カーレド・ホッセイニのレビュー一覧
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昔、この映画観てめっちゃ良くて、昨年復刊したことを知り早速読む。映像もとても良かったけど小説もよかった。青い空の下、乾いた風の中で正月の伝統行事の凧上げを楽しむ可愛い男の子2人の笑顔や色とりどりの凧の映像が蘇った。
アフガニスタンの首都カブールでの裕福で恵まれた主人公の少年アミールと忠実で純心で優しい使用人の少年ハッサンとの身分の違いこそあれ幸せな日々。ある日ハッサンが3人の悪童による卑怯な暴力の的になるがそれを物陰でみていたアミールは恐怖に身がすくみハッサンを見捨てて逃げ帰る。残酷な事件によって断ち切られる絆、別離、戦争、内戦、2人の間に隠された秘密。大人になってアメリカで平穏に暮らしながらもなお後悔に苛まれるアミールは、タリバンの弾圧下のアフガニスタンでハッサン夫妻が殺されて残された息子のソーラブが窮地にあると知り今度こそ命をかけて彼を救おうと決意する。
幼いながらもいつも身を挺して主人を守る勇敢で忠実なハッサンに対して、目の前で起きている卑劣な暴力に立ち向かえなかったアミールを弱虫の裏切り者と誰が責められよう。良心の呵責に耐えられず家からハッサンと身体の不自由な彼の父親を追い出す画策までするアミールを卑怯者と誰が責められよう。
勇敢で人望の厚い偉大な父親への複雑な思いや出産後すぐに亡くなった母親への愛惜や自分のせいで亡くなったのではないかという罪の意識、身分の違いのあるハッサンを友と呼ぶことへのためらいなど幼いアミールにも心に抱えきれないほどの苦悩があったのだ。
ハッサンの変わらぬ忠誠心と澄んだ瞳と優しさが切なくてたまらない。
文章がとても読みやすく訳も良くて、空の色や土の感触、美味しそうな食事や飲み物、果物などの描写も素晴らしい。豊かで穏やかだったかつてのアフガニスタンに対し、戦争や内戦で荒廃し多くの人々の命が奪われたその後のあまりにも悲惨で過酷な状況が辛い。
そしてまたしても今度はイスラム原理主義タリバン。宗教ってなんなんだろう。人の心を救い、善に導き哀しみを慰めるのが全宗教の教祖の願いなんじゃないの⁈
家族や自身の過去、心に立ち向かい、悪党や狂信者や法の壁にも屈せず良心に従って生きることを選択したアミールの贖罪と勇気の物語は痛々しいほどだが、アミール夫妻の養子となったものの弾圧下の恐怖のために心身を病み話すことが出来なくなったソーラブと彼に寄り添い続けるアミールが、幼い頃にハッサンとしたように凧上げを一緒にする清々しいラストに救われる。 -
Posted by ブクログ
ネタバレ2025/6/10-6/14 大型書店の文庫の棚で何故か惹かれて手に取った。後から、映画化されたベストセラーだと知った。
情景描写が丁寧で、知らないアフガニスタンの文化や人々の考え方、慣習に想像しながら触れることができる。幼少期のアミールとハッサンの生活を通して描かれるアフガンのかつての豊かさや活気については、小さい頃読んだ絵本、せかいいちうつくしいぼくの村を思い出した。
上巻の時点では、アミールは、己の弱さ、醜さ、過ちに対しての贖罪を感じ、恥じながらも目を背けて生きる。
彼は、小さな頃からアイロニーを知っている少年だ。そこには、どれだけハッサンを身近に感じても友人とは感じないという民族間の根深い問題がある。
純粋だけれど、醜さ、妬みもある人間特有の複雑な心情が描写されている。彼がそういうことに敏感だからこそ、より残酷な態度に駆り立てたようにも思う。
情勢に翻弄され、父子はアメリカへの移住を余儀なくされながら、結局は存在の大きすぎる偉大な父の期待から大きく反れることはなく、社会的な幸せを手にいれている主人公。好きな人とも結ばれ、幸せを感じることにいつもどこか後ろめたさを感じている。
偉大な父、ババの存在はアミールにとっては頼りであり重荷であっただろうが、ババの言葉にはしばしばその通りだと感じる部分もある。
パシュトゥール人の民族性、男女で置かれる状況がどれ程違うか、生きる環境でどれほど考え方や身の振る舞いが変わるか、考えさせられた。 -
Posted by ブクログ
本当によくできていて、大いに泣いたし、未来が少し明るくて慰められた。
アフガニスタンの70年代から今を生きる2人の女性の物語。
