あらすじ
都知事の発案でより早く急患に対応すべく急遽開設された「東京ER」。その精神科は、日々、緊迫した空気に包まれている。パトカーや救急車でひっきりなしに運ばれてくる患者たち。父親から捨てられ自殺を図った兄妹。心のバランスを崩し、深夜の霊園で叫ぶサラリーマン。「愛が欲しい」と恋人の前で包丁を取り出す女性。極度の緊張の中、厳しい現実と格闘した現役精神科医が語る壮絶人間ドキュメント。
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Posted by ブクログ
2013/10/22
「何も知らない、何もできない精神科」
そんな表現をされる科に、あえて実習中に進むことを選んだ著者。
常に試行錯誤を繰り返し、時には無力感を感じながらも、
誠実に目の前の患者に向き合い、患者の家族や医療スタッフの方々にも配慮を見せる、著者のプロとしての姿勢に心を打たれた。
無知の知ではないけれど、何事も自分の頭で分かった気にならず、いつまでも未熟なのだという謙虚な姿勢は持ち続けていたいと思う。
Posted by ブクログ
少し、びっくりするタイトルですね。
表紙を見て想像したのは、
精神病症状で、緊急に措置が必要な人が運び込まれることでした。
でも、精神科にERがあるという想像が働きませんでしたね。
内容は、次々にやってくる精神科症状の患者さんへの対応状況が書かれています。緊急なのは、自殺をするようなケース、相手に暴力を加えるケース,自分で自分を気付付けるケースです。
こういった様々なケースに、
時に悩みながらも対応する著者の行動と主観が書かれています。
患者言動から、本人の状態を判断し治療内容を決めていくためには、人間を観察する力だと思いました。
Posted by ブクログ
精神科って何やねん。
そんな興味がある方、是非。
精神科に従事している、1人の医師の日常を多くの主観を交えて綴っている。
ERであるので、答えがでないまま、次へと進まなければならないケースもある。
課題、葛藤、無力感…
著者の奮闘を描いているが、登場してくる患者らが、私たちが精神科にいるであろうと想像する患者像とは離れていた。
誰もが、ほとんど普通にみえる。
この本は、私たちが偏見をなくす手助けにもなるかもしれない。
Posted by ブクログ
伝えたいことがたくさんあったのか、なんだか長い業務日誌を読んでいる感じだった。
ちょっとお腹いっぱいな読後感。
ECTについては、私も『カッコーの巣の上で』のイメージが強くあまり良い印象はもっていなかったし、作者があまりにも強く勧めるので、もしかして、結局ECT療法のことを言いたかったのかな?とさえ思ってしまったけれど、文庫本のあとがきに、自己の反省を含めた見解が書かれていたので
すっきりした。読んでよかった。
というわけで、読むなら文庫本をお勧めします。
Posted by ブクログ
精神科救急での体験をもとに、一般の人にあまり知られていない精神科医療のことを述べる本。
文章がわかりやすく、リアリティがあって、どんどん読みすすむ。一日で読み終わった。
精神科というと遠いことのように感じる人もいるけれど、ある日突然に起こることもある。誰だって、他人事と言い切れない。
そこにどう寄り添うかが、精神科医の腕の見せ所なのだと思う。
心理屋としては、臨床心理士がどのようにかかわるのかも知りたかったけど、まあ精神科救急という緊急の場面では心理はなかなか出てきにくいのかな。
医療現場の話に関連させて、著者がどのような医師になりたいと考えているのかの変遷もたどれるのが興味深い。
すべてを一人でやることはできないから、どこを担当する医師になるのか。とても難しい選択なのだろうと感じた。
Posted by ブクログ
とても分かりやすく書いてあって、読みやすいです。
精神病も他の風邪とかの病気と同じなんだなあ。誰でもかかる可能性があるというのが良く分かりました。
医者の中にも精神病に偏見をもってる人が多いというのは残念です…
Posted by ブクログ
すごい壮絶。精神科医はたいへんな仕事なんだなぁ。。
他の科の医師が精神科の患者に対して
偏見を持つことに対して怒ったり、精神科を選んだ理由などが
書いてあるところを読むと、作者のあったかさを感じる。
自分が疲れちゃわないのかなぁとも思うけど。
ちょっとばかりカウンセリングを勉強したって
