青木冨貴子のレビュー一覧
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"うだるような暑さの今年の夏、終戦の時期に読んでみたいと思って手にした本。小説のように読者をぐいぐいと引っ張る内容で、一気に読んだ。第二次世界大戦・太平洋戦争時に満州にあった731部隊の闇の歴史をひもとく。細菌戦部隊である731部隊の部隊長石井四郎氏は戦犯とはなっていない。GHQ、アメリカとの駆け引きがあったということを、丹念な取材を積み重ねてひもといていく。参考文献も読んでみたくなった。この部隊に関する書物で有名なのが「悪魔の飽食」。この本の登場人物も書籍を残している。その人たちの本も読みたくなる。
そして、一言だけ。戦争中には多くの人が亡くなった。戦争そのものがどういうものか、実 -
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[真暗の気脈]太平洋戦争中に生体解剖をはじめとする非人道的な行為を行いながらも、戦犯とならなかった石井四郎を筆頭とする731部隊。その裏を探った著者は、石井部隊とGHQの間に繰り広げられた、明るみにされていない裏取引にたどり着く......。戦時・戦後に股がる日本の暗い闇に迫った作品です。著者は、ニューズウィーク日本版のニューヨーク支局長を務められていた青木冨貴子。
石井直筆の2冊のノートを見つけ出す青木氏の取材力にまずは頭が下がります。既に敗戦から半世紀以上が経過し、その間に研究が進められていてもなお、ここまで新しい発見を目にすることができるとは。感嘆せざるを得ない情報量で副題のとおりに -
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ネタバレパケナムという名前は、ウィロビー/キーナン/カーなどと並んで近現代史にしばしば出てくる。とにかく「うさんくさい外人」というイメージであったが、本書によりはじめて、戦後史に彼の果たした大きな役割が明らかになった。
神戸に生まれ、名門貴族一族に連なる英国人で有りながら、実は明治日本人としての気質を色濃く持っていたパケナムは、吉田茂、マッカーサー経由でなく、別のルートから昭和天皇に然るべき情報を伝え、更に天皇のメッセージを米国の中枢にダイレクトに伝える貴重なパイプとして活躍した。結果戦後日本の方向は相当に変わったわけである。
青木富貴子氏は、パケナムの真実を追い求めて、世界中を綿密に取材し、資料を集 -
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2005年の単行本も読みましたが、文庫本で出ていたのを昨年2月に購入→積読、今頃になっての再読です。
生半可な付け焼刃の研究でないことは読んですぐさま分かりますが、著者の執拗な追及はついに2冊の新資料の発見に至るまでとなり、いやが上にも読む者をして俄然ヒートアップさせます。
太平洋戦争中に中国で、生きたままの中国人を解剖したりして、細菌・化学兵器の開発のための実験をした731石井四郎細菌部隊については、私たちは、すでに平岡正明の『日本人は中国で何をしたか』(1972年)や森村誠一の『悪魔の飽食』(1981年)を先駆として、今では数十冊の関連文献を持っていますが、青木冨美子はそれにも飽き足ら -
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遠い昔、森村誠一の『悪魔の飽食』を読んだことがある。無知であったが故に、まさに震撼した。随分久しぶりに、その731部隊に関する著作を読んだ。不勉強な小生は青木冨貴子さんというフリーのジャーナリストを存じ上げなかった。この本も文庫になるまで知らなかった。本作で著者は、人体実験の話や満州でこの部隊が何を行ってきたかについては、ほとんど触れていない。むしろそれを周知の事実として(大前提として)、彼ら731部隊の医師達が戦後、戦犯容疑をいかに逃れることに成功したかをアメリカ公文書館の資料や石井四郎直筆のノートを駆使して読み解いていく。後に薬害エイズで批判を浴びたミドリ十字という製薬会社を創業した内藤良
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「海と毒薬」同様、なんとなく人体実験しているところだという認識であったところ、細菌を使った攻撃、その準備日としての人体実験をしていたことを理解。組織を率いた石井四郎の持つ背景、それを頼り許容する軍の事情、戦後のアメリカさえもこの研究結果の入手を望む様など、多角的に描かれる。
