前田英樹のレビュー一覧

  • ベルクソン哲学の遺言

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    遺言で「私は公衆に読んでもらいたい著作はすべて刊行した。そこでそれ以外の講義録や講演録、手紙の類の出版は禁じる。もしこの禁止を(自分の死後)破った者がいた場合妻と娘に裁判に訴え出て貰い、出版されたものの廃棄を要求する」なんて言った哲学者がかつていただろうか。びっくりした。
    普通哲学者の全集が出る場合講義録や講演録や手紙の類も含まれるし、ハイデガーのように生前から自分で出版するよう働きかける哲学者もいるのに。
    これはもう「持続において思考する」ベルクソンだからこその配慮であり、その人物の著作物なら何でも読みたいと思うのは人間のさがだとも思うので、その他の研究者にはできないものだった。ベルクソンは

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    2025年01月26日
  • ベルクソン哲学の遺言

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    前田英樹の著作からは、いつも深々とした読後の余韻と、大切なものに触れさせてもらったという実感をもらうことができる。

    やや図式的にまとめてしまえば、人間の知性は物質の解明には役立つが、生命、精神の解明には役に立たない、そのためには直観が必要ということを、最も明晰に語ってくれたのがベルクソンであるということを、味わい深く解説してくれている。

    一部引用する。

    数学が作り出した微分の観念は、純粋な持続への全体的な直観から生まれている。が、この直観は科学になることによって、元の直観が捉えていた運動、持続を犠牲にした。
    哲学とは、このような犠牲への抵抗でなくて何だろう。物質の、身体の、「人間的なもの

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    2024年11月07日
  • 保田與重郎の文学

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    とてつもない読書体験だった。
    一冊の本読み終えて、これほど深い感銘を受けたことがこれまであったろうか、とわが読書人生を振り返させられた。

    ここに描き出された保田與重郎という人物のなんと魅力的なことだろう。
    文学の歴史を語っても、美術の歴史を語っても、凡庸な学者が教科書的に知識を羅列すると全く対照的に、物事の本質と核心に真っ直ぐに向かい、それを剔出してきて、端的に示す。
    そのようにして示されたわが国が守るべきものは、「日本」ではなく「くにがら」である。
    そのくにがらとは、天照大御神がその孫に授けた「稲穂の神勅」に始まる。この「事(言)依さし」によって、神と人が共に働く。米作りをする。その勤労の

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    2023年11月30日
  • 日本人の信仰心

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    ずっと積読だった本を、日本人の原点について考えていてあらためて手に取り、読んで深く心を揺さぶられ、かつ、驚嘆した。
    日本人には宗教あるいは信仰心と呼べるものが希薄、というイメージが浸透しているが、著者はそうではないと言う。
    日本人にも信仰はある、などという軽々しいことを主張しているのではない。
    日本人の宗教には経典という形でまとめられた教義がないために宗教の存在が疑問視されるが、ことは逆さまである。日本人の信仰はその立ち居振る舞い、行動、とりわけ祭りという営みの中に端的に表現されているのだという。
    そして祭りの根源は、年祈祭であり、新嘗祭であり、とどのつまりは稲作民が神に祈り感謝し、神とともに

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    2023年08月20日
  • 独学の精神

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    二宮尊徳のことから始まって目から鱗の連続だった。自らの無知を恥じ入るばかりだ。目次から内容が予想できなかったここ最近初めての本である。最後は具体性をもって、幸福と平和の本質に迫っていた。

    ・畏怖や讃仰のないところに、教育は成り立ちようがない。
    ・人生のなかでほんとうに考え、学んだことは、みな口には出し難いものだ。
    ・国際人である必要など少しもない。
    ・進歩の思想ほど退屈なものはない。
    ・何から何まで人任せで、あれが旨いだのまずいだのと言っている。このことが、精神の独立性に影響を与えないはずはない。
    ・戦争の残酷さ、怖さを伝えるのは逆効果だろう。
    ・努力して生きることへの根本からの自信のなさが

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    2013年05月27日
  • 独学の精神

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    民芸品は芸術作品なのか、もやもやしていましたが、著者は明快に示してくれます。著者の価値観に共感できる人には、星5つ

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    2011年06月12日
  • 独学の精神

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    ほんとうに大事な事は何ひとつ教えることなどできない。
    学ぶことは身ひとつで生きる自分が学ぶというあり方でしかない。
    こうした単純で大切な事実について、その当たり前の事実が行き着く先について、根っこから考え抜く。

    学問とは生きるために必要な事であり、それこそが大学で学ぶべき「教養」というものであると思う。

    この三章で建築について少し焦点を当てているが、建築以外の人が語った方がその真理に近いと思う。

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    2009年10月04日
  • 愛読の方法

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    趣味としての読書を排し、真理探究としての学問のための読書を排し、人としてどうあるべきかの読書を説く。読むことで考えなくなる。多くを知っていることで人間を知った気になる。「正典を持てる人生は幸せかな」という内田樹の言葉を噛みしめた。著者が死んでいる著書と向き合うというのも大事な観点だ。