アフガニスタンに共産主義者居たんだという驚きや、どのように情勢が変わっていったかよく分かるし、その中で翻弄されていく女性達の痛みや苦しみがひしひし伝わる。
遠い国の話だが、そんな彼女達の感情に共感できる事も多く、人間の普遍的なものを辿っていく小説でもある。
昔は、各国の小説はそれぞれの文化や歴史の差異を読んでいたが、今は見た目・境遇がちがっても本質的には同じだ、という同質性を読む時代、らしい。それだけ多様化してグローバルな時代になったということなんだろう。
所々に出てくるアフガニスタンの山岳地帯や料理の美しさ。今はなきバーミヤンの上に登って人や家畜が暮らす様子を眺める静かなひと時。
沢山の苦しみと確かな愛。
今の情勢ではとても足を踏み入れることはできないけど、いつか美しいアフガニスタンを見てみたい。
カーレド・ホッセイニは自らも医者であるからか、タリバンに支配されてる中でも必死に女性を助ける医師や、生まれてくる子供に罪は無いことを繰り返し書くなど、命の尊さと平等さ、人道的な事を入れていて、それが悲惨な状況を少し和らげてくれている。
とっても良い小説を読んだ。他の作品も読みたい。
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Posted by ブクログ
人を想う強さ、愛する強さに心打たれました。アフガニスタンでタリバンが政権を奪取した2021年。改めて注目されてほしい作品だと思います。
信仰や文化のため男尊女卑的な考えの残るアフガニスタンを舞台に、二人の女性が歴史や文化、そして暴力に虐げられながらもわずかな希望を信じ、強く生きようとする姿を描いた作品。
お金持ちの主人とお手伝いの間の子として生まれ、現在は母と二人で粗末な小屋で暮らすマリアムが、何回りも年の離れた男と結婚させられ、さらなる悲劇に見舞われるまでを描いた第1部。
女性の教育に対しても理解を示す父と、戦線に旅立った兄たちを想う母を持つライラ。兄の方ばかりを気にかける母に複雑な思いを抱きつつも、初恋や父の教えに胸をときめかせるライラにアフガニスタンの内戦の影が忍び寄り……
そして第3部でこの二人の女性の人生が交わります。その理由というのも、男性は女性の所有物という男尊女卑的な考えの元で、女性の人格や自由なんてものは一顧だにされない。マリアムにも邪険にされ、孤独を極めるライラに兆した変化。それはマリアムの心情も変え、やがて二人は本当の母娘のような強い絆で結ばれていく。
この二人の関係性をめぐる変化、ライラの希望を持つ姿、マリアムの心情の変化、絶望の中でも女性の母性というか、優しさ、慈しみの心というものが描かれているようで本当に心打たれました。でも悲しいもので、この先このままではいかないだろうな、という思いもどこかにあって、幸せと不穏さの中で揺れているまま、ずっと読み進めている感覚はずっとあったかもしれない。
二人に訪れる希望、そして絶望。アフガニスタン、とりわけ女性をめぐる環境の劣悪さというものをまざまざと感じさせられ、そして迎える結末は……
ものすごく哀しい話ではあるけれど、それでもここまで女性の強さ、とりわけ人を想い、愛する強さを感じた小説はあまり記憶にありません。クライマックスは目頭が熱くなりました。でもそれは単なる感動という言葉では言い表せない。もっと神聖で心に染み入る何かが、胸の中にじわじわ広がっていったように思います。
作品の歴史は9.11後のテロとの戦いでタリバン政権が崩壊したところで終わります。しかし現実はフィクションのようにはいかない。2021年アメリカ軍撤退後、アフガニスタンは瞬く間にタリバン政権が復活しました。タリバンは女性の教育の機会の保証、また前政権やアメリカ軍協力者に対しての報復の禁止をうたっているものの、報道を見る限りではそれも信じられる状況ではなく……
アフガニスタンだけでなく全世界で、作中の二人の女性のように虐げられ続けている女性たちがいるかと思うと、本当に胸が痛くなります。自分にできることは想像し、祈ることしかできません。この作品のラストのような世界が訪れることを改めて、切に思いました。 -
Posted by ブクログ
昨今の情勢を受け、アフガニスタンに生きる人たちのことを知りたくなった。爆撃、難民、タリバン。。ニュースで聞くだけではぼんやりしてしまう、想像の範疇外のアフガニスタンのことを知るためにまず、あえて私にとって身近な小説という媒体を選んでみた。