新しい資料の発見、一次資料の読み解き、人に会い足を使って情報を探っていく姿勢に尊敬の念。
事実でありながら、サスペンスのよう。731の関係者の口裏合わせの解明も興味深い。
最後、誰が誰だかわからなくなってきて飛ばし読みした。関係図の整理があればよかった。自分で描けばよかったか。。 -
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読んだ本 ライカでグッドバイ 清水富貴子 20250330
パルコの古本市で見つけて手に取りました。ベトナムの戦場カメラマン沢田教一をノンフィクションで追ったもの。昔も読んだと思うけど、改めて。
カメラが好きで、一時はアラーキー、森山泰三、ブレッソンに土門拳なんてのがアイドルで、一ノ瀬泰三や沢田教一なんかも好きで色々読んだり観たり。中でも一ノ瀬泰三を描いた「地雷を踏んだらさようなら」なんか邦画ベスト5に入りますね。
この「ライカでグッドバイ」は、戦場カメラマンとしてはエリートって感じの沢田教一を掘り下げている訳だけど、やっぱり危険に身をさらす人間てのはどこか意固地なとこや名誉欲に駆られ -
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731部隊を追いかけたルポルタージュ。
冒頭は、著者が千葉県の加茂へ取材へ向かったところから始まる。
著者は執筆までに相当に取材を重ねてきた様で、千葉県での取材のほか、膨大な文献や当時のメモの解読、関係者インタビューまであらゆる手を施して当時の様子を読み解こうとしている。
本書は、実際に足を運び、目で見て、読み解いた結果を、1つ1つパズルを埋めていく様に文章に書き起こしていく、その膨大な作業の末に出来上がったものだとよくわかる。
どちらかというと論文テイストな構成のためか、本書にはドラマチックに誇張した展開はなく、文献や検証に基づいた内容が淡々と記されていく。
脚色や演出が極力排除される -
購入済み
石井メモノートは必見
終戦間際から戦後に掛けての731部隊関係者の動向やアメリカ政府との免責交渉は興味深かった。
石井隊長の故郷の加茂人脈や京大閥、朝鮮戦争での米軍の細菌戦疑惑はもう少しち密に解き明かして欲しかった。 -
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トマス・コンプトン・パケナム、終戦後の占領期に「ニューズウィーク」東京支局長を務めた一人の民間人。
偶然に、彼が遺した日記を入手した著者は、コンプトン・パケナムが単なる特派員ではなく、宮内省の幹部(松平康昌)を通じて日本の皇室と繋がり、当時公職追放されていた鳩山一郎や岸信介といった後に首相となる大物政治家とも懇意の仲であったことを知ります。
一方で、「ニューズウィーク」本社の外信部長の役にあったハリー・カーン(後にダグラス・グラマン事件において贈賄計画に関わったコンサルタントとして名前が挙がることになる人物)を通じてワシントンとも繋がり、トルーマン大統領の特使として訪日し、後にアイゼンハワー政 -
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ベトナム戦争を撮った「安全への逃避(Flee to Safety)」でピュリツァー賞を受賞し、34歳でカンボジアに散ったカメラマン・沢田教一の一生を、関係者への取材により振り返ったノンフィクション。1981年に出版され、1985年文庫化、2013年にちくま文庫で復刊された。著者の青木冨貴子は本作品でデビューし、その後ニューヨークでニューズウィーク日本版の編集長を務めたジャーナリスト。夫は映画「幸福の黄色いハンカチ」の原作を書いたコラムニストのピート・ハミル。
沢田は、1936年に青森市に生まれ、東北のアメリカと呼ばれた三沢基地のカメラ店から、UPI通信社東京支局写真部を経て、ベトナム戦地へ「三 -
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敵国人捕虜に生体解剖を行い、実験に供される人間を隠語で「丸太」と表現していた731部隊。人間を人間と思わず、言葉通り単なる実験材料として考えていたことを表すいい例だ。
その731部隊を指揮していたのが石井四郎。この本は戦後50年経ってから発見された石井直筆のノートを読み解き、彼の人間像に迫った本だ。
731部隊で行われていた実験がどうようなものなのか、という問題はそれほど書かれていない。それを期待して読み始めたので最初は拍子抜けしたが、読み進めるうちに戦中戦後の裏面史が浮かび上がって、目が離せなくなり、500ページを超える分厚い本なのに1日で読んでしまった。
主題は石井四郎が