精神科ERに勤める精神科医による奮闘記。
救急で運ばれてくる人間といえば、やはり怪我や内科的な病気というイメージがあるが、実はERに運ばれてくる人間の1割~2割が精神的疾患をもち、それに伴う症状が原因であるというのは驚いた。当然、そういう場で精神科医の需要があるわけだが、きっとそれすら世間にはあまり知られていないだろう。対応の仕方としては、わりと過激に思えるものも多い(鎮静剤注射、拘束、隔離等)が、それもいたしかたない激しい症例の数々。働く人間にも相当の覚悟が必要と思われるが、学生時代に自分が目指す科を決める時にも、やはり精神科は特別なものがあるらしい。
医学部講師の言葉。
精神病は、残念ながら偏見がついてまわる病気です。
それも、医療従事者のほうが医療に従事していない人に比べて
偏見は強いという調査結果も出ています。
思い当たることがあるもんなぁ、これも・・・。
どうしても慢性的なイメージが強く、一度かかったら、通院にしても薬にしても、やめることができないのではないかと思ってしまいがちな精神科の症例。普通に受診するのも、内科や眼科等とは違い、やはり敷居は高かったし時間がかかった。
精神科救急は、主に緊急入院を要するような
ハードなケースを扱うことが多い。
精神科救急での治療成績が向上することは、
「早期発見・早期治療すれば、精神病もよくなるんだ」という認識を
持てることにつながるのではないかと思われる。
この本では、精神科ERに運ばれた患者のそこでの様子が主ではあるが、その人がその後無事に普通生活に戻っているところまで、軽くではあるが紹介している症例も多い。他の病気と何ら変わりなく、治療すればもちろん治ることもあるという正しい認識をもたなければいけないと強く思った。