小島信夫のレビュー一覧

  • 抱擁家族

    Posted by ブクログ

    「キャラ(=類型)」がない小説、つまり徹底的に「他者」しかいない小説。この小説での「他者」とは、言葉が通じない、何をやっても通じ合えない、付き合ってると「あんなことが起こったり、こんなことが起こったりするう!」めんどくさい人のことであり、そいつとの間では予定調和な会話やセックスなどない、例えば、妻であり、子供であり、アメリカ人であり、時には自分自身でもある人のことである。キャラ萌えする小説なんか糞喰らえ、こういう小説がもっと読みたい、そう思わせる傑作。

    0
    2013年06月18日
  • アメリカン・スクール

    Posted by ブクログ

    小島信夫の小説はいつも僕を混乱させる。しかし、同時にそれは心地よい体験でもある。
    小島信夫を含め第三の新人の時代は、一部の例外を除いて極上の作家が集まった日本文学にとって重要な時期だったのね。

    0
    2010年05月29日
  • 抱擁家族

    Posted by ブクログ

    執筆された1965年周辺において、エポックメイキングになった作品。
    大沢真幸氏の本に紹介されていたので読んでみました。

    戦後、日本人家庭にやってきたアメリカ人と一夜をともにしてしまう妻。そこから、家族の崩壊が徐々に進んで行き、結局は全てが崩壊の道筋を辿ってしまっていっているような印象でした。
    様々な媒体で採り上げられている本書なので、当然ながら「戦後日本とアメリカ」という視点からの通読でした。

    非常に解釈が難しい内容だとは思うのですが、日本人としてのアイデンティティの危機、そしてアメリカという存在の大きさ・強さ。作中において、登場する日本人の誰よりも、アメリカ人ジョージが最も「優位

    0
    2009年10月04日
  • 抱擁家族

    Posted by ブクログ

    家族に異文化が介入し 妻が病気になり崩壊していく家族の姿。日本とアメリカというものの比較を取り入れながら、酷なお話のようでいて、その会話術のすごさはもう、すごいすごい、と。夫婦の会話のやり取りがちぐはぐで 小笑いの連続。そして感動も。

    0
    2009年10月04日
  • 殉教・微笑

    Posted by ブクログ

    なんとも形容しがたいユーモラスな作品群。
    私のお勧めは「憂い顔の騎士たち」。これは素直に笑える作品だと思う。『電●男』など比較にならないくらい面白い、戦前のモテナイ学生のお話。いつの時代も同じなのか・・・

    0
    2009年10月04日
  • 抱擁家族

    Posted by ブクログ

    最近亡くなりました、小島信夫です。じりじりと迫ってくる力強さが大好きです。家を通して、日本の家族が変わっていく様が面白い。

    0
    2009年10月04日
  • 抱擁家族

    Posted by ブクログ

    すごい小説でした。。。小島信夫はすごい。。。なんとなく、途中から何かが破綻している(精神か、あるいはストーリー自体か)ような感じがするのだけど、小説自体は破綻のその先を行っている。こんな小説、これまで読んだことない。。。(06/6/15)

    0
    2009年10月04日
  • 抱擁家族

    Posted by ブクログ

    せっかく建てた自宅のつくりを他人にアレコレといちゃもんつけられる気持ちは想像しただけでブルーでアングリーだった。すごい作品だと思うし、『小説』という形で一歩降りてきてくれた作者に感謝!!!

    0
    2009年10月04日
  • アメリカン・スクール

    Posted by ブクログ

     戦中から戦後にかけての私小説集。それぞれの物語に関連はないものの、読み進めるにつれ、だんだんと時代が進んでおり、周りの環境の変化を味わえた。最後の二作である「馬」と「鬼」では戦争を感じさせる描写はほとんどなくなっていたが、カニエビのようにどこか戦争の影響のメタファーのようなものが残っていたように思う。
     個人的には「小銃」「星」「微笑」が好きだった。
     「小銃」は、まだ若い兵隊が自分に初めて与えられた銃を女性に見立て銃の腕を磨いていたが、上官の命令で捕虜の無防備な女性を撃ち、それをきっかけとしてだんだんと精神が壊れていく話。最終的には、期待されたこともできず、銃も取り上げられるが、以前に褒め

    0
    2025年12月17日
  • 抱擁家族

    Posted by ブクログ

    ネタバレ

    重層的な作品。

    ジョージ=アメリカ・占領軍・GHQであったり、妻の時子=戦前の天皇制・伝統であったりなど、あきらかに戦後の日本の体制を描いていると見える。

    死んだ時子のいた日本間(アメリカ式の家の一区画である!)に友人の木崎とともに寝に行く息子の良一も示唆的だ。

    「家」にめちゃくちゃ執着する。最初の家を、妻=戦前の日本がジョージに寝取られたのちに仮の住処を一度挟んでからアメリカ式の家に住む。ただそのまま乳がんが見つかって時子はどんどん容態が悪くなってやがて死ぬ。妻=天皇がいれば雨漏りもしなかっただろうにと嘆く場面もある。

    「家」が文化とか、そういう文化的な伝統みたいなものの暗喩として働

    0
    2024年01月06日
  • アメリカン・スクール

    Posted by ブクログ

    目次
    ・汽車の中
    ・燕京大学部隊
    ・小銃
    ・星
    ・微笑
    ・アメリカン・スクール
    ・馬
    ・鬼

    敗戦前の軍隊や終戦直後の日本を描いた短編集。
    例えば雑誌で、たまにぽつりぽつりと読むのならいいのかもしれないけれど、一冊まるまるこれというのはちょっときつい。

