見延典子のレビュー一覧

  • 頼山陽 下

    Posted by ブクログ

    下巻では、20年来の念願であった『日本外史』がついに完成し、松平定信のお墨付きも得て、いよいよ功成り名を遂げた山陽が、惜しまれながら病に倒れるまでを描いています。

    最後まで『日本外史』に手を入れつづけようとする山陽の気迫が心を打ちます。

    0
    2018年04月04日
  • 家を建てるなら

    Posted by ブクログ

    我が家を建ててから、ようやく3年になる。

    あの頃を思い出してみると、大きな失敗はなかったとは思うが、もう少し考えてから判断すればよかったかな・・

    と思えることも幾つかある。

    やはり「家を建てること」は普通は「一生に一度の大きな買い物」であるので、取り返しがつかないからだ。



    この「家を建てるなら」という小説は、住宅にまつわる様々な問題をそれぞれ短編で仕上げている。

    たとえば、「お隣との境界線」「シックハウス症候群」「ふきぬけ」「和室の位置」・・等々。

    特にオレが「おー、そんなことあったな」と思い出したのが、「窓」というタイトルの短編。



    これは、ある夫婦が新居の設計を有名な建

    0
    2009年10月04日
  • いつのまにか晴れた空

    Posted by ブクログ

    著者の第二作で、六篇収録の短編集。表題作は昭和50年代の女子大生の就職難を描いたもので、軽やかながらも女性のたくましさをのぞかせる文章で内容も面白いが、やはり今では既視感を覚えないほどのアナクロ臭さに溢れていると感じざるを得ない。ただ人間の機微ややりきれない現状を悪気を感じないユーモラスな表現で描いている点は見事。特に「島にて」で見られる女児の瑞々しさや若さゆえの危うさ加減は普遍性を伴っているから読み継がれるべきである。

    0
    2023年10月12日
  • 頼山陽 下

    Posted by ブクログ

    長編歴史小説にしばしば(司馬司馬)挫折する私には珍しく、最後まで飽きずに読めた。資料を渉猟したと思うが、作中の蘊蓄は最小限にとどめてくれていて、大変助かる。論文のような歴史小説が多い中、本来小説とはこういうものだと思う。早すぎた近代人として頼山陽を捉え、生活者としての視点からその事跡をたどるのは安易であるが、それゆえ分かりやすく、読みやすい。歴史小説としては、藤子漫画の少し不思議SFのような位置づけの小説なのかもしれない。

    0
    2018年10月15日
  • 頼山陽 中

    Posted by ブクログ

    歴史小説の長編は途中で挫折することが多い私が、本作は不思議と読める。しかし、本作には「風雲児たち」に感じた家制度、幕藩制度の矛盾、息苦しさ、恐ろしさが匂いすらない。これは、頼山陽を取り巻く人々が善人ばかりだからだろう。ゆえに気持ちよく読めるが、歴史小説を読む醍醐味とは違う気がする。

    0
    2018年09月16日
  • 頼山陽 上

    Posted by ブクログ

    頼山陽は「風雲児たち幕末編」にもなぜか登場しない。本書が小説で頼山陽を描いた初出と思う。今後、これが人物像の基本になるだろう。上巻は、頼山陽が周りを不幸にしまくって、自己実現していくだけの話で、主人公視点だからまだ読めるが、被害者視点からなら、周りが彼を甘やかしているとしか見えない。特に玉蘊はかわいそすぎ。才能のある嫌な奴の話を不思議と読ませるのは、作者が女性であることと関係あるかも。男性作家ならもっと嫌な話になったと思う。この手の小説にありがちな、学識を誇示する蘊蓄の記述がないのも、ありがたい。

    0
    2018年09月16日
  • 頼山陽 中

    Posted by ブクログ

    山陽の名声はしだいに高まっていきます。九州への旅を終えた彼は、妻の梨影とのあいだに辰蔵と復蔵の二人の子をさずかり、さらに母の梅颸を京都への旅に招いてこれまでできなかった孝行を果たします。

    その一方で美しい女弟子の江馬細香の存在が山陽の心をかき立て、彼のなかにひそんでいた「石」を抑えるのに苦しみ、新たな家を建てたり、骨董をめぐって同人たちと摩擦を繰り広げるような事件を引き起こします。梨影もまた、そうした夫の心の揺れ動きに不安を募らせます。さらに広島の頼家を継ぐことになった聿庵は、使用人のたみを愛するようになり、彼女とのあいだに子どもが生まれます。梅颸は事のなりゆきに心を痛め、聿庵自身も頼家の跡

    0
    2018年04月02日
  • 頼山陽 上

    Posted by ブクログ

    『日本外史』の著者である頼山陽を主人公にした歴史小説です。

    上巻は、詩文で身を立てることを夢見る山陽が脱藩をくわだてて京都に上るもたちまち国元へ連れ戻されるという事件からはじまります。その後も夢をあきらめようとしない山陽は、みずからのうちにあって彼を突き動かす得体のしれない「石」を見つめながら、養子となるはずだった菅茶山のもとを飛び出して京都へ向かいます。

    主人公である山陽の人物造形は、封建制度に反旗を翻して自由に生きようとする近代人であり、スリリングな展開が楽しめるエンターテインメント小説に仕上がっています。江戸時代の人間が「権利」ということばを使うはずがないといちいち目をむくような読者

    0
    2018年03月22日
  • 頼山陽 上

    Posted by ブクログ

     頼山陽の幼少から青年までの上巻。山陽は今で言う躁鬱病じゃないかなぁと感じた。後悔編での哀愁に心引かれた。
    引用を入力するにあたり、思いもよらぬ文字が使われていたりして読んだ後で面白く読み返すことができた。

    0
    2016年10月22日