居場所が分からなくなったら、自分なりの番外地(心の隙間)を作って、そこで一休みしてから、マイペースに生きていきたいと思う。
★人生の配役(『東京高速道路 ベルジュ江戸川二〇二号室 青井千草』より)
「人は皆主役にして脇役だ。自分の人生においては主役で、他者の人生においては脇役。世間では主役に見える人も、ただそう見えるだけ。他者の人生で主役にはなれない。主役に見える人、という脇役でしかない。」 -
Posted by ブクログ
東京と千葉の境にある、駅徒歩二十分のアパート、ベルジュ江戸川の四室に住む人たちの日常。201号室の女は、マッチングアプリで二度彼氏が出来、二度、失敗する。夫婦仲がうまくいかず、中学生の娘にも疎まれている102号室の男は、会社でも嫌われていて遠方への異動を言い渡される。202号室の女は、学生時代の友人が五年前に自殺していたことを知り、101号室の男は、年度末で退職したものの、次に進めず夏の終わりを迎える。出くわしたら挨拶はするが、ほとんど顔も見ず行き過ぎるだけの関係。最後の話で一堂に会する。が、特に何も起こらない。
ホームセンターだったり、飲食店だったり、食品メーカーだったり、ごくごく普通の会社に勤め、ごくごく普通の人生を、誠実に生きているたちを掬い上げるのが、小野寺さんは本当に上手だと思う。何が起こるというわけでもないけれど、みんな、誰もが抱くような悩みを、ああでもないこうでもないと考え、なんとか生きている。上を目指したり、成功したり、そういうのはなく、ただ生きるだけで、大仕事なのだなあと思う。そして人を生かすのは人だということを、思い知る。
ラブホテルと会社と工場がある、川の中の島、妙見島が気になって、いろいろ検索してしまった。