この小説は、国連で難民支援のために働いていた著者によるもの。この小説には、政治情勢の変遷とともに主人公たちを取り巻く環境の変化、そしてその影響をどのように受けているのかが、ありありと描かれていた。
当たり前のように描かれる衝撃的な日常風景に、展開される主人公達の処遇。まずこの国のもともとの姿にもものすごく本当にびっくりした。でもその全ての驚きの根底には、日本を含む地球上のみなが心の奥底に持つ人間性そのものがあるということも強く感じた。
そして戦況の悪化、国内の混乱。。息をするのも忘れるほどにその世界を疑似体験した。
民間人の殺害、街の爆撃、流れ弾、処刑。
ニュースなどで聞くだけだとぼんやりもやがかっていた現実は、想像よりずっと突然起こることであり、あまりに無惨で、悲しすぎるものだった。
アフガニスタンの悪夢のような混沌の中でも、人は何かを食べて寝て子供を育て、各自の人生を、生きていかなくてはいけない。
しかし、女性にとっては、あまりに過酷で理不尽な環境だ。食べ物がないのに仕事もできない、ひとりでの外出すら許されない。
でもこの小説を通して、私が何よりも恐ろしかったのは戦争ではなかった。きっといつの時代にもどこにでもいる、ひとりの男性の人間性だった。
この小説は、過酷な運命に翻弄され、自らの運命を甘んじて耐え忍ぶ(きっとこの世界中にたくさん実在する)女性の生涯を、美化することなく描ききった。
結婚生活、妊娠出産、育児。
どれも真っ直ぐではないけれど、私にも通じるテーマばかりだった。
人の心は同じなのだと思った。
風景や心情の描写がとても美しかった。
私は主人公マリアムのことを生涯忘れない。
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購入済み
抑圧される少女たちの姿に胸が痛くなります。
しかし、「暗い」「重い」というだけの話ではありません。
過酷な状況の中でも生きる強さ。何もかも奪われても大切な人に手を伸ばす優しさ。
周りがどんなに彼女たちを黒く塗りつぶそうとしても、彼女たちの命は輝いています。
カズオ・イシグロ作品の翻訳もされている土屋政雄さんの、読みやすくも格調高い翻訳が素晴らしい。 -
Posted by ブクログ
冒頭に語られたお伽噺の中で、巨人から子供との別れの記憶を無くす水薬を手渡された主人公は悲しみに沈むのを避けられた。翻って、現実で妹と生き別れた兄は父から聞いたそのお伽噺にあった水薬を飲みたいと思いながらももちろん叶えられることはなく、哀しみは六十年近くの歳月に渡り彼を苛み続けた。
主要な登場人物が最後の場面で言うように、忘れることが贅沢であることもあり得るのかと痛切に感じ入り、また考えさせられた。
章ごとに主人公が異なり、本筋の一族の話とどこで関わるのか分かりかねる部分もある。また、関わっているのはわかるけれど、本筋にどのような影響を及ぼすのかがわからない部分もあり。
ただ、読み終えた後に不思議とバラバラの話を読んだという思いはなく、各々の話がステンドグラスのように一片一片独立しながらも、全体では一枚の綺麗で哀しい絵を描いていたのだといった感覚が徐々に湧いてくる。
そんな中、少年少女時代のマルコスとタリアの話は特にお気に入り。子供だからこその葛藤と柔軟さがもどかしく、かつ懐かしく思われ、痛々しい話しながら読後感は暖かな爽やかさがある。
それにしても、兄が生き別れた妹を探す物語、というキャッチコピーであるのに、その兄がメインの章が冒頭にしかないというのに驚いた。構成の妙というか、構成の勝利というか。読み終わってみると、兄がメインの章は読むのがつら過ぎて、冒頭以外には却ってなくてよかった気もする。 -
Posted by ブクログ
読んで良かった。
約半世紀に渡って、アフガニスタンで女性が置かれた過酷な状況について、どんなノンフィクションよりも雄弁に伝えているのではないかと想像する。同じ名前の女性が同じ場所に実際にいたわけではないはずだが、マリアムとライラに自分の人生を重ね合わせられるアフガニスタン女性がたくさんいるのだろう。
とにかく重い。
マリアムとライラに、そして彼女たちの子どもたちにも共通しているのは、幼い頃からそれが当たり前の状況の中で成長しているということ。まだ判断力のない幼い子どもたちにそのような思いをさせないために、大人はもっと思慮深くなければならないと思った。
重い話だがラストはとても感動的な余韻があった。