金菱清のレビュー一覧
-
Posted by ブクログ
金菱清『私の夢まで、会いに来てくれた 3.11 亡き人とのそれから』朝日文庫。
東北学院大学の金菱清教授とゼミ生たちが1年間に亘り、東日本大震災の被災地を巡り、震災体験による『夢』の証言を集めたノンフィクション。
あの未曾有の東日本大震災の大津波で自分が生き残ったことへの贖罪の意識、親族や友人を助けられなかったことの悔しさ、悲しみ、後悔。様々な思いが証言の中から窺える。亡くなった人から夢の中で励まされたり、怒られたり、読んでいく内にあの日のことが思い出され、胸が締め付けられた。
自分自身、良く知る陸前高田市や気仙沼市、階上、本吉、南三陸の津波被害の状況を目にした時、毎晩のように夢の中でう -
Posted by ブクログ
■被災者同士のタブー。家族を亡くした遺族から話を切り出されれば自分たちも話すがそうでない人に対しては話さない。家族を亡くした遺族も亡くならなかった人も一線をお互いに設けている。
■「記録筆記法」は被災者自らが大災害で経験した事象についていつ誰がどこで何をどのようにしたのかを書き綴っていくというシンプルなもの。
■災害や戦争など生き残った人々が強迫自責を追うとされる「サバイバーズ・ギルト」に囚われている被災者遺族は「そのとき何かができたはずである」「亡くなった人に申し訳ない」という罪悪感を心の中に強く刻みつけている。
■痛みは取り除くよりも,温存すること
■ポーリン・ボスは「曖昧な喪失」(行方不 -
Posted by ブクログ
政府が対応し、マスメディアが伝える。その当たり前になった震災の「イメージ」ががらがらと崩れ、今まで気付かなかった、そこに生きる人々の息遣いが感じられた。
・日本は世界で希に見る四つのプレートの境界に隣接し、世界の九割以上の地震が頻発する地帯にあり、さらに台風をはじめ急峻な山々に囲まれた土砂災害や洪水に見舞われる災害列島である。
・記録という行為で、心の痛みを取り除くのではなく、痛みを温存する。この「痛み保存」法は、その痛みは当人にとって愛する家族との大切な思い出として、むしろ保持される。それが亡くなった家族との関係性を修復することにつながっていくのである。
・彼女ら彼らが慟哭の記録に対して肯 -
Posted by ブクログ
何かをしなければ「死」という状況では、制度が役に立たないこともある。本書はそこを突破するにあたって、思想的、実践的に極めて興味深い指摘に満ちている。事例(ケース)がとって付けたものではなく、論の血肉になっている。不条理を嘆いているだけでは、明日はこない。たくましさ、生き延びるための優しさが大事なんだな。今の自分に必要な視点であった。
・ヨハネ:裁き、イエス:赦し
・裏を返せば、福祉という制度から投げ出された人びとの工夫である「生きられた法」は、裏の福祉のあり方そのもの。
・「生きられた法」は、法律としてのルールではなく、世界の使い方の実践である。これは法構築理論の「抵抗」のあり方とは一線を画