青木冨貴子のレビュー一覧
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敵国人捕虜に生体解剖を行い、実験に供される人間を隠語で「丸太」と表現していた731部隊。人間を人間と思わず、言葉通り単なる実験材料として考えていたことを表すいい例だ。
その731部隊を指揮していたのが石井四郎。この本は戦後50年経ってから発見された石井直筆のノートを読み解き、彼の人間像に迫った本だ。
731部隊で行われていた実験がどうようなものなのか、という問題はそれほど書かれていない。それを期待して読み始めたので最初は拍子抜けしたが、読み進めるうちに戦中戦後の裏面史が浮かび上がって、目が離せなくなり、500ページを超える分厚い本なのに1日で読んでしまった。
主題は石井四郎がたどった人生だ。とくに終戦後、米国と交わされた密約によって、戦犯確実な石井がいかにそれを免れたのかが書かれている。
中国戦線において実戦で使用されたペスト菌については、とくに詳細なデータを持っていたようだ。培養などの実験は研究室でもできるが、実戦でしかわからないこと、例えば空中散布では効果がないことや、ネズミや蚤を用いた効率的な散布法、罹患してから死亡するまでの経過など、米国でも持っていないデータを石井は持っていた。
石井自身も裁判にかけられた場合、戦犯で死刑確実ということはわかっていた。だから部下にも「秘密は疑獄まで持って行け」と厳命していた。しかし戦後の冷戦下でソ連に731部隊のデータが渡ることを恐れたアメリカが、そのデータを寄こすことを条件に、部隊に属していた者たちを裁判にかけないことを約束した。
簡単にまとめてしまうとこんな感じだが、中身は濃い。石井に対する尋問はアメリカだけでなく同じ戦勝国のソ連も行ったが、アメリカの入れ知恵でソ連を欺き、結局アメリカ一国が一人占めした記述も興味深い。
石井は戦後GHQにより斡旋された売春宿の経営者となっていた。石井のデータは貴重だが、石井の人格に対して尊敬の念は全くないというアメリカの意思表れだ。
生き残った731部隊の医師たちは、罪を問われることなく戦後の医学界で出世していった。薬害エイズで有名になったミドリ十字も、石井の部下の一人が設立した会社だ。戦後しばらくして生活に窮するようになった石井が、ツテをたどって就職させてくれるように頼むが、無碍に断られている。元部下も石井のことが嫌いだったのだろう。
ただし、731部隊の非人道的な行動を石井個人の人格に帰してはいけない。731部隊には石井の郷里の人間が大勢配属されていた。それは前線への危険な任務へ郷里の人間を送りたくないという石井の配慮からだし、給料も良かったので、郷里の人間は石井のことを郷土の誇りと考えていた。非人道的な実験をしていなければ石井にも、面倒見のいいおじさん、という評判が待っていたかもしれない。
怖いの戦時下でもたらされる感情の麻痺だ。注射後に何時間で死ぬかとか、病変の変化を生体で観察するとか、倫理的に許されない行為も、それが常態化してしまえば感覚が麻痺してしまうはずだ。動物実験と同じように人体実験を考えていたのだろうし、そう思いこむうちに、脳が納得したのだと思う。
だから731部隊の狂気は石井個人の人格に帰するのではなく、集団ヒステリーとして考えることが大事だと思う。
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第二次世界大戦時に満州で秘密裏に行われていた細菌の人体実験及び細菌兵器開発を主導した石井四郎を紐解く内容。田舎の秀才がどのようにして731部隊を作り上げたのか。もちろん勉強はできたのだろうがそれよりもマーケティング能力が優れており、細菌兵器の重要性を当時の軍にうまくプレゼンしたことにより自身の階級もそうだがやりたいことをトントン拍子にやったのだろう。
