蔵本由紀のレビュー一覧
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立秋が過ぎ、夜は少しだけ気温が下がる日もあるのか、昨晩リ,リ,リ,と虫の音が聞こえていました。
不思議に思うときがあるのですが、小道を歩いて何匹もの虫の音を聞くとき、ずーっと同じリズムで聞こえてきませんか?まるで全員がそろって合唱しているような。実は鳴いているのはオスで、メスを効率よく誘うために、互いの鳴き声を”聞いて”リズムをそろえているのだそうです。
これは生物の世界のお話しですが、様々な現象(物理であれ、化学であれ、人の行動であれ)の中に、個としてはばらつきを持つ振動が、集団のなかにあるとひとつの振動に収れんする現象が”同期”であり、本書の中心となるテーマです。
様々な現象から抽象 -
Posted by ブクログ
この本が出たとき、表紙が素敵だったのが印象に残っている。初版からは少々時間が経ったが改めて手をとった。
ホタルの同期現象がなぜ起るのかというところから書き起こしているが、昆虫生物学の本ではない。複雑性の理論の本だった。(ホタルがなぜ同期して光るのかは自分にはわからなかった...)
「同期(Sync)」ということをキーワードにして、生体の同期現象だけでなく、ジョセフソン素子で有名な量子現象や6次の隔たりで有名になったスモールワールドネットワークまで射程の幅広さを誇示するかのように話題を振っている。
はっきりいって、本書の議論は自分にはあまり刺さってこなかった。カオス理論・複雑性の理論とは相 -
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非線形に由来する「シンクロ:同期現象」が、自然、生物、人工システムのいたるところに共通的に見られるという例を多数紹介する本。
リズム(位相)という現象(概念?)が、細胞というミクロから、超マクロなシステムまで存在するのは当然。それが同期ということとどう関連するのかについては、こういった新書では数式を使えないから、「個と場のフィードバック」という表現で、うまく伝えようと苦心されている。
数理科学に関心のある高校生にちょうど良いか。
電力系統についての説明は、少し違和感がある。周波数については、実際にはシステムの外から同期のレファレンスを与え、積極的に制御しているという面もあるのだが、ここの記述は -
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買ったのは5年前で、ずいぶん積読になっていた。著者である蔵本由紀先生の本としては2冊目である。数式を使わずに言葉だけで記述しているためか、文章が難しいと感じた。おそらく文章の書き方が私とは違うためだろう。哲学的な議論は若干「言い過ぎ」の感がなきにしもあらずだが、ご専門の物理学の立場から考えるとこのような言い方になるのだろう。たとえば「ロボットは果たして意識(心)を持ちうるか」という議論が二元論だとして懐疑的な意見を述べておられる。これはAI研究者として見た場合、「意識(心)の働きと呼ばれるものを人工的に作りうるか」という意味だと捉えれば、決して二元論だとは思えないのである。
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著者の蔵本由紀氏は、国際高等研究所副所長、京都大学名誉教授などを務める物理学者。非線形動力学(非線形科学)の世界的権威で、本書でも取り上げられる「蔵本モデル」(振動子集団の可解模型)を提唱した業績などで、ノーベル賞候補との評価もある。
本書は、「全体が部分の総和としては理解できない」いわゆる“非線形現象”の典型である“同期現象”について、具体的な現れ方を多くの例を通じて、数式を使わずに紹介・説明しようとしたものである。因みに、「全体が部分の総和として理解できる」現象を“線形現象”といい、従来の数学を基にした数々の手法は、線形現象は説明できるが、非線形現象を説明することは困難であったのだという。 -
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「非線形科学の世界的第一人者による画期的な入門書」だそうだ。
複雑系の本は、分かったような、分からないような本が多くて、さらにほとんどが翻訳もの。ということで、分かりやすさを求めて、読んでみたが、やっぱり、今、一つ、すっきりしない。
内容的には、ジェイムズ・グリックの「カオス」やスティーヴン・ストロガッツの「SYNC」あたりとかぶっているのだが、どちらかというとこの本のほうが、分かりにくい気がする。
で、どうしてだろうと考えると、この本、内容的には、実はかなり分かりやすくコンパクトに書いてあるのだが、コンパクトすぎて著者の研究の苦労話とか、学者の人間模様があまり書かれていないことが -
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物理学者である著者が、科学的視点や自然観とは何かを問い直すという、壮大で根源的な問題に取り組んだ書物。
三部に分かれ、最初と最後の方は比較的平易だが、肝心の「非線形科学」に触れられている第2部が、物理学の素養のない私にはちょっと難しかった。
「非線形科学」についても、非常に簡潔に述べられており、素人の私には把握しきれない。たぶん本書は、広く一般人のために書かれたというよりも、自然科学をある程度以上学んできた学徒に向けて書かれたものと位置づけるべきだろう。
リズム現象など興味深いエピソードもあったが、とにかく把握しきれないために頭に残らなかった。残念。 -