行動経済学の教科書的な本。様々な理論が紹介されていて面白かった。
・行動経済学はナッジ=ある行動をそっと促す事。強制や罰則ではなく自発的に行動を選択させる。知らないうちに無意識に誘導されている事も。
・選択肢が多すぎると決断疲れが起き、決定麻痺に陥る。相手に決断させるには3-5個程度の選択肢から選べるようにする。またおすすめや基本セットなどを目立つように提示する。
・アンカリング効果=アンカー(いかり)の位置により情報の判断がゆがむこと。遊園地の待ち時間は表示時間の方が実際より長い→短く感じる。値引き前の価格があると安く感じる。嫉妬の原因は基準のズレ。アンカーは自分の中に下ろす。
・コントロール幻想=実際には自分の影響ではないものにも影響を与えられると思い込むこと。自分が観戦した試合は負ける、晴れ男、など。自分がコントロールできていると思うと精神や身体にプラス効果をもたらす。自分だけでコントロールできるものを大事にする。指示する場合は命令ではなく自分で選んだり考えたりさせる。
コントロール幻想が作用しやすくなる要因
①選択機会=自分で選ぶ
②関与=自分で手に入れる
③親近性=自分に近い
④競争=自分でよく考えた
・ザイオンス効果。単純接触効果=接触回数が増えるほど親しみや好感度が高くなる。月一で三回より三日連続の方が好意を持ちやすい。同じメニューを繰り返し食べると好物になる(おふくろの味)。
接触を好意につなげるコツ
①ザイオンス効果は無限ではなくピークが存在する。接触が多すぎるとうんざりする。
②第一印象が悪い場合は効果を発揮しにくい。
③間を空けすぎてはダメ
更に相手に受け身ではなく自ら関りを持たせると効果的。共同作業、何かを書かせる、選ばせる、等。
セブンヒッツ効果=広告業界では、CMに7回接触すると認知度・購入率が上がると言われる。
・スポットライト効果=自分は注目されていると錯覚する
あなたに注目している、あなたは特別、と思わせると好感度が高くなる。
感謝を伝えることは注目している、というサインになる。
逆に、自分は正当に評価されていないと感じると不満や怒りを感じる。
スノッブ効果=他人が持たない希少なものに価値を感じる
ヴェブレン効果=他人に見せびらかすことに価値を感じる
・ピークエンド効果=絶頂期と終わりだけが印象に残りやすい
割引よりもポイント還元の方が満足度は高くなる。買う時にピークを迎え、その後も次の買い物を考える楽しみが残る。
・参照点依存性=物事の価値を絶対的な価値で図るのではなく、無意識に決めた参照点との比較で相対的に図ろうとする心理。不良が少しでも良いことをすると好感度が上がる。
・同調効果=多数派に従う心理。看護師の残業過多を解決するため、日勤と夜勤の制服の色を変えた。周りに違う色の看護師が増えると交代しなければと焦り残業が減った。
・返報性の原理=何かを貰ったらお返しをしないとと思う心理。
社会的選考=自分だけのためでなく他者のメリットも価値と捉える傾向。
人間関係ではまず自分から与える。
・バンドワゴン効果=みんなが持っているものが欲しくなる。行列に並びたくなる。
・ラベリング効果=人や物事にレッテルを張る。
ポジティブなレッテルは人のやる気を引き出す。ディズニーが従業員をキャストと呼ぶ、等。こうなりたいというラベルを自分に貼る。
バーナム効果=誰にでも該当するような一般的な性格や特徴が自分に当てはまると思い込む。占い、血液型、等。
ピグマリオン効果=他者から期待されると頑張ったりやる気が出る心理効果
ゴーレム効果=相手に期待できない、見込みがないと思うと本当に悪い結果になる
・ウィンザー効果=当事者より第三者からの情報をより信じる。第三者に利害関係が無く親近感を覚えているほど信ぴょう性が高まる。インフルエンサー、口コミ等。
・後知恵バイアス=結果が分かった後に、最初から分かってたと思い込む。変わると困ることは記録を残す。
・ハロー効果=何かを評価する時、目立った特徴(見た目、肩書、業績等)に影響される心理。ハロー=後光。印象を良くする。受ける側は印象だけでなく事実関係を確認する冷静さを持つ。
・一貫性の原理=自分の行動や態度を一貫させたいという心理。
フットインザドア=小さなお願いを聞いてもらうと大きなお願いも聞いてもらいやすい。
アンダードッグ効果=劣勢・不利な立場の側を応援したくなる。新人のお願いは聞き入れられやすい。
・現在思考バイアス=将来の利益より目の前の利益を優先する。
原始時代は次にいつ食べられるか分からなかったため、目の前に食べ物があったらすぐ食べるのが合理的だった。
現在思考バイアスから逃れるためには、やることや目標の解像度を高くする。目標の1/100を小目標にしてすぐに実践する。
現状維持バイアス=変化を避けて現状を保とうとする心理。
投影バイアス=今の状況がずっと続くと思い込み、リスクを未然に防ごうと思わない。
計画錯誤=計画の見通しが甘いために達成できない。
・サンクスコスト=それまでに費やしたコストに固執してしまう心理。ダメだと思っても過去のコストに囚われてやめられない。
今の状態を続けるべきかの判断は「それは無人島に持っていくか?」「明日人生が終わるとしてもそれをやるか?」
・保有効果=自分が持っているものに高い価値を感じる心理
損失回避=損失に過大に反応し、損失を避けようとする傾向
イケア効果=時間や労力をかけて作ったものに特別な愛着を感じ高く評価する心理。
車の試乗体験などのお試し。子供が苦手な食材もお手伝いして作ったものなら食べる。自分のアイデアや案は、人が作ったものとして客観的に判断する。
・オヴシアンキーナー効果=一度始めたことは完了させたくなる。
未完だと心理的な緊張状態に。緊張から解放されるために完了したくなる。
ティザー広告=情報をちょっとだけ見せて興味を持たせる
エンダウド・プログレス効果=ゴールに向けて少しでも前進したと感じるとモチベーションが上がり進み続けたくなる。スタンプカードに最初から1つスタンプが押されている、作業はキリが良い所ではなく少しだけ進めておく、次のアポを取ったり次の提案を少しだけ話す、等。
目標勾配降下=ゴールが見えるとやる気が上がる
・後悔の回避=やらなきゃよかったと後悔するならやらない方が良い。同じ店を選ぶ、新しい挑戦に躊躇する、等。
後悔の回避を取り除くには、不安やリスクを細かく分解して言語化し、具体的な対策を考える。
・フォールスコンセンサス効果=周りの人も自分と同じ考えや行動をすると考える心理。
・利用可能性ヒューリスティック=記憶や印象に強く残っている事が、起こる頻度や確率が高いと思ってしまう心理。自分の方が人より働いている、等の思い込み。
認知的不協和=置かれた環境や状況と自分の思考や行動に矛盾がある時に感じる不快感やストレス。他責思考、自分の正当化、負け惜しみ等は認知的不協和を解消しようとした結果。食べたいけどダイエットしたい、時間をかけずにスキルアップしたい、等はビジネスチャンスに。
ダニングクルーガー効果=能力や知識が低い人ほど自分を高く評価する傾向。
確証バイアス=自分の意見に合う情報だけを受け入れ、反対情報を無視・軽視する。