小島信夫のレビュー一覧

  • 美濃

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    当事者以外にとってはまったくどうでもいい話をエッセイ風に語ってゆくのだが、途中から「私」を含めた登場人物が分裂・増殖していって、虚構と現実がごっちゃになり、ごっちゃなまま「ストーリー」(と言っていいのかもわからない何ものか)が地滑り状に展開されてゆく。後半には事件めいたことも次々起こって、「私」が完全にどっかへいってしまうのだが、最後何事もなかったかのように戻ってくる。ヌーヴォー・ロマンなんかめじゃない。例によって、保坂和志の解説が著者の魅力を倍加させる。

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    2013年06月18日
  • アメリカン・スクール

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    初期の短編集。
    保坂さんの解説に「小島作品では事件も気持ちの変化も原因なく起こる」とあった。たしかに作品中の出来事は、前ぶれなく一文で急に発生することが多い。主人公の気持ちも唐突に変わる。ただ、その予測不能さは魅力でもあって、先へと読ませる力を生んでいると思う。

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    2014年10月19日
  • アメリカン・スクール

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    いまだかってこのような作風には出会ったことがない。ひとつひとつの作品の意味を追いかけても掴みきれない。それゆえ、読んでいてある種苛立ちを覚えるのであるが、じゃあ、途中で放り出してしまうのかと云えば、最後まで読まないと気が済まない。それで最後の一行まで読んで何か結論めいたものが分かったのかといえば、否といわざるを得ない。でも、次の作品を読んでみたいという不思議な魅力を感じる。いや、感じようとしているだけで、ちっとも何も気づいていないのかもしれない。

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    2011年12月18日
  • 抱擁家族

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    妻の浮気から少しずつ家庭が崩壊していく、不気味な小説。はじめは妻のわがままさが目につくが、徐々に、夫の俊介が狂っていることに気付く。何を考えているのか分からず、行動が読めない。

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    2014年10月19日
  • 抱擁家族

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    読んでいてこんなに不愉快になる本はないかもしれない。感情と行動がちぐはぐで、それは周りとのコミュニケーションも同様、噛み合わない。

    人生なんてこんなものかも。他人からみたら滑稽なのだ。

    この不愉快さはリアルだ。

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    2011年07月13日
  • アメリカン・スクール

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    村上春樹さんのオススメなので
    即 読んでみることに 。
    「馬」が印象的やった 。
    独特の世界観・視点 。

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    2011年03月09日
  • アメリカン・スクール

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    小島信夫の作品は最近はどうも流行っていないのか、あまり本屋でお見かけする事は出来ません。むしろお高くなっているのではないでしょうか。このなかに収められている「馬」という短編が村上春樹の短編案内で紹介されていて、ぜひ読んでみたいと思った。なのでこの本を手に取ったのです。馬については奇妙な想い出が(個人的にか)多く、ひとつは昔のアルバイト先でそこの古狸的なおばさん(自称霊能力者)に、マンションの階段を夜中に上がり下りする馬の幽霊の話を聞いたこと(塩を撒いたら死んだらしい)、それから井上ひさしの遠野物語に出てくる幾つかの獣姦話に馬の話があったこと、『ゴッドファーザー』に朝起きたら馬の首が布団の中に転

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    2010年11月16日
  • 抱擁家族

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    ジョージとの情事……。・・・・・・スマン・・・読んでいて感じるのはちぐはぐとした感じ、でしょうか。作中で、俊介は果たして、「コミュニケーション」というものが一度でも成功したのだろうか?妻とも、息子とも、再婚相手候補の女性たちともろくに意志の疎通ができていないように映る。それにしても良一の「はやく主婦をつれてこいよ」という台詞にはショックでしたね・・・。彼は最後、家を出て行きますが、彼がまともな「家庭」を築けるとはとても思えない。

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    2011年07月17日
  • 抱擁家族

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    妻の情事に端を発し壊れていく家庭を、喜劇的に描く悲劇。

    読んでいて不愉快になる。
    情事の相手に、いやに勝気で頑迷な妻に、差し出がましい家政婦に、口だけで役に立たない息子に、いやに母親に似てくる娘に・・・・そして、その間で読者と同じく不愉快になりながらも、何とか修復を図り、しかも結局家庭の崩壊を止める事の出来ない、主人公俊介に。

    でも面白い。
    この本は悲劇だが、登場人物は喜劇的。どこか、ロシア文学っぽい雰囲気を感じさせる(解説もゴーゴリにふれていた。)。
    結局この本が面白いのは、そして読者をここまでリアリティある不愉快な気持ちにさせるのは、それだけの普遍性を持っているからなのだと思う。

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    2010年06月14日
  • アメリカン・スクール

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    戦争に関する話しはそこまでグッとこなかったけど、評判の「馬」はすごいひきつけられた。主人公の弱さと対比となす他社の強さ。だけど、それが単純な強弱の関係にみえない。この人の作品って読みやすいなぁ

