小島信夫のレビュー一覧
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執筆された1965年周辺において、エポックメイキングになった作品。
大沢真幸氏の本に紹介されていたので読んでみました。
戦後、日本人家庭にやってきたアメリカ人と一夜をともにしてしまう妻。そこから、家族の崩壊が徐々に進んで行き、結局は全てが崩壊の道筋を辿ってしまっていっているような印象でした。
様々な媒体で採り上げられている本書なので、当然ながら「戦後日本とアメリカ」という視点からの通読でした。
非常に解釈が難しい内容だとは思うのですが、日本人としてのアイデンティティの危機、そしてアメリカという存在の大きさ・強さ。作中において、登場する日本人の誰よりも、アメリカ人ジョージが最も「優位 -
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戦中から戦後にかけての私小説集。それぞれの物語に関連はないものの、読み進めるにつれ、だんだんと時代が進んでおり、周りの環境の変化を味わえた。最後の二作である「馬」と「鬼」では戦争を感じさせる描写はほとんどなくなっていたが、カニエビのようにどこか戦争の影響のメタファーのようなものが残っていたように思う。
個人的には「小銃」「星」「微笑」が好きだった。
「小銃」は、まだ若い兵隊が自分に初めて与えられた銃を女性に見立て銃の腕を磨いていたが、上官の命令で捕虜の無防備な女性を撃ち、それをきっかけとしてだんだんと精神が壊れていく話。最終的には、期待されたこともできず、銃も取り上げられるが、以前に褒め -
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ネタバレ重層的な作品。
ジョージ=アメリカ・占領軍・GHQであったり、妻の時子=戦前の天皇制・伝統であったりなど、あきらかに戦後の日本の体制を描いていると見える。
死んだ時子のいた日本間(アメリカ式の家の一区画である!)に友人の木崎とともに寝に行く息子の良一も示唆的だ。
「家」にめちゃくちゃ執着する。最初の家を、妻=戦前の日本がジョージに寝取られたのちに仮の住処を一度挟んでからアメリカ式の家に住む。ただそのまま乳がんが見つかって時子はどんどん容態が悪くなってやがて死ぬ。妻=天皇がいれば雨漏りもしなかっただろうにと嘆く場面もある。
「家」が文化とか、そういう文化的な伝統みたいなものの暗喩として働 -
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目次
・汽車の中
・燕京大学部隊
・小銃
・星
・微笑
・アメリカン・スクール
・馬
・鬼
敗戦前の軍隊や終戦直後の日本を描いた短編集。
例えば雑誌で、たまにぽつりぽつりと読むのならいいのかもしれないけれど、一冊まるまるこれというのはちょっときつい。
『汽車の中』なんかはまだ余裕だったので、世間知らずの学校の先生が、初めて闇物資を買いに行って、なりふり構わない世間の人々に比べてあまりにも繊細な自分には生きる価値がないと思ってしまう姿を見て、共感したり突っ込み入れたりできたけど。
軍隊の中のいじめの話とかは、読んでいてもちょっと引いちゃったよね。
そんな中で『アメリカン・スクール』は、敗戦 -
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家に出入りする米軍士官への嫉妬から
家族は仲良くあらねばならないという理想を引っ張り出して
妻を拘束しようとする夫の話
しかし所詮それはプライドを守ろうとする行為でしかなかった
ゆえに道化にはなりきれず、お大臣の夢を語るでもなく
なにより敗戦国の美徳観念が抑制をかけるのか
何をやってもかっこつけに見えて
妻のみならず、みんなに馬鹿にされてしまう
ところがその妻も
米軍士官の誘惑を受けた負い目があるのか
あるいは貞節を傷つけられた恥の意識に苛まれてか
どうもヒステリーで支離滅裂になっており
そのことが小説を悪文に見せてわかりにくくすらしているのだった
それでも家長の威厳を保つため、主人公は
家 -
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小島信夫の短編集。芥川賞をとったアメリカン・スクール。秀逸な「馬」等全八編。
「馬」は不思議な作品だ。最初は家をローンで買って、ひたすらローン返済の為に働いている夫。そしてその行為さえ曖昧になってきた。しかし、妻を愛しているものの、顔をまともに見たことが無い。自虐的に妻への服従を誓わされている。すると、いつの間にか、家が増築されるという。更には、増築した1階には馬の「五郎」が住むという。その行為に、憤慨する夫、しかしなかなか言えず、頭がおかしくなってくる。棟梁が家に来ているとか、馬が妻の部屋に入ってくるとか幻想だか現実だかさえもはっきりしないトランス状態に陥り、最後は、妻から「愛しているの -
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そのキャラクターの持って生まれたおかしみや愛嬌を、落語の方では「フラ」といいます。たとえば、古今亭志ん生なんかその典型ですね。他の落語家の高座と聴き比べていただければ、私のような素人でも分かります。高座だけでなく、私生活でも「フラ」を発揮していたようで、たとえばジェット機がガクーンと急降下すると「危ないよォ。つんのめったらどうすんだい」とか、「そこにある犬の糞、それェ片づけなよ」に志ん駒が紙で取ろうとしたら「手でやんなよォ―。いい百姓になれないよ」。おかしいですよね。
小島信夫さんの作品は今回初めて読みましたが、「フラ」を感じました。小島作品をそんなふうに評した人は恐らくいないと思いますが、そ