佐藤克文のレビュー一覧
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「求む男女。ケータイ圏外。わずかな報酬。極貧。失敗の日々。絶えざるプレッシャー。就職の保証なし。ただし、成功の暁には、知的興奮を得る。」私のところに来たら、まずは身近な動物で修行を積んでもらうことになる。試行錯誤の末に晴れて学位を取得したら、データロガーと一緒に、世界中の僻地に飛ばしてあげよう。そういう佐藤氏はバイオロギングという手法で動物の生態を研究している。
学校の教科書には鳥は恒温動物で爬虫類は変温動物だと書いている。しかしウミガメの体温は23℃でほぼ一定で逆にペンギンは深く潜るときに体温維持には最低限しかエネルギーを使わず酸素消費を抑えている。
ペンギンは深さ500m時間にして最大27分潜っている。ペンギンは息を吸い込んで潜り、10分ほどで空気中の酸素濃度はほぼなくなってしまう。その後どこまで息継ぎせずに我慢できるかは謎が残っている。空気を吸い込むと浮力がつき潜るにはマイナスなので最初に一生懸命羽ばたく。ある程度の深さに潜ると圧力で空気が縮みある深さで浮力と重力が釣り合うがペンギンはちゃんと潜る深さで吸い込む息の量を変えている。そして浮いて来る時にはヒレを拡げ浮力に任せて水中を滑空する。ペンギンカメラが捉えた8羽のペンギンがヒレを拡げている姿が写っている。そして水上に飛び出す時にはその高さに合わせて速度を調整している。
アザラシは逆に息を吐き出して潜る、というか沈む。アザラシは肺に貯めた空気ではなく血液中に蓄えた酸素を利用している。子育て中のアザラシは子供に泳ぎを教えるようにゆっくり泳ぎ、これまた後ろ向きにつけたアザラシカメラに後を追う子どもが写っている。
どうやってペンギンやアザラシに装置を付けるかというと、ペンギンの場合は足を傘の柄の様なもので引っ掛けゆっくり引っ張るとヨタヨタと近づいてくる。そこでさっとヒレを気をつけで足首はつま先を伸ばして小脇に抱えるとペンギンはおとなしくなる。頭にフードをかぶせて固定すれば体重も測れる。アザラシの場合も頭を袋に入れると大人しくなるのでそこに麻酔剤を入れて吸い込ませる方法が日本チームにより開発された。
ペンギン牧場の作り方。
南極に行って氷の上に柵を作る。氷に穴を開け海に入れるようにする。たまに
ペンギンを狙ってアザラシが来るのでできれば穴は二つ。ペンギンは普通コロニーを作っているが時々さまよっているのがいるので上記のやり方で捕まえて柵に入れる。牧場の様子を除きにきたペンギンがいれば後ろに立って追い立てると自分から柵の中に入ってくれる。海に潜ったペンギンは潜った穴に戻ってくるのでこれで牧場は完成だ。餌も自分で撮ってくるので必要ない。
題名になったのはバイオロギング研究者が増えたことでデータを集めてはっきりした。マッコウクジラからペンギンまで泳ぐ速度はほぼ秒速1~2mで一定している。これは筋肉の効率的な速度と関係していると予想し体の大きさとストロークを両対数グラフにプロットすると見事に直線に乗った。筋肉そのものの収縮速度が同じなら大きなクジラは移動距離が長いので周期はゆっくり、小さなペンギンでは速くなるというのが仮説だった。
仮説と実証実験というのが現代の科学の一般的な手法だが、バイオロギングというのは装置からして発達中の学問で、例えば南極の棚氷の下で深い層に餌がいっぱいあるなどもこれまで知られてなかったことが見つかっている。測定が先で仮説が後からついてくるあたり都度都度方向変換が必要でしかも南極の場合シーズンを逃すと次の実験は1年後で下手をすれば帰っている。なかなか大変な研究だ。 -
Posted by ブクログ
学校の教科書には「わかっている」ことばかりが並んでいるので、学校でたくさん勉強した人たちは、この世の中の大抵ことはもう「わかっている」はずだと信じて止まない。
ところが、本当のところ、教科書に書かれていることのすぐ外側には「わかっていない」世界が広がっているし、教科書に書かれていたことが、後になって実はあまり「わかっていなかった」ことがわかることさえある。
水族館などでお馴染みのペンギンやアザラシが、海の中で何をやっているのか。そんなことは、たしか生物の教科書のどこかに書かれていた気がするし、そうでなくても、とっくに誰かが調べているはずだ。そう思うのが普通だろう。
ところがこれが大違い。海の中の出来事のうち、私たちにわかっていることの方が少ないくらいだ。いくらハイテク機器を駆使しても、なお海の中のほんの一部のことしか知ることができない。本書はそのことを赤裸々に語ってくれる。
誰もが「わかった」風に思っていることが、実は「わかっていなかった」ことに気づいて、虚心坦懐に事実を探求し、成果を丹念に論文化する。学問は常にこういった地道な努力の上に成り立つ。本書は、そのことを丁寧に説明しつつ、その先にうっすらと見えてくる「知的興奮」の存在を、十分に示唆してくれている。 -