戦後の731部隊関係者とアメリカ、ソ連それぞれの思惑で秘密裏に交渉していく様は当時の混沌とした状況も相まって緊迫感があった。戦犯として扱われないためにアメリカに媚を売ろうとする石井四郎やその部下たちもなんか情けない。アメリカ側も731部隊の実験結果を得るためにソ連を出し抜いたり交渉するのも正義って感じゃないよな。
多くの資料が作中に出てきており、これを全て探し出し読んで文を書いた作者がすごい。 -
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岩崎弥太郎の孫であり、戦後日本に「エリザベス・サンダーズ・ホーム」という孤児院をひらいた沢田美喜。
彼女の伝記かと思って読んでいたが、そんな易しい内容ではなかった。
本書で明かされることはなかったが、実際には知られていない陰謀めいたことが裏ではあったのかもしれない。
沢田美喜本人よりも、その周辺の人物や事情について多く書かれている。
沢田美喜がなぜ孤児院をひらいたのか、その真意は分からないが、財閥の孫でコネクションや財力はあったにせよ、賞賛に値する素晴らしい行いだったと思う。
本書を読んで、当時の事件に興味を持ったので、松本清張の「日本の黒い霧」を読んでみたいと思う。 -
Posted by ブクログ
細菌戦における防御(ワクチン)のみならず、人体実験を経て攻撃兵器まで作成していたという731部隊。
満州に巨大な実験施設を作り、膨大なペストノミを飼育し、実験を行なっていたわけだが、公には出来ない秘密部隊が如何にして、その承諾と資金を調達したのか。
そこには、石井四郎という部隊長の存在が見えてくるわけだが。
戦後、彼が戦犯として東京裁判に名を連ねることはなかった。何故だろうか、というノンフィクション。
敵国が所持する圧倒的な力があるとしたら、それを手にしたいと思うのは人間の欲である。
自分をアピールすることに長けた石井が、大将になるべく、無辜の民を次々と殺していくことに、一種の悪鬼を想像させる。
そして終戦の折に、自己保身のため全てを焼き払い、自分は自宅でGHQとせせこましく交渉に転じる姿を見ると、もはや哀れでしかない。
731部隊の存在を、知らなかった自分がいる。
こうした所業が、ある日何気なく手に取って知るような、今尚そんな立ち位置であって良いのだろうか。
名を残す、という言葉がある。
石井四郎が残したものは、彼が望んだ名声よりも何倍も醜悪な結果として継がれてゆく。 -
Posted by ブクログ
ネタバレ学生時代はこの領域の本、映画はよく読み観たもの。開高健、近藤紘一、一ノ瀬泰造、映画は『地獄の黙示録』『ディア・ハンター』『キリング・フィールド』(『ランボー』もか?!)、大学3年の時はオリバー・ストーンの『プラトーン』が封切られゼミの教授とゼミ仲間と一緒に鑑賞しにいった。それらを通し当時の冷戦構造を端的に刺激的に知ることが出来た(理解できたかどうかは別として)。
本書は復刊版を本屋で見つけて読んでみたが、初版は1981年。1985年に文庫化されるなど当時も目に触れる機会はあったと思うが、タイトルからスル―していたのかもしれない。学生の頃は”ライカ”に、なんの価値も見出していなかったし(そもそも高嶺の花だ)。
本書は沢田教一というカメラマンの半生を追いながら、著者の徹底的取材によって改めて戦場の生々しい様子を追体験できる内容にもなっていて非常に読みごたえがあった。
が、本書に求めるは学生の頃に触れた諸作品のような当時の臨場感ではなく、なぜ青森の一青年がベトナムを志し、なぜ命を落とすまで現場でシャッターを切り続けたかを知りたかったから。その点も著者の丁寧な取材によって学生時代の沢田の置かれた環境から解き明かし、多くの証言を交えて、沢田の長くはなかった一生を見事に浮彫りにしている。
写真集『津軽』をものした小島一郎が沢田と同郷であり、高校生の沢田は小島が撮影に向かう姿を目にしていたという。
「小島一郎のこの厳しい眼が、沢田教一の眼をつくっていった」
というのは素敵な表現だ。さて、その視線が見つめる先は?!
