小島信夫のレビュー一覧
-
Posted by ブクログ
保坂和志さんの本が好きだという話をしていたら、小島信夫さんの本を薦められたので、読んでみた。私が保坂和志さんの小説に持っている関心と、小島信夫さんのこの小説では、あまり接点がないように感じたのだけど、小説として楽しんで読んだ。読み進めてわかったのだけど、この小説は保坂和志さんの『書きあぐねている人のための小説入門』に引用があった。
私はあまりこの小説に関心が惹かれなかったので、ありきたりな感想しか持てなかった。一つ思ったのは、この小説の台詞が、時代の差もあるのだろうと思うのだけど、あまり口語で使わない言い回しや語尾だったので気になったのと、誰が喋っているのかわかりにくく感じる箇所が多かった。摩 -
Posted by ブクログ
本のレビューということに凝っていたことがある。でも、ある時期、ある種の不毛さにはたと思い悩んでしまった。
多くの本をレビューするために読み、それを要約する行為が空しくなったのである。
それは、そういったレビューをする自分の背景となる教養の薄さへの絶望というものとは少々、違っていた。むしろ、そこで書かれている何かを、何か別の経験や比喩に置き換えていく行為というか、もっと正確に言うと、そこで表現されているものを、自分の既に知っている何かに置き換えていくことについての徒労感のようなものだ。
多くの本を、自分の既存の棚の中に整理していく行為に何の意味があるのだろうか。自分にとって、意味がないと -
Posted by ブクログ
自分に中立的な歴史的知識欠けているからか、戦争文学は苦手だ。
ただこの墓碑銘は戦争を題材にしながらも、自己同一性を問うのが主題となっている。
「戦争反対」とか「平和」なんていう面倒な主張はない。
多少日本人の描かれ方が気になるかもしれないが、これはこの世代の作家のデフォルト設定とも言えるのであまり気にしないのがいいと思う。
日米のハーフとして生まれたトミイ・アンダーソンこと浜仲富夫が日本兵になり、自己の存在を見つめる物語。
浜仲自身の心境は非常に分かり易く描かれていると思ったのだが、小説としては凡庸。
映画の話も後々大きな意味を持ってくるかと思いきや、あっさりと使われただけで終わっ -
Posted by ブクログ
浦野所有。
おもしろそうな芥川賞作品ないかな~と思って見つけたのが、この作品。恥ずかしながら著者名も初めて知りました。
短編集となっている新潮文庫版では、表題作のほか「汽車の中」「馬」がおもしろかったです。ほとんどの作品で主人公となっているのが、弱気で妄想癖のある男。「アメリカン・スクール」は、トラウマのため外国人を前に英語が喋れない英語教諭のお話です。その教師が、「外国人学校でデモ授業をやろう」という勝気な同僚を相手に、一人勝手に精神戦を展開するというものでした。
「汽車の中」「馬」でも似たようなタイプの男が、直感と本能のままに行動し、何を考えているのかわからない動物的な女を相手に、知 -
Posted by ブクログ
はじめのあたりは外国人とねんごろになった妻に右往左往する夫の姿に焦点が絞られていて、奔放な女に対する嫌悪感や情けない男への苛立ちを感じつつ読み進める。このあたりは『痴人の愛』なんかと似た感触かもしれない。その後夫婦の問題は一旦回復、「夫婦がプールで泳いでたわむれている。それから芝生の上で抱擁しながら倒れる。しばらく横になっている。彼女の贅肉の一つ一つにじかに感じているのだが、空想の中では、俊介も妻も贅肉をおとしてずっと若々しい。…それから寝室、自分は彼女を子供のように抱いていたい。…何か睦言をしよう。騒々しいのはごめんだ。静かなおしゃべりなら大歓迎だ。将来の話は淋しすぎるし、ずっと二人が知り合