小島信夫のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
小島信夫の作品は最近はどうも流行っていないのか、あまり本屋でお見かけする事は出来ません。むしろお高くなっているのではないでしょうか。このなかに収められている「馬」という短編が村上春樹の短編案内で紹介されていて、ぜひ読んでみたいと思った。なのでこの本を手に取ったのです。馬については奇妙な想い出が(個人的にか)多く、ひとつは昔のアルバイト先でそこの古狸的なおばさん(自称霊能力者)に、マンションの階段を夜中に上がり下りする馬の幽霊の話を聞いたこと(塩を撒いたら死んだらしい)、それから井上ひさしの遠野物語に出てくる幾つかの獣姦話に馬の話があったこと、『ゴッドファーザー』に朝起きたら馬の首が布団の中に転
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Posted by ブクログ
妻の情事に端を発し壊れていく家庭を、喜劇的に描く悲劇。
読んでいて不愉快になる。
情事の相手に、いやに勝気で頑迷な妻に、差し出がましい家政婦に、口だけで役に立たない息子に、いやに母親に似てくる娘に・・・・そして、その間で読者と同じく不愉快になりながらも、何とか修復を図り、しかも結局家庭の崩壊を止める事の出来ない、主人公俊介に。
でも面白い。
この本は悲劇だが、登場人物は喜劇的。どこか、ロシア文学っぽい雰囲気を感じさせる(解説もゴーゴリにふれていた。)。
結局この本が面白いのは、そして読者をここまでリアリティある不愉快な気持ちにさせるのは、それだけの普遍性を持っているからなのだと思う。
続 -
Posted by ブクログ
時代背景に理解がないから、読むのにすごく時間がかかった。
戦時中の兵士たちってほんとにこんな感じだったんだろうなぁ。意外にも緊張感がないような、でも軍隊だから厳しい序列があって、現地の女を買って…。星が偉いのか人が偉いのか分からなくなって。どんな組織の中でもいじめの対象ができる。
わたしからすると全部ツライ。
戦後の題材の、汽車の中、アメリカン・スクールはさらに理解が難しくて、ふーーーん?となってしまった。スポットが当たる人がいずれも日本人っぽいと言われそうな押しの弱いなのだけど、周りに振り回されてる…。周りも周りでアメリカへの歪な気持ちだったり、私利私欲に飲まれてて、ああ混乱の時代だなぁ -
Posted by ブクログ
代表作ではあるけれど、ブラックな滑稽さを含んだ奇妙な空間や関係を描き出す初期と、類をみない破茶滅茶で自由な文体で文学史に残る後期の仕事に比べると、過渡期的な中途半端さがあって、他の筆者の作品ほど面白くは感じなかった。
家庭内の不和が延々と続く様を描いているけれども、その内容は他の有体の私小説とは全く異質で、人間対人間の間で常に起きているコミュニケーションの不通が一切の物語的な装飾がなく描写されていて、一読しただけでは何について話しているのか、それが会話になっているのかさえ分からなくなるような感覚を覚える。そもそも、主人公の感情の種類や動き方が全く不明だ(おそらく筆者もよくわかっていないというか -
Posted by ブクログ
ネタバレたしかに家族の話なんだけど、切り取るところがすごい独特な気がする。自分の家に変な人がたくさんいる。(変人がいるという意味ではない)〈家族としてあるべき姿〉という概念がずっと物語の中に漂っていて、まあ言い換えればそれだけが浮かび上がっているというべきか。
主人公と妻の話だと思って読むから、妻が亡くなってもこの話が平然とつづいていくのがやっぱ変。でもだからこそ、〈家族としてあるべき姿〉が浮かび上がっている気がする。でも登場人物、とくに主人公の気持ちを追うのがむずかしい。
一読したうえでは、おもしろい!とは自信を持って言える確固たる感触は持てていないのだけど、これを読んだ人と語りたい感じはある。