    『汽車の中』なんかはまだ余裕だったので、世間知らずの学校の先生が、初めて闇物資を買いに行って、なりふり構わない世間の人々に比べてあまりにも繊細な自分には生きる価値がないと思ってしまう姿を見て、共感したり突っ込み入れたりできたけど。
    軍隊の中のいじめの話とかは、読んでいてもちょっと引いちゃったよね。

    そんな中で『アメリカン・スクール』は、敗戦

    0
    2023年10月27日
  • うるわしき日々

    Posted by ブクログ


    小島信夫の独特の文体のまま、老人の浮かんでは消える頭の中がそのまま文字となり、読者を振り回す一冊。
    後期は本当に読みづらいが、シリアスと滑稽は健在で面白く感じてしまうのが不思議。

    0
    2022年12月28日
  • 美濃

    Posted by ブクログ


    何を俺は読ませられてるんだ。。とこの作品を客観視した時に来る笑いが本作の肝なのかもしれない。
    読みにくい上、不親切な書かれ方で通読にエネルギー要するが、本当は☆5を付けたい面白さ。

    0
    2022年12月28日
  • うるわしき日々

    Posted by ブクログ

    不確かだったり、曖昧だったりする過去の記憶や意識を整えることなく、そのまま忠実に描かれているように感じる。ラストのボルヘスの引用のように、過去に体感したイメージそのものを思い出すことは理論上不可能であるということについての悲しさ、記憶=人生そのものと考えた場合の忘却していくことの儚さを感じてしまった。ドラマティックな展開は少なく、さりげないやり取りのシーンが多いせいか、作品全体の印象はどこか朧げである。このように朧げな読後感しか残らない構成こそがこの作品のテーマのようなものを象徴しているとも言えるのではないか。

    0
    2020年02月27日
  • 抱擁家族

    Posted by ブクログ

    面白いことは間違いないのだが、その面白さが一体どこからくるものなのか、今ひとつ上手く言葉にできない類の小説だった。
    ただ一つ言えるのは、主人公である三輪俊介の内省がめちゃくちゃリアルに感じたいうこと。
    そのリアルさというのは、だれもが思っていても敢えて言葉にしないような、でも意識するかしないかのギリギリのところで確実に思っていて、それが明文化されたときに、思っていたことに初めて気がついたように感じるような、そんなリアルさである。

    0
    2019年12月22日
  • アメリカン・スクール

    Posted by ブクログ

    きわめて現代的。
    戦中戦後がまるで近未来のように感じられる。
    回避的性格の主人公は常にマウンティングを試みている。
    ネガティヴに満ちた作品群だが、それは不条理でサイケデリックな匂いがする。

    0
    2019年10月10日
  • 抱擁家族

    Posted by ブクログ

    家に出入りする米軍士官への嫉妬から
    家族は仲良くあらねばならないという理想を引っ張り出して
    妻を拘束しようとする夫の話
    しかし所詮それはプライドを守ろうとする行為でしかなかった
    ゆえに道化にはなりきれず、お大臣の夢を語るでもなく
    なにより敗戦国の美徳観念が抑制をかけるのか
    何をやってもかっこつけに見えて
    妻のみならず、みんなに馬鹿にされてしまう
    ところがその妻も
    米軍士官の誘惑を受けた負い目があるのか
    あるいは貞節を傷つけられた恥の意識に苛まれてか
    どうもヒステリーで支離滅裂になっており
    そのことが小説を悪文に見せてわかりにくくすらしているのだった

    それでも家長の威厳を保つため、主人公は

    0
    2018年05月05日
  • アメリカン・スクール

    Posted by ブクログ

    8つの短編小説が収録。

    個人的には、表題の「アメリカン・スクール」もよいが、戦時中の出来事を題材とした「小銃」もよかった。巧みな描写。

    また、「汽車の中」や「馬」も、独特な物語の展開で、不思議と引き込まれる。

    0
    2016年05月04日
  • アメリカン・スクール

    Posted by ブクログ

     小島信夫の短編集。芥川賞をとったアメリカン・スクール。秀逸な「馬」等全八編。
     「馬」は不思議な作品だ。最初は家をローンで買って、ひたすらローン返済の為に働いている夫。そしてその行為さえ曖昧になってきた。しかし、妻を愛しているものの、顔をまともに見たことが無い。自虐的に妻への服従を誓わされている。すると、いつの間にか、家が増築されるという。更には、増築した1階には馬の「五郎」が住むという。その行為に、憤慨する夫、しかしなかなか言えず、頭がおかしくなってくる。棟梁が家に来ているとか、馬が妻の部屋に入ってくるとか幻想だか現実だかさえもはっきりしないトランス状態に陥り、最後は、妻から「愛しているの

    0
    2016年01月16日
  • アメリカン・スクール

    Posted by ブクログ

    そのキャラクターの持って生まれたおかしみや愛嬌を、落語の方では「フラ」といいます。たとえば、古今亭志ん生なんかその典型ですね。他の落語家の高座と聴き比べていただければ、私のような素人でも分かります。高座だけでなく、私生活でも「フラ」を発揮していたようで、たとえばジェット機がガクーンと急降下すると「危ないよォ。つんのめったらどうすんだい」とか、「そこにある犬の糞、それェ片づけなよ」に志ん駒が紙で取ろうとしたら「手でやんなよォ―。いい百姓になれないよ」。おかしいですよね。
    小島信夫さんの作品は今回初めて読みましたが、「フラ」を感じました。小島作品をそんなふうに評した人は恐らくいないと思いますが、そ

    0
    2013年10月27日