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    2021年03月04日
  • 剣の法

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    この本は、新陰流の秘伝書と言ってもいいのではないかというくらい詳細に技の描写がされている。また、個々の技の解説にとどまらず、全体としての技の成り立ちや、刀身一如の意味など剣の道を俯瞰的に描かれており非常に面白かった。

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    2014年05月10日
  • 独学の精神

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    文通を通して意見交換した「剣の思想」とは
    打って変わってこの本は遠慮のない文体なので
    読みやすいし気兼ねなく反論を覚えたり共感したりできる
    読み出しの「まえがき」からして愉しく読み出せた

    人間は産まれると同時に辺りを探り相手と出合うことの
    独学によって自分の存在を確認してきた

    それが歴史のある縄張りほど責任転嫁と依存に逃げ込むための
    官僚制度に頼ることになる
    それは結局騙された形での
    暴力支配による恩恵に浴することを願っているのだ

    学問が外目線で始まると単なる物知りの知識になる
    学問を冒険にできれば出合いを切磋琢磨にして発見をつなげて
    人生と宇宙を舞台に遊ぶことができる

    この点で前田さ

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    2014年03月31日
  • 民俗と民藝

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    柳田國男の民俗学、柳宗悦の民藝運動、それぞれの活動を並行して捉えつつも、その源泉が同じであるとする著者の主張はなるほどなと感じる。そこにはかつて多くの日本人が心の中に持っていた独特の自然観、生命観があるように思う。

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    2013年06月06日
  • 独学の精神

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    二宮尊徳や本居宣長といった人物を取り上げながら、学ぶということについて、思索をめぐらす一冊。異端の学者による極端な説が開陳されるのかと思いきや、述べられている内容はうなずけるものが多い。特に、第三章の職人の話題はおもしろかった。一人ひとり人間が違うからやり方も異なるという話は、当たり前ではあるのだが、普段見過ごしていることだなと感じた。

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    2013年06月03日
  • 独学の精神

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    マニュアルに頼りすぎてるよな~と思う。
    もっと頭を使って、試行錯誤して、自分にあわせた技を身につけ磨きをかけなきゃと思う。

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    2011年06月02日
  • 独学の精神

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    [ 内容 ]
    漢字が読めない、歴史を知らない、計算ができない…大学生の「基礎学力」のなさが言われて久しい。
    だが、「教育」に過剰なこの国の若者が「学力」を欠いているとは驚くべきことではないか。
    なぜ私たちはかくも「無教養」になったのか。
    本書は、現代の日本人が見失った「独学の精神」をめぐる思索である。
    「ほんとうに大事なことは何ひとつ教えることなどできない」「学ぶことは身ひとつで生きる自分が学ぶというあり方でしかなされえない」―こうした単純で大切な事実について、その当たり前の事実が行き着く先について、根っこから考え抜く。

    [ 目次 ]
    第1章 身ひとつで学ぶ(金次郎の独立心;学校嫌いこそ正し

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    2014年10月30日
  • 独学の精神

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    独学とはなんぞや、に明確な定義を与えている。
    面白い。二宮尊徳、蘭学、朱子学、儒学。
    基本的な史実から、独学のあり方を提示している。
    必読。

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    2010年07月06日
  • 独学の精神

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    正直、やや読みにくい文章だと感じた。しかし、筆者も書いているように、私立中学の試験問題などにも出される、いわゆる「読解力」を試される文章構成ということなのだろうか。筆者自身が「読解力」を試すことのおかしさをやや皮肉めいてかいている個所はおもしろい。
    全体を通して、勉強法や教育論というよりは、筆者が日頃感じていることがつづられていると思う。最初の「二宮金次郎」の身ひとつで学ぶという項は勉強になった。

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    2014年09月03日
  • 独学の精神

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     建築、大工、農業がいかに学問とむすびついたものであるか著者自身の言葉で書いてあり説得力がある。しかし近代西洋の合理的考えをやたらと排斥しているのがいただけない。東洋と西洋の間をとるのがいいのだと思うが。

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    2012年11月08日
  • 独学の精神

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    目次より
    1身ひとつで学ぶ
    2身ひとつで生きる
    3手技に学ぶ
    4農を讃える

    教育、学校で教えることよりも、独学で自分から学ぶことの必要性をとく。二宮金次郎のことが語られている。「大学」を読む、繰り返し読むこと。過酷な環境の中でも学んだことはすばらしい。
    後半の3章4章は身にしみた。考えるおろかさ。
    職人技を教えない理由→勘は一人一人皆違う。道具、材料、自分にあった遊びなど、
    勘の手技教えられない、身一つの感覚を勘という。ごまかしの聞かない自分ひとりの技に尽きる。
    vs
    物に即した正確さ。

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    2012年07月21日
  • 独学の精神

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    教養ある人間になりたい、と思いました。

    二宮尊徳がひたすら読んでいた「中庸」など、読んでみようかなと思いました。

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    2011年02月22日
  • 独学の精神

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    古典は読まれることによってますます新たな古典になる。少なくとも繰り替えし読むに値するような本は、大工にとって木と同じである。
    教育について二宮金次郎、内村鑑三らを例示して述べている。

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    2009年10月07日