藤石波矢のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
ネタバレ共著とはいえ、あの辻堂さんがこれほどラブコメ色の強い作品を書かれるとは驚きました。
物語の主人公は、仲良し夫婦の二人。
しかし、実は互いに隠し事があります。
しかも、それがバレてしまい、相手に嫌がらせや報復を受けていると思い込みます。
やがて、夫婦は表向きはいつも通りのラブラブを装いながら、殺し合いにまで発展していくです。
「バレて殺されるくらいなら、先に殺してしまおう」と、お互いが計画を立てるようになるのです。
しかし、何を試みても一向に上手くいきません。
相手の殺意に感づきながらも警戒し、平静を装って暮らす日々。
相手の腹を探り、計画を読み合う様子がユーモラスに描かれ、殺伐としたシリアスなテーマでありながらシュールな笑いへと昇華されていて、軽妙でとても読みやすかったです。
最初は、「少し懲らしめてやろう」という程度の報復から始まった計画が、次第にエスカレートし、やがて派手な殺害計画へと変貌していく展開も見ごたえがあります。
あとがきを読んで納得しましたが、本作はお二人の関係性と強い信頼があってこそ成立した物語なのだと分かります。
物語は夫視点と妻視点が交互に切り替わり進行しますが、夫側の計画を藤石さん、妻側を辻堂さんが執筆されたとのこと。
あの手この手で相手を殺す計画を立て、実行に移そうとした直後に視点が交代し、「どう危機を回避するか」を相手に委ねたそうです。
そして、上手く危機から脱すると、今度は返し刀で相手を追い詰めて……という「殺し合い」を繰り返す、リレー形式による連歌のような仕掛けになっています。
言ってしまえば破天荒なストーリーですし、ここまで殺伐とした夫婦関係を思うと現実離れした結末かもしれませんが、それも「ラブコメ」というジャンルに徹しているからこそでしょう。
もちろんミステリとしてのサスペンスフルな展開やハラハラ感、鮮やかな伏線回収も備わっています。
「そんな馬鹿な!」という野暮なツッコミは横に置き、上質なミステリ風味のラブコメとして飛び込めば、間違いなく楽しめる傑作です。 -
Posted by ブクログ
ネタバレこの物語は、探偵・刀根美聖(とね みさと)と助手の田坂が、二人で解決してきた過去四つの事件を振り返る「思い出話」を軸に進んでいくストーリーだ。
ある日、刀根は助手として12年間ともに過ごしてきた田坂に電話をかけ、「これまで対峙してきた4つの事件を整理したい」と切り出す。
語り手は田坂で、2人が初めて出会った12年前から現在に至るまでを、時系列順に思い出しながら事件を振り返っていく。
そのため、物語の中で新たな事件が進行しているわけではない。
探偵と助手が過去を回想する様子を、第三者の立場で聞いているような構成が新鮮で面白い。
さらに印象的なのが、12年も前の出来事にもかかわらず、田坂の記憶が異様なほど詳細なことだ。
一言一句まで正確に語られる違和感が、物語の奥に不穏さを滲ませていく。
よくこんな細かいところまで覚えとんな!
4つの事件はいずれも、ラスボス的存在である明松に繋がっており、それぞれ犯人は捕まり解決している。
しかし、最終章で物語は一気に反転する。
これまで過去から現在へと語られてきた出来事を、刀根が「本当は違うんだろう?」と現在から過去へ遡り、真実を暴いていくのだ。
明かされる真相は衝撃的だった。
4つの事件すべての真犯人は、助手として刀根を支えてきた田坂自身だったのである。
思わずページを戻して確認してしまった。
巧妙に隠蔽された真実に、刀根も気づきながら証拠を掴めず疑念のまま留まっていた。
すべては12年前、田坂が刀根と出会い、恋に落ちたことから始まっていた。
田坂は理想の探偵像を刀根に重ね、完璧な探偵に仕立て上げるため、裏で殺人を重ねていたのだ。
あの電話は思い出話ではなく、田坂を追い詰めるためだった。
電話を続けながら刀根は自宅へ戻り、目の前にいる田坂に、通話越しで自首を促す。
すべてを読み終えて気づく。
この本の表紙に描かれた景色は、追い詰められた田坂が、自ら命を絶つ直前に目にした最後の光景だったんだ。
そう思うと、12年間支えてくれた田坂が自分のために殺人を犯し、目の前で自害されてしまう刀根が可哀想でならない。 -
Posted by ブクログ
コミカルなのにスリリングな展開の連続で、頁を捲る手が止まらなかった。
“少し痛い目を見ればいい”程度の気持ちが、最終的には殺意を持って罠を仕掛け合う程の憎しみに変わる。
一つ屋根の下で繰り広げられる夫と妻の応酬に慄く反面、その回避能力の高さには思わず笑ってしまった。
本来はシリアスな場面のはずなのに、なんでか毎回笑えるんだよねえ。
やってる事が平凡な夫婦のそれじゃないからかも。
いくらなんでもこの二人、優秀すぎるもんな。
というか著者二人の競作っていうのが面白い。
罠を仕掛ける人間と回避策を捻り出す人間が違うので、この先どう転ぶのか予測できないところが楽しい。