なんともつかみ所のないと言うか、複雑な話だった。荒唐無稽であるようにも思う。
表向きな物語としては、その風貌から母親から疎まれ、イジメのような仕打ちをうけながらも賢明に生きる少年の物語となるのだろうか。
しかし、これはそうそう簡単な物語ではない。
ストーリーから考える少年像としては、素直で純粋だが、
...続きを読む心の強い男の子というイメージがわくのではないだろうか。しかし、この物語の主人公、通称にんじんは、けして、誰もが愛する事の出来るような少年ではない。暴力的で、陰湿ですらあり、ハッキリ言って嫌な子供なのである。少年犯を犯す現代っ子の様な心理の持ち主なのだ。母親にしろ、ただ意地悪な母親ならば分かりやすいのだが、一言でそうと言える人物ではない。にんじんに対する言動の中に時に愛情をひしひしと示したりする。
詳しくは知らないが、この物語は作者の自叙伝的な部分があるのではないだろうか。実際の子供、実際の親子関係と言う物は、けして明く、純粋な物だけではない。父や、他の兄弟なども含めて、複雑怪奇であり、こうすればいい、こうすれば上手くいくなどという答えはない。
この物語は一見、荒唐無稽。だからこそリアリティがあるように感じた。