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    2009年12月22日
  • 抱擁家族

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    この文体を使ってできることの最高のものではないような。適度な距離感なのか、微妙なのか。時子視点の排除を徹底したほうが面白い?2007.1.2

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    2009年10月04日
  • アメリカン・スクール

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    時代背景に理解がないから、読むのにすごく時間がかかった。

    戦時中の兵士たちってほんとにこんな感じだったんだろうなぁ。意外にも緊張感がないような、でも軍隊だから厳しい序列があって、現地の女を買って…。星が偉いのか人が偉いのか分からなくなって。どんな組織の中でもいじめの対象ができる。
    わたしからすると全部ツライ。

    戦後の題材の、汽車の中、アメリカン・スクールはさらに理解が難しくて、ふーーーん?となってしまった。スポットが当たる人がいずれも日本人っぽいと言われそうな押しの弱いなのだけど、周りに振り回されてる…。周りも周りでアメリカへの歪な気持ちだったり、私利私欲に飲まれてて、ああ混乱の時代だなぁ

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    2025年02月03日
  • 抱擁家族

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    代表作ではあるけれど、ブラックな滑稽さを含んだ奇妙な空間や関係を描き出す初期と、類をみない破茶滅茶で自由な文体で文学史に残る後期の仕事に比べると、過渡期的な中途半端さがあって、他の筆者の作品ほど面白くは感じなかった。
    家庭内の不和が延々と続く様を描いているけれども、その内容は他の有体の私小説とは全く異質で、人間対人間の間で常に起きているコミュニケーションの不通が一切の物語的な装飾がなく描写されていて、一読しただけでは何について話しているのか、それが会話になっているのかさえ分からなくなるような感覚を覚える。そもそも、主人公の感情の種類や動き方が全く不明だ(おそらく筆者もよくわかっていないというか

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    2024年09月17日
  • 美濃

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    小説ともエッセイともつかない話である。朝日新聞の文学の旅人の岐阜で紹介されていた。
     岐阜をよく知らない学生(たぶんほとんどであろう)にとってはまったくわからないものであろう。岐阜出身の学生であればわかるであろうが半世紀前、たとえば明治生まれならば江戸のことなので、わからないかもしれない。
     旅行のお供として岐阜に持っていくにはあまり役立たない本かもしれない。

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    2023年11月05日
  • 抱擁家族

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    ものすごく奇妙な文体。妻の不貞がきっかけで…というプロットは濱口竜介っぽくもある。易しい言葉遣いでするする読めるのに意味がわからない。登場人物の思考回路はまったく予想がつかずあれよあれよと別人のように豹変していく。いきなり時間軸が飛んだりするので余計に厄介。

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    2023年05月29日
  • アメリカン・スクール

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    奇想天外な思想や行動力を持つ主人公たちだが、はっとするくらい切実な気持ちも持っている。
    微笑とアメリカン・スクールが印象的だった。

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    2022年07月06日
  • 抱擁家族

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    時子が浮気をし、病気でいなくなって初めて彼女が妻の存在を持っていたことに気づき、自分は家庭の中の夫、父になろうとして「なろう」としている時点で本物ではなく妻からも子供からも空回りして、でも自分の家族は紛れもなくここにしかないという喜劇。(後書きにも喜劇という文字があったけど、読んでて疎外感とかもがく悲しさしか感じなかったけど、思い返してみるとそれは喜劇と呼ぶしかない)
    私小説なのかしら。
    時子の乳癌が、大丈夫、病室の◯◯に比べればまだ大したことないと思ってる間にあっという間に容体が悪くなって衰えて死んでしまうのが怖かったな。

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    2022年05月02日
  • 抱擁家族

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    ネタバレ

    たしかに家族の話なんだけど、切り取るところがすごい独特な気がする。自分の家に変な人がたくさんいる。(変人がいるという意味ではない)〈家族としてあるべき姿〉という概念がずっと物語の中に漂っていて、まあ言い換えればそれだけが浮かび上がっているというべきか。
    主人公と妻の話だと思って読むから、妻が亡くなってもこの話が平然とつづいていくのがやっぱ変。でもだからこそ、〈家族としてあるべき姿〉が浮かび上がっている気がする。でも登場人物、とくに主人公の気持ちを追うのがむずかしい。

    一読したうえでは、おもしろい!とは自信を持って言える確固たる感触は持てていないのだけど、これを読んだ人と語りたい感じはある。

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    2021年05月24日
  • 抱擁家族

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    戦後の空気が色濃い日本のある家族。
    アメリカ人と関係を持ちながらも悪びれることもなく、ただただ唯我独尊であり続ける妻。
    なんやかや葛藤しながらも、それを受容し続ける夫。
    勝手気ままに振る舞う息子と娘。
    そして、クセの強い家政婦。
    脆いような、実は意外にタフなような家族の関係。
    これも一つの家族の形か。

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    2019年01月28日
  • アメリカン・スクール

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    シリアスなのに滑稽さが絡まって、読んでいると体の一部がなんだかむず痒くなってくる、ひと味違った作品。

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    2017年09月24日