人の話をちゃんと聞くこともなかなかできない。
イライラしたり怒ったり。へこむなぁ。
Posted by ブクログ
事例をたくさん挙げることで精神科の実状を把握してもらおうとしている。実際、どの事例も短く易しい語り口で書かれていることもあり、ひじょうに読みやすかった。
一番に思ったことは、全事例を通してやはり家庭環境が精神症状の発症を大きく左右するということ…。家庭環境の負の連鎖の恐ろしさを目の当たりにすると、いつも無力感をおぼえます。
ECTに関する肯定的な視点は新しかったです。根拠が明確で、説得力がある。著者が患者と真剣に向き合っているなかで出てきた考えなのだな、と思いました。
ちなみに、私はこの本のなかで紹介されている映画はすべて見ていました。映画を見たからこそ想像できることがたくさんあったので、精神疾患を理解してもらうためにも、入口として多くの人にこれらの映画を見て頂きたいと思いました。
Posted by ブクログ
実際都内に精神科救急を受け入れている病院があり、実態を体験談から知ることができた。しかし全てが「ER」での出来事でなく、精神科医としての体験談も一部含まれる。
Posted by ブクログ
p129 精神病は残念ながら偏見がついてまわる病気です。それも、医療従事者の方が医療に従事していない人に比べて偏見は強いという調査結果が出ています。
p136 消えたいとは思うけど、死にたくはないよ。
Posted by ブクログ
本書の中に、他の科の医師が精神科の患者のことを、きちがい呼ばわりしていたという件がありました。
医者の中にも精神障害に対する差別・偏見がある(あった)
というのが衝撃的でした。
医者も万能ではないので、すべての診療科について、豊富な知識を備えるのは難しいと思いますが、必要最低限の倫理観は持ってほしいものだと思いました。(初版が2008年なので、現在は改善されているのかもしれませんが。)
Posted by ブクログ
東京都にERが設置されたこと、そして、そこに常勤する精神科医がいることを初めて知った。もっとも、ERに関しては「救命救急センター」が既存で、都知事の流行相乗りの感が否めないが。精神病は、他の診療科目と比べ病気の境界線が曖昧だ。本書でも書かれているが、病気なのか性格なのか? 判然としない境界域で患者と接し、診断を下す精神科医の苦労は並大抵ではないことを感じた。ただし、文章はあまり上手くはない。どこかドラマ仕立てのような書きぶりがあり、少し引いてしまう章もあった。
Posted by ブクログ
読み始めた当初「読みやすすぎて印象に残らない」「もう少し深く」と感じていたのだけれど、徐々に「どんな状況になっても人は生きていく」というメッセージを強く感じた。
当たり前であるということがいかにたやすく崩れるか、それを支えるシステムが脆弱か(精神科のERが存在する地域は少ないと思われる)考えさせられる。
後書きで、自らの姿勢が変わったことを認められるすがすがしさはすばらしい。
Posted by ブクログ
知り合ったソーシャルワーカーの仕事を知りたくて大分前に購入。しばらく放置していた。自分自身や家族も世話になる可能性もある。精神科ERはなじみがないだけに恐怖や不安を持つが,少し知っていると一般ERと同じように捉えることができるだろう。
事実は小説よりも奇なりとはよくいったものだ。これに納められているエピソードはまるで作り話かのようである。
電気ショックのことが書いてある。これを読んでいたらあのときはもっと踏み込んだ話ができていただろうな。
Posted by ブクログ
著者の従事した医療活動がたんたんと描かれている。こういう場所もあるんだなぁと思った。精神疾患は、ただ治ればおっけーってことは少なくて、そもそもどこからが病気なのかもむつかしいものだなと改めて思った。
Posted by ブクログ
多分、先に救急センターのノンフィクションを読んでいて、そのイメージが頭に残っていたのが悪かった。
読みごたえはあると思うが、なんとなくインパクトに欠けるのだ。
読者に読みとってもらいたい内容の方向性が違うため、もちろんそれは当り前のことなのだが、
1話がなんとなく短くて、若干拍子抜けしてしまう。
うつ病や統合失調症など、ストレスフル社会の中で精神を病む人が当たり前になってきている世の中だが、精神科に対する偏見は未だ根強く残る。
