荻上直子のレビュー一覧
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ネタバレ僕=山田は特殊詐欺の前科で出所したばかり。縁があってハイツムコリッタに住むようになり、何気ない日々の中で南親子や島田、溝口親子、ホームレス、職場の社長や中島さんなど関わるようになる。
幼少期の思い出は良いものではないが、ある日役所から顔も覚えていない父の遺骨の引き取りを頼まれる。最初は拒否したが、周囲の人たちの言葉から複雑な気持ちのまま引き取ることになり、ラストではみんなと見送りの儀式をしながら、両親を許す気持ちや、幸せを求める自分を許す気持ちが持てるようになる。
ものすごい事件があるわけではないし、生きる意味なんて誰もわからない毎日だけど、山田がそれで良いと思えた時から空気が晴れて、前を向 -
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心と身体が疲れている今
ちょうどいい本に出会えた
内容もページ数もちょうどいい。うん。
心の拠り所って本当に大事だなぁ。
趣味でも人でもモノでも
私たちが日々の生活の中で壁にぶつかったり、辛いことがあっても、心の拠り所があれば、そこでホッとしたり、心の栄養をもらって元気になって、またがんばろうって思える。
ネットで「心の拠り所」=「安心基地」って書いてあったなぁ。わたしの心の拠り所ってなんだろ?
中編2作 収録 「モリオ」と「エウとシャチョウ」
主人公のモリオもエウも、社会生活に息苦しさ 生きづらさを感じていて、ひょんなことから「心の拠り所」に出会えるお話。モリオには「足踏みミシン -
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高校生の時に母親に捨てられた主人公(山田)。
出所したら川べりに住み、何かを覚悟したように、ひっそりとつつましく過ごしたいと思っていた。
北陸地方にあるイカの塩辛工場に仕事が決まり、社長の紹介で、ムコリッタという名前の二階建て木造アパートで暮らすことになる。
時おりよみがえってくる遠い昔の記憶を無理やり消し去りながら、殺風景な部屋で暮らし始める様子に、せつなさがこみ上げてくる。
一風変わった、わけありの住人たちと関わりはじめる中、父親かもしれない男が孤独死したらしいので、遺骨を引き取ってほしいという連絡が入り、少しずつ少しずつ、山田の周りが変わり始める。
アパートの住人全員が家族のようにふ -
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映画監督でもあり脚本家でもある荻上直子さん。映画『かもめ食堂』が大好きで、私にしては珍しく3回も再見している。今回も彼女の世界観に酔い痴れた。
故郷の町に大きな川が流れていたからなのか、何となく川べりに惹かれる。海とは違い、川に沿って住居が立ち並び暮らし向きがかいま伺える距離感が良いのだ。
川っぺりに佇む築50年の「ハイツ・ムコリッタ」が物語の背景となる。まず表紙の裏にムコリッタの意味が小さな文字で説明されていた。「ムコリッタ」は「牟呼栗多」と書いて仏教用語における時間の単位のひとつ、ここでは「ささやかな幸せの時間」という意味のタイトルとなったのだろう。換算すると1ムコリッタは48分。つまり人 -
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ネタバレ足踏みミシンを踏む母の傍らで、じっと聴いていた心地よいリズムとほんのり漂う油の匂い。
私の母もかつて足踏みミシンを使っていたので、私の中の記憶とシンクロする。
母が幼いモリオのために選んだ布は暖かい春の匂いのするような花柄。
亡き母から譲り受けた足踏みミシンで、今度はモリオがスカートを縫う。
「ひだり布地屋」のおばさんと黒猫の三郎さんが選んでくれた花柄の布で。
モリオにとって足踏みミシンを踏んでいる時が唯一の、大好きだった母と向き合える穏やかな至福の時。
人は安らぎの時間が持てれば心地好く生きていけるのかもしれない。
ちょっぴり不思議で、心の奥をきゅっと掴まれる文章がたまらなく好き。
もう一 -
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女性映画監督で、小説も上手いというと、西川 美和さんがいる。 映画「ゆれる」、「ディァ・ドクター」も良かったし、小説「きのうの神様」はすごく良かった。 荻上直子さんもまさにそうだ。 「モリオ」は、映画「かもめ食堂」「めがね」「toilet」の荻上 直子監督の第1作目の小説。 「モリオ」と「エウとシャチョウ」の2作からなる。 まず、表紙。 この青年は、映画「toilet」の次男モーリーそのもので驚く。 じゃあ、お話はというと、ミシン、スカートといったモチーフは同じでも、全く違うお話だった。 モリオは人づきあいが苦手な会社員。 母が亡くなり、遺品整理をしてたら、古い足踏みミシンを見つける。 小さい
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映画見てないのだけど、じんわり優しい時間が流れていて好きな感じだった。
刑務所から出てきた山田が、自分の人生に意味を見いだせず、身を寄せた川っぺりのハウスムコリッタ。風変わりな人達が肩を寄せるように住んでいるその場所で、山田は少しづつ自分を取り戻していく。再生の物語は沢山あるけれど、なにか劇的に変わるでなく、こんな風に小さい幸せを噛みしめるように生きることが救いになるのは、すごく自然な気がして、読んでて安心した。
ムコリッタって仏教の時間の単位で48分のことらしい。
何でもない1日に少しづつの変化。その変化の中にひとりじゃないと思えるひととき。そんな変化はただ生きて、積み重ねることでやって