「展覧会に出すための写真を撮りたい。」
沢田がベトナム入りを目指した理由は極めて明快だった。当時のジャーナリズムの在り方も克明に描かれている。「ベトナム戦争は一方でアメリカのジャーナリズムを育てた」と著者は記し、沢田以外にも戦場のレポート、写真で世界に名を馳せた記者・戦場カメラマンについて多く触れている。サワダの良きライバルだったエドワード・アダムスにも取材し、彼が挙げるベトナム戦争における最もすぐれたカメラマン3人として、ラリー・バロウズ(「ライフ」)、アンリ・ユエ(AP)、沢田教一 を紹介し、しかし「その3人ともが戦場で命を落としている」と書く。
沢田の言う「展覧会に出すための写真」を撮れたカメラマンでさえ、その1枚で満足せず、次の1枚、また次の1枚と貪欲にのめり込んでいく様が痛々しい。沢田を知る関係者の証言が、沢田ら戦場に散ったカメラマンたちの気持ちを代弁している。
「戦争っていうのは、本当にひきつけられるんですよ」(元毎日新聞徳岡孝夫)
「ベトナム戦争を取材していた者にとって、戦場ほど面白いものは他にないんだ。今ここにいてボート・ピープルを撮るといっても、死にそうな母親や子供たちを撮るばかり。毎日毎日同じ写真なのさ。でも、ベトナムではいつも全く違う写真が撮れた。次に何がおこるかわからなかったからね」(元AP通信カメラマン、ヒュー・バン・ネス)
かのロバート・キャパも盟友三木淳に、
「一晩考えたが、俺の血がベトナムに従軍するのを止められないんだよ。悪く思うてくれるなよ」
と言い残し、ハイフォン南方タイ・ビン地区で地雷に触れ40歳の人生を閉じている。
一度、戦場へ身を投じた報道カメラマンの血は、次の戦場へと自らを駆り立ててやまない。メディアは、そうした彼らの習性を利用した、とまでは言わないが、持ちつ持たれつつ互いに「ジャーナリズムを育てた」のだろう。
折しも今日(2017/4/21)の日経新聞のコラム【春秋】は、近頃廃刊を決めたメキシコ北部の町シウダー・フアレスの地元紙のことを紹介している。廃刊の理由は、
「人生には始まりと終わりがあり払うべき値段がある。もしその値段が記者の命なら、同僚たちにこれ以上その代償を払わせるわけにはいかない」
コラムは「なんとも凄絶な文章をかかげ」と書く。その背景は「麻薬戦争」だそうだ。 麻薬組織の利権争いが激化、「下っ端のギャングや警察、軍までも入り乱れて激しい戦いがくり返され、その中で多くのジャーナリストが犠牲になってきた」からだという。
現場の様子を伝え世に問う。それが民主主義社会における報道、ジャーナリズムの使命だ。伝えることで彼らは世の中を変えることが出来ると信じ、命を賭して真実(スクープ)を捉えようとする。
がしかし、果たして結果はどうなんだろう…。 以下は再文庫化(2013年)にあたっての著者の「あとがき」からの一文。
「あらためて思うのは、米国がベトナムでの敗戦から何も学ばなかったのではないかといことだ。湾岸戦争、9.11テロ、アフガニスタン紛争、イラク戦争……。シリアはもちろん、中東での果てしない憎悪と殺戮の連鎖は止まるところを知らない。」
現場からの命がけのレポートや渾身の1枚は、沢田が目指した「展覧会」を飾るだけで終わったのだろうか。 -
Posted by ブクログ
主な特徴として「読み始めて6分で熟睡できる」
ということが挙げられる(- -;
いや、内容がつまらない訳ではなく、
いつも小説ばかり読んでいる我には
固くて重い内容が難しすぎて...(^ ^;
ただ、あまり読みやすい本ではない気がする。
そこここに「〜だったろう」「〜に違いない」みたいな
作者の主観が入り込んできて...
「ドキュメンタリー」として読むにはやや邪魔くさい(- -;
文体も「ルポ風味」になっているが、
テーマがテーマだし、事実だけを淡々と書いた方が
内用がスムーズに頭に入る気がする。
新しく「発見」された石井氏の残したノート二冊は、
確かに貴重な資料ではあろうし、晩年の石井氏の
「小市民っぷり」が意外で面白い(^ ^
が、タイトルの「731」にはそぐわない気も。
タイトルから「731部隊の悪行を詳らかにする」
ような内容を(勝手に)期待していたが...
この内容だと「石井 四郎 - その知られざる素顔 -」
みたいな方がしっくりくる感じだ(^ ^; -
Posted by ブクログ
日本陸軍細菌戦部隊長であった石井四郎を中心に、部隊の成り立ちと戦後の成り立ちに迫ったノンフィクション.特に、戦後、アメリカとの駆け引きにより戦犯に問われることなく生き延びていく様を見ていると、昔からアメリカというのはダブルスタンダードの国であったことが良く分かる.
ただ、全体を通して何を目的としたノンフィクションなのかが分かりにくい.事実をここまで掘り起こして時系列に整理した事のすごさは分かるが、そこで力尽きている.
巻末の解説で、佐藤優さんが「対象との距離感」という言葉で、これを表現しているが、私には、俯瞰し過ぎと感じられた.
だから、☆3つ(興味あるテーマなら読むべし). -
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読む価値なし
確信しました。「悪魔の飽食」で書かれていることは事実ではない。日本を貶めるためのプロタバンダです。根拠が定かでない物は信じてはいけません。この本も読む価値はありません。