何重にも鍵の掛けられた病棟で、奇声が響き、患者が暴れ、檻の中で拘束される……。
そこにいるのは人間ではなく「動物」。
そんなイメージを持つ人も少なくないはず。
(大学時代心理学をかじった私もこういうイメージが少なからずある。イメージであって嘲る意味はない)
本著でも、救急車で運ばれ、精神科ERで保護される人たちは、「保護室」と呼ばれる檻・拘束具つきの部屋に収容される。
暴れる人はベッドに全身を拘束され、落ち着くまで動けなくされる。
これだけ言うと残酷で非情なようにも聞こえるが、これらは必要なものである。
暴れたり、自傷したり、脱走したりしようとする患者たちに対しては拘束し、閉じ込めることで治療者も患者も「守る」ことになる。
精神科を専門とする医師・看護師はそうして命がけで患者を救っていくのだ。
精神科への差別は根強く、著者いわく同じ病院内でも「なにもできない精神科」と言われる始末である。
心療内科等が増えてきているにつれて、精神科ERの整備と精神科への偏見が少しでも薄まれば幸いである。
Posted by ブクログ
医療従事者のほうが精神疾患に対する偏見が強いという分析は分からないでもない。
症例が身近すぎて気を遣わなくなるからこそ言葉の選び方(おかしいetc.)からそういう印象を受けがちなだけかもしれないが。
文章は読みやすく、さっくりと読めた。
他科スタッフが精神科を下に見ている様子も描かれていた。
しかし著者の他科に対する物言いから、お互い様ではないかと感じることが多少。
Posted by ブクログ
JR病棟メンタルヘルス精神科非常勤の経歴も手伝って、買ってみた。
自分の知らない精神科の裏側、医療の世界の裏側が垣間見えた。医者がメンタルヘルスを偏見の目で見ているなんて、一般人には更に多くの人が…という事になるのだろう。悲しい現実が未だにある。
Posted by ブクログ
専門的な話だけど、素人向けって感じで分かりやすく書いてあって、よかったです。
でも、もうちょっと詳しく解決方法を書いてほしいなぁって感じでした。
Posted by ブクログ
精神科救急外来にくるケースをいくつか取り上げたノンフィクション。内容とは裏腹にとても穏やかな筆致で著されているためあっさり読める。
たとえ表に見える形でなくても、3人に1人がアルコール依存症という事実がこわかった。
Posted by ブクログ
精神科ERに勤める精神科医による奮闘記。
救急で運ばれてくる人間といえば、やはり怪我や内科的な病気というイメージがあるが、実はERに運ばれてくる人間の1割~2割が精神的疾患をもち、それに伴う症状が原因であるというのは驚いた。当然、そういう場で精神科医の需要があるわけだが、きっとそれすら世間にはあまり知られていないだろう。対応の仕方としては、わりと過激に思えるものも多い(鎮静剤注射、拘束、隔離等)が、それもいたしかたない激しい症例の数々。働く人間にも相当の覚悟が必要と思われるが、学生時代に自分が目指す科を決める時にも、やはり精神科は特別なものがあるらしい。
医学部講師の言葉。
精神病は、残念ながら偏見がついてまわる病気です。
それも、医療従事者のほうが医療に従事していない人に比べて
偏見は強いという調査結果も出ています。
思い当たることがあるもんなぁ、これも・・・。
どうしても慢性的なイメージが強く、一度かかったら、通院にしても薬にしても、やめることができないのではないかと思ってしまいがちな精神科の症例。普通に受診するのも、内科や眼科等とは違い、やはり敷居は高かったし時間がかかった。
精神科救急は、主に緊急入院を要するような
ハードなケースを扱うことが多い。
精神科救急での治療成績が向上することは、
「早期発見・早期治療すれば、精神病もよくなるんだ」という認識を
持てることにつながるのではないかと思われる。
この本では、精神科ERに運ばれた患者のそこでの様子が主ではあるが、その人がその後無事に普通生活に戻っているところまで、軽くではあるが紹介している症例も多い。他の病気と何ら変わりなく、治療すればもちろん治ることもあるという正しい認識をもたなければいけないと強く思った。
Posted by ブクログ
それぞれの章に登場する患者さんのその後まで追いかけていないから少々食い足りない気がするが、著者は最後まで受け持つ仕事をその当時していなかったから仕方ない。著者のような医師がいる、と思うだけでも安心する。