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佐藤克文さんの本は、エビデンスと自身の言葉がうまく混ざっていて面白い。それでいて過去への反省もあったりするので、著作は出来れば順に読んだほうがいい。
最新作の「サボり上手な動物たち」は、カラー写真も多く、「サボる」という、バイオロギングによって見つかった動物の「動かない」ことに着目している。チーターが速い(のを、はかりに行くエピソードも面白い)、なんてのは、ある瞬間にそういうこともある、というだけで、そうじゃない時間のほうが長いのだ。スナメリのソナーも、ときどききちんと音を出さないことがある。サボるというのは、適度に間引きして、生活のコストを抑えること。
しかしだから人間もサボろう、というのは自然主義の誤謬であると。あぶねえ、そう思っちゃった。でも動物は、死ぬほど頑張るときもある。とにかくこれからも、バイオロギングでわかっていく水の中の世界が楽しみすぎる。 -
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ネタバレバイオロギングサイエンス:
ペンギン、アザラシ、ウミガメなどの水生生物に"データロガー"を取り付け、
水中での動物の生態を分析する学問
ペンギン:
もぐる深さによって吸い込む空気量を調整している
深くもぐる時ほどたくさんの空気を吸い込む
空気量で中性浮力点を調整
中性浮力点:浮く力と沈む力が拮抗する状態
潜水浅い時:空気少ないため、中性浮力点が浅い→浅いところでエサをとりやすい
潜水深い時:空気多いため、中性浮力点が深い→深いところでエサをとりやすい
浮上する時は、体内の空気の浮力を使って浮上し、
ヒレを動かさずに滑空するように斜めに海面から飛び出す
アザラシ:
ペンギンとは逆に空気を吐き出してから潜る
身体から浮力をなくして、重力を使って水中を落ちるように潜り、
浮上する時はヒレを使って浮き上がる
研究体験談:
データロガーをつけたら、回収するのが大変
産卵期、子育て中など同じ場所に戻ってくる時期と習性を利用する
南極のペンギンは天敵がいないので警戒心が薄くつかまえやすい
(北極にはホッキョクグマという捕食者がいる)
ペンギンの巣には数万匹が一緒にいるので、見つけるのが大変
一回捕まったペンギンは近づくとソワソワするのでわかる -
Posted by ブクログ
ネタバレ[ 内容 ]
ペンギン、アザラシ、ウミガメなどの水生動物は、海の中でどのように活動しているのだろうか?
その生態は、直接観察できないため謎が多かった。
だが、今や日本発のハイテク機器「データロガー」を動物に直接取り付けることによって、本来の生息環境下で、己の生存をかけてきびきびと動き回る動物たちの姿が解明されつつある。
この分野では、教科書を書き換えるような新発見が相次いでおり、「バイオロギングサイエンス」という新しい学問が誕生した。
いま、生物研究のフロンティアは水の中にある。
[ 目次 ]
1章 カメが定温動物でトリが変温動物?
2章 浮かび上がるペンギンと落ちていくアザラシ
3章 研究を支えるハイテクとローテク
4章 アザラシは何のために潜るのか?
5章 ペンギンの潜水行動を左右するもの
6章 ペンギンはなぜ一列になって歩くのか?
7章 教科書のウソとホント
[ POP ]
[ おすすめ度 ]
☆☆☆☆☆☆☆ おすすめ度
☆☆☆☆☆☆☆ 文章
☆☆☆☆☆☆☆ ストーリー
☆☆☆☆☆☆☆ メッセージ性
☆☆☆☆☆☆☆ 冒険性
☆☆☆☆☆☆☆ 読後の個人的な満足度
共感度(空振り三振・一部・参った!)
読書の速度(時間がかかった・普通・一気に読んだ)
[ 関連図書 ]
[ 参考となる書評 ] -
Posted by ブクログ
動物にタグをつけ、生態を追うことで保護や人間生活への応用などに役立てようとする研究者の話。
そもそもはアナログ的に行なっていたが、衛星から追えるように開発していく過程を追う
あまり生物学の本など読まないのだけど、なんだか気になって手に取った。
ドキュメンタリー映画観たような気分、なにかをなす人というのはものすごい我慢強さがあるのだな
それにすごくバイタリティがある
衛星による追跡が可能になったことで、これから色々なことがわかるようになるんだろう
地震や噴火予知の方、早めに…
何事もそうだけど、こういった研究をしている頭の良い人々がいるから、人類は発展してきた
暗い話ばかり耳にするけど、他方ではよりよい未来を垣間見れるような発明も多々あるということを忘れずにいたい
最後にもうひとつ、作者の、ロシアには世話になったがコンチクショウ!感が随所にあってよかった。